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裕一郎の運命やいかに!(笑)
きーんこーんかーんこーん♪
昼休みになったぞ…早く逃げなくちゃ……
「月夜見、おいで」
「ん?…ああ……」
僕は月夜見の手を引っ張って教室を出る。
「待て!森田!」
「逃げるのか!ユウ!」
「月夜見さんは置いてけぇ!」
僕は屋上に出た。
「ここまで来れば大丈夫かな……」
「……すまんな」
しょぼんとしてる月夜見。
「すまんな…じゃないよ……てゆうか、なんで学校に来たの?」
「え……それは……一度来てみたかったのだ」
「は?もしかして、昨日の夜寝たのってこのため?」
「ああ……」
「来るなら来るって言っといてよ……」
「どうせ言ったら言ったで、裕一郎はダメだとか言うのだろ……」
バレてましたか……
「まあ、来ちゃったものはしょうがないよ……でも、余計な事は言わないでね」
「……心得た」
「じゃ、教室帰ろうか」
「おう♪」
と、行きかけたけど、やっぱりやめる。
「……やっぱり昼休み終わるまでここにいよう……みんなが恐い……」
「なら、わしも付き合うぞ」
「月夜見はいいよ。早く友達作らなくちゃダメだし、教室戻りなよ」
「わしは裕一郎がいてくれればそれでいい…」
月夜見がぼそぼそ言うので聞き取れなかった。
「え!?今、何て?」
「いや……その……聞いていなければそれで良い……」
赤くなる月夜見……変なの。
「あら?月夜見さん、ここにいたんだ」
「あ、ホントだ。森田君も一緒ね」
「ホントに仲いいんだね……羨ましいわ」
クラスの女の子達だ……3人仲が良くて、いつも一緒だ。
「みんな、僕達探しに来たの?」
「違うわよ。今日は天気がいいから」
「あんなバカ共と一緒にしないでよ」
「はは……ごめん」
「今は教室戻らない方がいいよ……そのバカ共がブツブツ言ってるから」
また月夜見が暗い顔をする。
「すまんな……」
「月夜見は悪くないよ」
「しかし……わしが来た事で、裕一郎と友の間に亀裂が入ってしまった……」
女の子達も月夜見を心配して言う。
「月夜見さん、そんなに気にしなくてもいいのよ」
「そうだよ!どうせ暫らくしたら忘れちゃうよ」
「忘れてしまう……か……裕一郎も言うておったな」 月夜見の絵を描いてた時に僕が言った事、憶えてたんだ……
「それに、お互い、毎日顔合わせるでしょ?向こうだって気まずくってそんなに意地張ってられないもの」
「……意地か……」
そう言って月夜見は、太陽を見上げた。
じっと太陽を見つめる月夜見……その瞳から涙が一筋流れた。
「月夜見、どうしたの!?」
「そんなに悲しい!?」
「いや、違う……昔の事を思い出しただけだ……気にするな」
そんな月夜見を見て、僕は問い掛ける。
「やっぱり月夜見……お姉さんの事好きでしょ?」
「……」
「仲直りしたいんでしょ?」
その話を聞いて、女の子達も話に入ってくる。
「何?月夜見さん、お姉さんと喧嘩してるの?」
「じゃあ、お姉さんも一緒に住んでるの?」
「いや……月夜見のお姉さんは一緒にはいないよ」
「じゃあ喧嘩別れか……辛いわね……」
「大丈夫だよ、月夜見さん。絶対仲直り出来るから」
「そうそう!だから泣かないで」
「ありがとう、みんな……」
月夜見が柔らかく笑う……でもすぐに険しい顔になる。
「でも、今は裕一郎と友を仲直りさせるのが先だな……よし、教室に戻るぞ」
「月夜見、どうするの?」
「わしから言って、仲直りしてもらう」
「え……いいよ……」
「良くない……自分でした事のケリは自分でつける……さあ、行くぞ」
そのまま屋上を降りていく月夜見を、僕達は追い掛けた。
降り際、女の子達の声が聞こえた。
「月夜見さん、カッコいい!」
「月夜見さんが男だったら良かったのに……」
なんか、変なファンが出来そう……
月夜見は教室に着くと、一つ深呼吸をしてから中に入った。
「あ、月夜見さん……森田ぁ……」
「ユウ……説明してもらおうか……」
「お前達、私の話を聞いてくれ」
僕ににじり寄る大野君達を制し、月夜見が一歩前に出て言う。
「裕一郎と風呂に入っているのは、わしが望んでの事……裕一郎にはなんの落ち度もない」
大野君達は黙って聞いている。
「裕一郎は何も悪くない……潔白だ。だから裕一郎と仲違いするのはやめてくれ……」
月夜見は一歩下がると床にひれ伏した。
「ちょ!?月夜見さん!?土下座までしなくても!」
「そうだよ!俺達、たいして怒ってないから!だから頭上げて!」
大野君達に言われて月夜見が頭を上げる。
「……許してくれるのか?」
「……あ…ああ……許すも許さないも……なぁ?」
「……え……うん…ちょっと……ショックだっただけで……」
「……そうか……ありがとう……」
月夜見はすくっと立ち上がりこちらに振り返る……な……泣いてる……
「裕一郎……皆が許してくれた……良かったな!」
そう言うと僕に抱きつき、僕の肩に顔を埋めて啜り泣いた。
「月夜見……ありがとう……」
僕は月夜見の頭を撫でてあげた。
……月夜見って大袈裟なんだよな……でも、そこが可愛いな……
月夜見を悲しませないように、僕もしっかりしなきゃ……
「なあ、お前……あの時の月夜見さん見たか?」
「ああ、バッチリ」
「あんな綺麗な人に……涙目で見上げられるとは……あれはくるな……」
「やっぱり大野もキタか……」
「くそ……」
『羨ましいー!!!』
寂しいので感想だけでもください(^^;)