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初通学の放課後のお話です(^^)
ふう……今日の授業も終わったぞ……
ん?月夜見が黒板見つめてて動かないぞ……
「どうしたの?月夜見」
「……物を教わるとゆうのは久しぶりなのだが……良いものだな……」
「そう?良かった」
「で、次は何だ?」
「今日はこれで終わりだよ」
「お……終わり……なの……か……」
「そんな世界が終わるような顔しないでよ!明日もあるんだから」
今度はずーんと暗い顔。
「なら……帰るか……」
「先に帰る?僕、部活行くんだけど」
「部活?……おお!漫画か!」
「そう。あ、そうだ!図書室でやってるから来てみれば?勉強になる本がいっぱいあるよ!」
「おお!是非とも連れていってくれ!」
月夜見に急かされるように図書室に向かった。
「ここだよ」
「ここか……早く入ろう!」
「はいはい」
ガラガラ…
中に入ると、すでにみんな集まっていた……と言っても、僕を入れても4人ですが……
「こんにちわ」
僕が挨拶をして入ると、みんなから挨拶が返ってくる。
『こんにちわ〜』
「あら?月光さん、その方は?」
月夜見を見た女の子が僕に問い掛ける。
「紹介するよ。今日、転校してきた月夜見。僕の親戚だよ」
「へぇ……月光さんの……」
月夜見が僕の制服のシャツの袖を引っ張る。
「おい」
「何?」
「お前は裕一郎ではないのか?」
「ここではペンネームで呼び合ってるんだ」
「……ぺん……ねぇむ?」
「えーっと……漫画を描く時に名乗ってる名前だよ」
「ほぅほぅ……しかし、月光とは月の光の事……なぜその名を?」
「え!?……いや……まあ……」
「月光さんは月の事が好きなんですよ」
「……好き……」
真っ赤になる月夜見。
次の瞬間、僕は月夜見に両肩を掴まれた。
「その話、詳しく聞かせてもらおう!」
目が怖いよ……
「月って神秘的だし……」
「神秘的か!」
「闇夜を明るく照らしてて綺麗だから……」
「き、綺麗か!」
「あの、月夜見さん……なんでそんなに嬉しそうなの?」
「え!?いや!?わ、わしも月が好きで……き、気が合うなぁと……は…ははは」
あたふたする月夜見を見て、女の子が不思議そうな顔をする。
「そ、そんな事より、みんなを紹介してくれ」
「そうだった!えーっと……」
「自分でするよ。私は谷崎ひかり。ペンネームは麗凪」
「じゃあ、麗凪で良いのか?」
「そ。ヨロシクネ」
麗凪さんがにっこり笑う……月夜見もつられて笑みを返す。
「次は俺かな?……俺は吉田彰、俺はペンネームないから彰でいいよ。ヨロシク!」
彰君は漫画を描きながら自己紹介。
そして顔だけ月夜見に向けてニッと笑う。
「宜しく!」
「おーい、陣ちゃーん」
麗凪さんが彩騎さんを呼ぶ。
「ちょっと待って……今、いいフレーズが浮かびそうだから……」
彩騎さんは机に伏したまま、うんうん唸ってる。
「ごめんね……あのコ、ああなるとどうにもならないから」
麗凪さんは申し訳なさそうに月夜見に言う。
「あのコは小林彩子、ペンネームは彩騎陣。悪いコじゃないから、ヨロシクしてあげてね」
「分かった!……これで全員か?」
「そうだよ。私達だけ……だから"部"に昇格出来ないけど、結束力はどこにも負けない自信あるよ!」
麗凪さんはそう言ってフンと鼻を鳴らす。
「お?可愛い女の子だねぇ」
いつの間にかこっちに来ていた彩騎さんが月夜見の前に立つ。
実は彩騎さん、かなり背が高い……180cmはあるかな……
前に立たれた月夜見は、彩騎さんを見上げて呆然……
「このようにでかい女、高天原にはおらんぞ……」
「ずいぶんな言われ方だな……」
彩騎さんが苦笑する。
「で、高天原って何?高天原で月夜見って、まるっきり神話じゃん」
「え!?いや!?」
上から覗き込まれるように言われてあたふたする月夜見……助けてあげないと……
「前の学校の名前だよね、月夜見」
「お……おう!そうだ!それだ!」
「ふぅん……偶然って重なるもんだねぇ!」
この人が単純で良かった……
「あ……そういや俺、神話で話描いた事あるぞ」
彰君はそう言うと、カバンを漁った。
「……あったあった……これだ」
彰君は本を取り出すと、月夜見に渡した。
「あ!ずるーい!私のも読んで欲しいのに!」
麗凪さんが叫ぶ。
「じゃ、みんなの月夜見に読んでもらう?……月光のは家で読んでるだろうけどな」
とゆう事で、僕以外のみんなの同人誌を月夜見に見せる事になった。
まずは月夜見に手渡してたので、彰君のから。
「スサノオを題材にしたんだ」
それを聞いた月夜見は、僕のを読んだ時とは違い、じっくりと読んでる……
暫くすると、月夜見の頬を涙が伝う……
「そ……そんな感動する?」
信じられないといった顔で彰君が聞く。
「ちょっと……昔を思い出して……」
僕はそんな月夜見の頭を撫でてあげた。
「コメディタッチなアクションなんだけど……」
呆然としている彰君。
「じゃあじゃあ!次は私の!」
次は麗凪さんの本。
「切ない恋愛を描いてみたんだけど……」
「……」
微動だにしない月夜見……ページを捲るペースはさっきより早い。
「どう?」
「ん?……ああ……面白いぞ……頑張れ」
「そ……それだけ?」
また一人の人間の魂を抜いてしまう月夜見。
僕の時といい、麗凪さんの時といい、若者の読む本を見せられたお年寄りみたいな反応だ……
「なあ……アタシのも読んでみる?」
彩騎さんが月夜見に同人誌を渡す。
それを読む月夜見……読み進めていくにつれ、頬が赤くなり……最後はへなへな〜っと崩れ落ちた。
「月夜見さんどうしたの!?……陣ちゃん!何読ませたの!?」
「何って……アタシがいつも描いてるやつ……」
BLだ……
月夜見は真っ赤な顔で呆然としてぺたんと座ってる。
「大丈夫?月夜見」
「お……男が……男の……」
「言わなくても大丈夫だよ、みんな知ってるから」
わなわなしてる月夜見の頭を胸に抱いて背中を叩いてあげた。
そんな僕を見て、麗凪さんが言う。
「なんか月光さん、お母さんみたいね」
……お父さんじゃないの?