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なんとか持ち直した月夜見。
「……そろそろ、書物を読ませてもらっても良いか?」
「あ……うん、いいよ」
「じゃあ、私達も描きますか」
「そうだな」
僕達は机で漫画を描いて、月夜見は本棚の所で立ち読み。
「なあ、月光」
隣に座る彰君が話し掛けてきた。
「何?」
「月光と月夜見さん、付き合ってんのか?」
「ええ!?……そんなんじゃないよ!」
「怪しいな、月光……白状しろ!」
僕にヘッドロックをかける彰君。
「いたたたた!やめてよ!」
「白状したらやめてやる!」
「だから何もないよ!」
「嘘つけ!」
「やめなよ!」
麗凪さんが制止する。
「だって月光が……」
「いいからやめてよ!じゃないと陣ちゃんが……」
そう言われて僕と彰君は彩騎さんを見る。
彩騎さんは僕達2人をギラギラした眼差しで見てる。
「……続けて」
「……続き描くか……」
「……そうだね……」
「……チッ」
彩騎さんが舌打ち……怖い……
みんな漫画描くのに没頭してて、もう帰る時間になった。
月夜見を呼びに行く為本棚の所へ。
月夜見は本棚にもたれかかって三角座りで本を読んでいた。
「何読んでるの?」
月夜見が顔をあげると……また泣いてる……
月夜見が読んでる本の表紙を見る……新訳・日本書紀……
「また、昔思い出したの?」
「それもあるのだが……わしの事が少ししか書いてない……」
そっちですか……
「……ところで、なんか勉強になる本あった?」
「おお!色々な書物があって宝の山だな!」
さっきとは一変、凄く嬉しそうに言う。
「そう。でも、もう帰る時間なんだよ」
「そうか……では、続きは明日にするか」
月夜見は立ち上がり、本を本棚に戻す。
そして、2人でみんなの所に戻った。
「月夜見さん……明日も来る?」
麗凪さんが聞く。
「おう!まだ読んでない書物がたくさんあるからな!」
「じゃ、待ってるね♪」
麗凪さん嬉しそう……
「じゃ、また明日」
僕達は図書室を出た。
「うん、また明日!」
「じゃあな!」
彩騎さんを見ると、不敵な笑いで手を振ってる……だから怖いって……
「今日は迷惑をかけた……すまなかったな……」
学校からの帰り道、月夜見が静かなトーンで言う……
「大丈夫だよ!もう気にしてないから」
「本当か?」
「うん!だから気にしなくていいよ」
「そうか……裕一郎は本当にいいやつだな!」
月夜見の顔がぱっと明るい笑顔になる。
実は、クラスの輪の中心に初めてなれたのが嬉しかったり……
明日からも月夜見と学校で一緒か……
昨日までみたいに平穏とはいかないだろうけど、楽しみだなぁ……
「今日の詫びだ。背中を流してやるぞ」
「それ、いつもやってるじゃない……」
「そうか……では、全身隈無く……」
「それは遠慮しときます……」