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 目の前に現れた女の子を見て、月夜見は驚愕の表情を露にする。

「あ……姉上……」

 この女の子が月夜見のお姉さん!?

 言われてみれば、顔も髪型もそっくり……

 でも、月夜見はつり目っぽいけど、お姉さんは明らかにたれ目だ。

「活津彦根を許してあげてください……少々鬱陶しいですが、悪い神ではありませんから……」

 ……少々?

「活津彦根……あなたも悪ふざけが過ぎますよ」

「すいません……」

 活津彦根さんはそう言うと、一歩後ろに下がってビシッと立っている。

「月夜見……お久しぶりですね」

 天照は月夜見にそっと近付く……月夜見はくるっと反対を向いて俯く。

「わしは悪い神だから、会いたくないのではなかったのか?……」

 月夜見がそう言うと、天照の足が止まる。

「あれは……私の本心ではありません……」

「本心ではない?……」

「はい……あれはあの時、あまりにも激昂してしまい、つい言ってしまった言葉……」

「……」

 俯いたままの月夜見。

「でも、本当に私の前に現れなくなってしまうとは思ってもいませんでした……」

 天照はまた月夜見に向かって歩きだし、月夜見の真後ろに立つ。

「月夜見……また昔のように仲良くしていただけませんか?」

「しかし姉上……」

 今まで俯いていた月夜見が重い口を開く。

「わしは保食神だけでなく、活津彦根まで手をかけようとする悪しき神……そのような神と仲良くしておっては、姉上の威厳も下がるだろ……」

「他の者がどう思おうと、私には関係ありません……」

 天照はそのまま、後ろから月夜見を抱きしめる。

「あなたは私の、大切な妹なんです……」

 天照の瞳から涙かつぅっと流れ、ぽろぽろ溢れだす。


 ポツ……ポツ……ポツポツ……


 雨だ……雨が降ってきた……

 雨足はさらに強くなり、ザーザー降り始めた。

「姉上……」

 月夜見はそっと天照の方を向く。

「わしもつまらん意地を張ってすまなかった……姉上が心を痛めたように、わしも辛かった……」

 月夜見の瞳からも涙が溢れてる。

「月夜見……」

「姉上さえ良ければ、またやり直させてもらえるだろうか?」

「はい……喜んで……」

「……姉上!」

「月夜見!」

 月夜見と天照はぎゅっと抱き合い、わぁわぁ泣いた……永い時を経て仲直りした喜びに……

「ええ話やなぁ……」

「活津彦根さん……台無しですよ……」

 僕達もそんな言葉を交わした……もらい泣きしながら……

 天照が泣く分だけ雨足が強くなる……でも嬉し泣きみたい……

 雨は降ってるけど、空は晴れてる……






 天照と月夜見が泣き止むと、雨も止んだ。

「月夜見……こちらの方は?」

 天照が僕を見て月夜見に尋ねる。

「わしが世話になってる家に住む裕一郎だ」

「あ……初めまして」

「初めまして。いつも月夜見がお世話になってます……」

 天照に深々とお辞儀をされる。

「ところで月夜見……その姿、可愛いですね」

「ああ……学校に通っているからな」

「学校とやらに行くと、その衣を着られるのですか?」

「着られると言うか、これでないと入れてもらえんそうだ」

「そうなんですか……」

 天照は少し考えると、活津彦根さんに言った。

「活津彦根……もう帰ってもいいですよ」

「はい!?」

 活津彦根さんが驚きの声をあげる。

「いや!?でも、伊弉諾様に……」

「月夜見を監視するように言われてるんですよね?私が引き受けます」

 天照はにっこり……僕達唖然……

「あ……姉上?」

「実は私も、中津国に来てみたかったんですよねぇ!」

 やっぱり姉妹だな……神様って、どれだけ下界に憧れ持ってるんだろう……

「月夜見!改めて宜しくお願いします!」

「ああ、姉上……こちらこそ宜しく!」




 その日の夕食……

「お母様!このお肉の塊、おいしいですねぇ!」

「……ああ、ハンバーグね。気に入ってもらえて嬉しいわ!」

「姉上!母上殿の作る料理は何でも美味いぞ!」

「いやしかし……また娘が増えて、父さん嬉しいな!」

 天照……やっぱりうちに来るんですか……

「裕一郎君、ソース取ってくれない?」

「あ、はい……て、何で活津彦根さんまで混ざってるの?」

「食べたら帰るから」

 活津彦根さんは、どうゆう設定で入り込んでるんだろう?

 しかし、天照と月夜見のはしゃぎ様と言ったら……今の時代の女の子と変わらないぐらい。

 今の2人を見てると、会えなかった期間がどれだけ辛かったか分かる……仲直り出来て、ホントに良かった……






「姉上!」

「何ですか?」

「飯を食べたら、一緒に風呂に入ろう!」

 天照が不思議な顔をする。

「風呂?蒸し風呂ですか?」

「いや、湯に浸かるのだ」

「湯に浸かる?沐浴ではなく?」

「うん!どうだ?入らないか?凄く気持ちが良いぞ!」

「ぜひ、ご一緒に!」

 天照の顔がぱっと明るくなる。

「と言う事で、今日から3人で入るぞ、裕一郎」

「ええ!?」

「裕一郎さん、宜しくお願いします♪」

 また苦悶のお風呂が始まるのか……



また少しずつ更新していきますので、長い目で見てやって下さいm(_ _)m

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