異変
処女作です!みんなに見て欲しい!
王宮地下の暗く、広い部屋である儀式の準備が進められていた。
黒い服を着た男が床に歪な紋様を描き終わると同時に立ち上がって言った。
「準備は整いました。あとはあなた様次第です。」
「そうですか…分かりました。申し訳ないのですが、
集中したいので少し1人にしてくれませんか?」
女性がそう言うと、男は無言で頭を下げ部屋を出て行った。
「文献通りなら成功するはず…失敗は許されないのです。絶対に、絶対に。」
自分に強く言い聞かせながら女性は首元のペンダントを握りしめた。
7月の始め、梅雨も明け夏の日差しが地面を焼く。
東京の緑に囲まれた高校の一教室、校庭に面しているためカーテン越しでも太陽の熱気が届く。
「はい、今日はこの辺で。日直黒板よろしく。」
教師がそういって教室を出て行くと、静かに授業を受けていたクラスを次第に賑やかになっていく。
(ありゃ、もう終わった、ずっと寝てたのか…昨日楽しみで眠れなかったからか?まぁいいや。早く帰らねば)
皆、楽しそうに話したり本を読んだりと時間を潰す中1人の男子生徒が黙々と帰りの準備をしている。
佐倉遊–体格は細く身長は平均的といたって普通の少年であり他と違うところといえば少し長めの後ろ髪をゴムで結んでポニーテール状にしてあるところぐらいだ。
「なに?遊君もう帰るの?この後HRあるよ?」
「ん?あーこの後用事あるから早く帰る。」
「そっか、先生に伝とこっか?」
「んー楓ちゃん怒りそうだなぁ…」
「いいよ、適当理由つけて言っといてあげるよ。ゲームか何かでしょ?」
「まじ!?ありがと一樹!そそ。今日ゲームの発売日なんだよーまじでサンキュー!じゃあなー」
「どういたしまして。じゃあね」
「ねね、一樹君、そんな奴ほっといて今日カラオケ行かない?」
「わたし駅前にできたパフェ行きたーい!」
「え?うんいいよ。どっちにしよっか」
(やっぱり一樹はもてるねぇ、その分俺は女子にめっちゃ睨まれてるけど)
一樹と放課後の予定を決めている女子の数名が遊を睨んでいる。一樹はそれに気づかず話しに夢中になっていた。河北一樹–容姿端麗であり性格も良いため男女問わず人気を集めていた。また剣道をやっていて大会でいくつもの賞を取っているため他校でもその道の人は知っている優秀な生徒だ。そのため彼の周りには大抵複数人の女子がいた。
(ま、いっか。案外楽しそうだし)
遊が教室を出ようとすると教室の扉が開いた。入ってきたのは担任の若内楓、新任教師でまだ幼さが残るが優秀な教師だ。身長が低いのを気にしている。
「あ!もー佐倉君!また勝手に帰ろうとしたでしょ!」
「い、いやこれには深い理由が…」
「勝手に下校するなんて許しません!」
「ちょっと待って楓ちゃん!今日は本当にお願い!」
「誰が楓ちゃんですか!だめです。ちゃんと残りなさい!」
いつもの遊なら渋々残っていたが今回は丸1年待った新作ゲームの発売日であったのでなんとしても早く買うために遊はドアの前に待ち構える先生を躱し、走り抜ける。
「ごめんね楓ちゃん!明日残るから!」
「こらーーー!!待ちなさーーーい!!それと廊下は危ないから歩きなさい!!」
(楓ちゃんには申し訳ないけど今日だけは譲れないよなぁ。新作MMOはスタートダッシュが重要だからね。)
教室の生徒達はいつものことだと言わんばかりに帰りのHRを促す。その中で1人、校門を走り抜けていく遊をずっと見つめる女子生徒がいた。
(やっぱりかっこいいなぁ佐倉君…)
「…もー!怒られるの私なんですからね!佐倉君!!…はぁ…じゃあHRやります。」
そう言って翌日の報告事項を確認していく。20分ほど経ち全ての確認を終えHRを終えようとした時、教室に大きな揺れが走った。
「なんだ!?」
「「キャーーー!!!」」
「地震だ!!!大きいぞ!!!」
激しい揺れが教室を襲う。上下左右に揺れ平衡感覚が掴めない。立っているのも困難なはずだ。教室は叫び声で埋め尽くされていた。
「皆さん!!落ち着いてください!!ゆっくりでいいので机の下に潜ってください!!!きっとすぐに収まります!!!」
教師がそう大きな声で促すと生徒達は少し落ち着きを取り戻し急いで机の下に避難する。揺れは1分も続かなかったが感覚としては10分ほどに感じた生徒もいただろう。
揺れが収まると教師は大きな声で次なる指示を出した。
「皆さん!!この後、また揺れが来ないとも限りません!!訓練を思い出しゆっくりと校庭へむかってください!!」
そう言うと前後の扉に近い女子生徒がいち早く出ようと扉に手をかける。しかし扉は開かない。力を入れてもなにかに押さえつけられてるかのようにビクともしない。生徒は困惑した顔で声を上げる。
「先生!!扉が開きません!!」
「そんな…分かりました!ではどなたか力の強い男子生徒、手伝ってあげてください!!窓に近い生徒は窓を開けて下さい!幸いここは二階です!どうにかして降りられるはずです!」
先生が声を上げると皆行動を始めた。すると窓に近い男子生徒が叫ぶ。
「先生!窓が開きません!どうすればいいんですか!!」
「先生!扉も開かない!!」
「そんな!窓枠も歪んだの!?一体どうすれば…」
「なんで!?なんでよ!!!」
「うわぁぁぁああん!!じにだぐないぃぃぃぃいいい!!!」
「くそ!!教室から抜け出す方法はないのか!!」
教室は再び阿鼻叫喚に包まれる。先生も動揺しているため周りに気を向けることができていない。そんな中1人の男子生徒が周りにも負けない大きな声をあげる。
「みんな!!一回落ち着いて!!!!」
「河北くん…」
「先生も落ち着いてください、そんなんじゃみんなに笑われちゃいますよ。」
「そう…よね…ありがとう。河北君。おかげで落ち着くことができました。」
「どういたしまして。みんなも聞いてくれ!まずは警察に電話しよう!ただこれだけ大きな地震だからたくさん電話が来てるはずだから念のため消防にも電話してくれ!きっと救助が来てくれるはずだ!だから一回落ち着いて!」
一樹の声で再び落ち着きを取り戻したクラスだがそれで終わりではなかった。数分経った頃1人の生徒が声を上げる。
「なんだよこれ!!!」
教室の中心部から歪な紋様が現れていた。紋様は不安定に光り、段々と広がっていく。
「一体なんなんだよ!!!!」
「どうなるのよ私達…」
「皆!!落ち着くんだ!!」
「でも!」
一樹がもう一度声を荒らげても、光が収まることはなく、蛇のように床や壁をつたっていく。
紋様が教室全体を覆った時、教室は眩い光に包まれた。光が収まった後教室には人の気配は無くなっていた。
異変は急いで下校している遊の元にも訪れた。遊の足元に同じ紋様が現れる。彼自身は急いでいるのでそれには気づくことがない。が、歩道橋を渡っている途中に違和感を感じた。
「ん?なんか体が重いな。何かに地面に引っ張r」
その言葉を最後に光が遊を包む。光が収まった後彼の姿はそこにはなかった。




