14
学校からの帰り道、月夜見のイライラも限界になってる。
「活津彦根……もう、隠れんでもいいから、こっちへ来い……」
僕達の目の前に現れた活津彦根さんは、中華屋の出前姿……
「ホントに楽しんでますね」
と、僕が言うと
「何か楽しみ見つけないと、こんな事続けられないからね」
と、爽やかな笑顔を見せる。
「"こんな事"と言うぐらいなら、さっさと帰れば良いものを……」
月夜見がぼそっと言うのを、活津彦根さんは聞き逃さなかった。
「うふふ……僕も月夜見様と同じで、中津国が好きなんです」
「分かったから……少し黙っていろ」
「あらら……お口にチャック♪」
うん……だんだん鬱陶しくなってきたぞ……
「しかしお前は、どうゆう性格をしておるんだ?」
活津彦根さんに問いかける月夜見。
「……」
黙ってにこにこしている活津彦根さん。
「本当にお前……姉上の子か?……」
「……」
「姉上はそのような所、微塵もないぞ」
「……」
「……」
「……」
「黙っておらんで、何とか言ったらどうなんだ!」
「いや、さっき黙っていろと……」
「わしの言う事だけは答えていろ!」
「黙っていろと言ったり、答えろと言ったり、忙しいですねぇ」
「お前……保食神のように斬り伏されたいのか?」
「いえいえ、滅相もございません」
……どこまで本気なんだろう……
住宅街を並んで歩く僕と月夜見と……出前持ち。
「お前……着替えたらどうだ……」
活津彦根に月夜見が呆れ顔で言う。
「そうですね、着替えましょうか」
活津彦根さんは、そう言って駐車場に止まってる車の陰へ。
そして現れた活津彦根さんは警官の姿……
「その格好で一緒にいられると、僕達が誤解されちゃうから……」
「ダメ?……気に入ってるんだけどなぁ……」
そう言うと、拳銃を構えてポーズを決める。
「逮捕しちゃうぞ♪」
「とっとと着替えろ!」
月夜見に一括されて、おずおずと車の陰に消えていく活津彦根さん。
次に現れたのは、革ジャン革パンにアクセサリーやら鎖をジャラジャラつけた活津彦根さん。
「似合ってっか?」
喋り方も変える力の入れ様……こうゆうのは本人のために、はっきり言ってあげないといけないな……
「活津彦根さん」
「何だよ」
「全然似合ってません、酷いです」
「が!?」
驚愕の表情をする活津彦根さん……それを見て、肩を震えさせて笑いを堪えてる月夜見。
「ど……どこがダメですか?……」
「なんか、無理をして着させられてる感が物凄い出てます」
「そ……そうですか……」
「もうお前、凝った事をせず普通にしろ」
「普通ですか……」
意気消沈して車の陰に消えていく活津彦根さん。
そして現れた活津彦根さんを見て僕は唖然……
「あの……なぜ着流しなんですか?」
「だって普通にって言ったじゃない」
「いつの時代の普通なんですか!?」
「いい加減にしろ!!」
月夜見の手には、いつの間にやら剣が……それを活津彦根さんの喉元に突き付ける。
「今すぐここで斬り伏せてくれる!」
ついに月夜見がキレちゃった!
「月夜見やめて!」
僕は月夜見の後ろに抱きつき止めようとした。
「放せ裕一郎!」
物凄い力で振り飛ばされた。
「活津彦根!お前のその性格を黄泉国で恥じるが良い!」
「ちょ!?ちょっとした冗談じゃないですか!?」
「ええいうるさい!覚悟しろ!」
月夜見が剣を振りかざし、活津彦根さんに向けて振り下ろす。
「待ってください!」
どこからかそんな声がした。
その声を聞いて、月夜見ははっとした顔をし、活津彦根さんを斬る寸前で剣を止める。
声のした方を見ると、女の子が立っていた。