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「ねぇ、月夜見さん」
「"さん"はいらん、月夜見でいいぞ」
「あ…はい」
「あと、あまりよそよそしくしないでくれ。先はながいのだからな」
「は…はい」
「だーかーら!」
「あ…うん、ごめん」
「で、何だ?」
「…何でそんな格好なの?」
さっきまでは、いかにも古代人といった服の上に鎧を付けていた。
そして
「部屋着になる」
と言った後、まばゆい閃光…次の瞬間、Yシャツ一枚に…
「下界の部屋着ではないのか?」
「…どっからそんな情報を…」
「ん?あそこにあった書物から」
げ…同人誌…
「かなりゆったりしていて、なかなか気に入ったのだが…」
さすが夜を治める神…露になった太ももが、血管が浮き出そうなくらい白い。
その太ももだけでもドキドキものなんだけど、月夜見の座り方が…あぐらってのが…
Yシャツの下から白いパンツが…目が離せない…
「…おい」
「……」
「おい、どうした?」
「!?」
ぼーっとパンツ見てた僕の顔を、月夜見が覗き込んだ。
その時、月夜見が前屈みになったから、胸の谷間が飛び込んできてビックリした!
「どうした!?」
「い、いや!?なんでもないよ!」
「…変なヤツだな…」
今まで女の子と関わりがなかった僕には、刺激が強すぎるよ…
「あ…あと、もう一つ聞いていい?」
「ん?」
「月夜見って、男じゃなかった?」
その瞬間、月夜見に、初めて会った時のような鋭い目で睨まれた。
「まだ疑っておるのか…」
「疑ってないよ!ただ、伝承では男神だから…」
月夜見が少し暗い顔をする。
「…ただ保食神を殺したというだけで、性格が粗暴と言われ、男神と決め付けられたのだ…」
「…たしかそんな話だったね」
「知っているのならわしの気持ちは分かるだろ?お前、人の吐いたものが食えるか?」
「…食えません…」
「そうだろ?わしが腹を立てたのも無理なかろう!」
「…だね」
身を乗り出さないで…谷間が…
「…すまん、熱くなってしまった…まあ、お前が見ているものが全てだ」
「…うん、分かった」
「わしからも質問して良いか?」
「え?…何?」
「この部屋は書物がかなりあるが、学者か何かをしているのか?」
「違うよ、僕は学生だよ。ここにある漫画は趣味で集めたんだよ」
「…漫画?ああ…最近、昇ってきた神に聞いた事がある…」
「昇ってきた神?」
「下界にいる神が一年に何回か、わしらの住む高天原に昇って来るのだ。その時に土産話として、下界の流行りなどを聞く。その中に出てきたぞ」
「へぇ…神様もそんな話するんだ」
「上にいる者は皆、下の様子が気になるのだ」
神様って偉い方々と思ってたけど、親近感わいちゃうな。
「ここにある漫画は、お前が全部描いたのか?」
「殆ど買ったのだよ。僕が描いたのは…えーっと…これだけだよ」
僕が今まで描いた同人誌を月夜見に渡す。
月夜見はそれを手に取り、じーっと読んでる。
「…どう?」
「…よく分からんな」
「やっぱり…」
「でも、絵は良いぞ。可愛いではないか」
「ホント?」
「本当だ。わしの絵も描いてくれんか?」
「いいよ!」
僕が机の上にあるスケッチブックと鉛筆を取ろうとした時、偶然時計が目に入った。
「あ!」
「どうした!?」
「もうこんな時間…寝なきゃ…」
「何!?夜はまだこれからだぞ!?」
「明日も学校だから…ごめんね、明日帰ってきてから描くから」
「…そうか…じゃあわしは散歩でもしてくるか」
「寝ないの?」
「…あのな…わしは夜を治める神だぞ?夜に寝ていられるか」
「それもそうだね」
「じゃあ行ってくる」
「ちょ、ちょっと!」
出ていっちゃった…あの格好のままで…
まあ、夜遅いから目立たないかな…
さあ、僕は寝よっと…
んあ…朝か…
なんか…今まで嗅いだ事がない甘い匂いがする…いい匂い…
そのまま、また寝ちゃいそう…
でも、学校行かなきゃ…起きよ…
!?
ベッドから出ようと横を向いて驚いた。
月夜見が寝てる…シングルだから僕にぴったり寄り添うように…
改めて見ても、凄く綺麗な顔…そんな顔が寝息がかかるほど近くにあって、僕の眠気は一気に覚め、心臓が跳ね上がる。
思わず、さらさらの黒髪に手を絡める…さっきから匂う甘い匂いが増す…
この匂いは月夜見から…
「ん…夜か?」
「ご、ごめん!起こしちゃった!?」
「まだ、明るいではないか…お前も…目が覚めたのか…」
「違うよ、起きたんだよ。今から学校行くから」
「…そうか…気を付けてな…」
そう言うと、また寝息を立て始めた。
「おやすみ…いってきます」
そう言って頭を撫でてやった。
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