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もう何年もゲーセンに行ってないんですが、こんな感じで合ってます?(^^;)
ゲーセンに入ると月夜見が不思議そうな顔で辺りを見回す。
「ギラギラして騒がしい店だな」
「ここは、ゲーム……遊んだりさせてくれる所だよ」
「ふ〜ん……この小屋は何だ?」
小屋って……
「これはプリクラって言って、写真のシールが撮れるんだよ」
「???」
たぶん分かってないな……
「記念にやってみよう!さあ、入って」
月夜見の手を引っ張って中に入る。
「中は明るいな……な!?」
「どうしたの?」
「こ、この画面の中に裕一郎がいる!……となりはわしか!」
半日こんなのやってたら、説明するのも疲れてきた……
「これは僕達の立ち位置とかが分かるようになってるんだよ。写真を撮った時の予想図みたいなもんかな?」
「で、わしらはどうすれば……」
「それは機械が説明してくれるし、僕がやるから待ってて。……えーっと小銭は……」
「どれがいるのだ?」
月夜見から差し出された手には小銭が……
「さっき出してもらったからな……ここはわしが持とう」
「このお金は?……」
「気にするな」
一瞬で好きな服に着替えられたり、他人の記憶を操作する能力より、この能力が一番羨ましい……
お金を入れてフレームとか決めて準備が整った。
「月夜見、自然な感じであの画面見て」
「え……こうか?」
その瞬間フラッシュが焚かれる。
「な!?なんだ今のは!?」
「今ので撮れたんだよ」
撮れた写真に少し落書きをしてから印刷、出来上がったのを月夜見に渡す。
「これがプリクラだよ」
月夜見は不思議そうに見てる。
「わしが写っておるな……」
僕は携帯を取り出してプリクラを貼った。
「ほら、こうやって貼れるんだよ」
「ほぉ〜……では、わしも」
「わしもって、何に貼るの?」
「帰ってから剣に」
「ああ……そう……」
次に月夜見が興味を示したのが格ゲー。
「これは?」
「これは、このキャラを操って闘うんだよ」
「……闘うのか……」
目つきが変わった……
「どうやるんだ?教えてくれ」
「このスティックを動かせば左右に動いたり伏せたり跳んだりして、こっちのボタンで殴ったり蹴ったり出来るよ」
「ほおほお」
「で、こうゆう感じにすると……ほら!これが必殺技!」
「おおー!」
今までとは目の輝きが違う。
「じゃ、やってみて」
「おう♪……おお、動く動く……」
「ほらほら!襲ってくるよ!」
「うわ!?この!……必殺技はこうか!?」
「ちょっと遅いよ!もっと早く!」
「分かった!」
『You!Win!』
「うまいうまい!10連勝だよ!月夜見、飲み込み早いね!」
「わしにかかればこんなものだ!」
その時、向かいの席に若い男が座る。
「月夜見……挑戦者だよ!」
僕は小声で言う。
「挑戦者か……受けてたとう!」
騒つくギャラリー。
「ここのゲーセン最強の男が……」
「あんな可愛いコに歯が立たないなんて……」
『You!Win!』
「7連勝だぞ、裕一郎」
「つ……月夜見って……ホント飲み込み早いよね……」
向かいの席の男は、ゲーム機に突っ伏してモニターを掻き毟ってる。
「そ……そろそろ帰ろうか、月夜見……」
「そうだな……わしの気も済んだし」
僕達はギャラリーをかき分けてそこを離れた。
外に出ると、すでに暗くなり始めてた。
僕達は来た道を引き返して家路につく。
歩き始めてすぐ、月夜見が僕の手を握る。
「え!?」
「……嫌か?」
「ううん!行こ!」
月夜見も嬉しそうに歩きだす。
「また……連れてきてくれるか?」
「うん、いいよ」
「やったー♪」
「おい、お二人さん」
「仲が良くって妬けるねぇ」
いつの間にか、僕達の目の前に4人の男が立ちはだかる……チーマーとかそんな感じ……
「何だ、お前等は……」
月夜見の顔に、さっきまでの笑顔はない。
「そんな怖い顔しないで、俺等と遊ぼうよ」
チーマーの1人が月夜見の型に手を置く。
「お前等のような者が、気安くわしに触るでない……」
……僕には何が起きたか分からなかった……
月夜見が言い終わった瞬間、チーマーが空を舞った。
「てめえ何しやがる!」
それを見ていたチーマー達が叫ぶ。
僕の方は因縁をつけられた時から、足がすくんで動けない……ど……どうしよう……
月夜見とチーマー達は睨み合ってる。
先に動いたのはチーマーの方だ。
「ちょっと出来るからって、俺達をなめんじゃねぇぞ!」
チーマー達が月夜見に襲い掛かる。
月夜見はチーマー達の攻撃を滑らかな動きでかわす……まるで舞いを舞っているかのように……
その時、チーマーの1人が僕に向かって走ってきた……僕は恐怖で動けない……
チーマーは僕を捕まえると、僕の後ろに回り込んで、僕の首を腕で絞めてきた。
「ぐあ!」
「裕一郎ー!!」
「おとなしくしねぇと、こいつの首へし折るぞ!」
月夜見が下唇噛んで僕の後ろのチーマーを睨んでる……
「わしには何をしても構わん……だから裕一郎を離してやってくれ……」
「……つ……きよ……み……」
さっきまでやられてたチーマー達が月夜見を囲む……
「よくもやってくれたな……」
「俺等なめてたらどうなるか、教えてやるよ」
チーマー達が高笑いをする……月夜見は下唇を噛み締めたまま……
「おい!そこの路地連れてけ!」
1人のチーマーがそう言うと、僕は首を絞められたまま、月夜見はチーマー2人に肩を掴まれて路地に連れていかれた。
どうしよう……このままだと月夜見が危ない……