能力の確認
いつまでも暗い部屋では何だと言うことで、場所を石の部屋から客間に移している。
王族にとっては小部屋、だが庶民にとっては広い20畳程の長方形の部屋。部屋の入り口は短面に1つありそこに騎士達が2人立っている、窓が長面の片方に6つあり、外には木が数本見える。今は朝と昼の間ぐらいだろうか、陽の光が差してとても明るい。部屋には入り口からみて反対側の短面付近に豪華なソファが2つ、窓を左手にして置いてありその右側に王 ザッハが、その左側に妃 エクレアが座る、王宮魔導師兼家臣のカシューは斜め後ろで立っている。
シューはその前テーブルを挟んだ椅子にお座りの状態でいる。
ザッハとシューはこの世界のことやシューの飼い主のこと等、色々と楽しげに話しをしている、それをエクレアは楽しそうに見ている。
ふと、思い出した様にザッハは言った。
「そういえば、能力の確認をしていなかったな」
「そういえばそうですな、早速行いましょう、誰か、 鑑定眼を持って参れ!」
王の言葉に家臣が答え、そして部下に命令を出す」
シューは頭を?にしながら見守る。
しばらくしてカシューの部下が手の平大の水晶玉とアイパッドくらいの大きさの石版を持ってきた。
カシューはそのうち水晶玉を受け取り、それをシューの方に向けて短く呪文を唱えた。
すると水晶玉が光だした。
カシューがシューに「少し眩しいがじっとしていなさい」と告げる、
そして水晶玉の光がシューを照らす。
そして、次に水晶玉を部下の持っている石版の方に向けて短く呪文を唱えた。
すると、今度は石版が光りだし、その中に文字が浮かび始めた。
「ほう!これはこれは」
「何と出た?」
「はい、これをご覧ください」
王の問いかけにカシューは石版を見せる。
そこにはこう書かれていた。
名前 シュークリーム
種族 犬
性別 男
攻撃力 D
防御力 A
素早さ C
生命力 B
魔力 D
スキル
言語理解、会話能力、ダメージ無効、状態異常無効、帯魔、ゴム
「なんとまあ、防御重視な能力だ」
「それに聞いた事無いスキルがありますな。
帯魔…はなんとなく分かるが、それにゴム⁉︎……」
王とカシューの会話をしていると扉を叩く音がする。
入れと王は入室を許可する。
ガチャッと扉が開き大きな声で幼女達が2人入ってきた。1人はロングヘアーのツーテール。もう1人は団子頭だ。
「「お父様!、お母様!」」
「プリン!マカロン! おお、私の愛する娘達!今日は危ない事をするから来てはいかんと言っただろう!」
「「2人じゃ無いもん!、お供も一緒だもん!」」
「申し訳ございません!大人しくお部屋にいるよう申したのですが、異世界の勇者様を一目見たいと2人して飛び出して行ったのです!」
後から入って来た女中が慌てて謝罪する。
目をにやけさせながら叱る親バカなザッハ。
それに反論する娘達。ちなみにプリンが姉、
マカロンが妹である。
「もん、じゃ無いでしょ!もん、じゃ!
異世界のお客様がいらっしゃるのですよ!ご挨拶なさい!」
「「はい! 異世界のお客様ようこそ……?」」
叱るエクレアに対して従順な子供達。
しかし挨拶する人物はいない、代わりにマカロンが毛むくじゃらの犬を、見つける。
「あっ、犬‼︎」
「えっ、何処何処?」
「ほら、お姉様、そこ!」
そう言うと、マカロンはシューに近づき後ろから抱き上げた。
シューも抵抗なく持ち上げられる。
「うわ〜、モコモコ!中は思ったより細〜い!」
「本当? 私にも抱かせて!」
と姉のプリンもシューに抱きつく。
「いやよ、私が見つけたんだもの!」
「いいじゃない、あなたの物じゃ無いでしょ?」
「でもいや!」
と王女2人でシューを取り合う。
「こら!やめな……、」
次第にシューを引っ張り合いになり、慌てて父ザッハが止めようとすると、徐々にシューが少なくとも犬ではあり得ないぐらい体が伸びた。
正にゴムのように。
その場にいた大人達は目を見開き口を開けて絶句する。
キャイ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン
シューがあまりの衝撃に悲鳴を上げる。
スキルダメージ無効の効果により痛くは無いのだが初めての体の状態に焦り、声をあげたのだ。
その悲鳴に我に返る大人達。
「こら、やめなさい!体が….、その…、伸びてるじゃないか!」
どう伝えて良いかわからないがとりあえず娘達の行動を止めようとする父。
子供達も我に返り、シューのあまりにも伸びた体に驚き姉がに手を離す。
するとシューの体が未だ掴んでる妹も急に姉に手を離されたので勢い余り後ろに倒れる。
その拍子に手を離したのでシューは体が戻る反動で勢いよく壁に向かって飛んで行く。
壁に当たり勢いよく跳ね返り次々と縦横無尽に跳ね返る。
慌てて娘達の元に向かい2人を庇うように伏せさせる父親ザッハ、その場にいた者も慌てて身を屈める。
奇跡的に誰にも当たる事なく、しばらくして勢いが無くなり3回程バウンドして動きが止まる。
今のシューはボールのようにまん丸になって
目を回している。
扉の騎士達が駆け寄り剣を構えるが王はこれを制す。
「2人とも!大事無いか⁉︎ これがゴムというものなのか…」
王は呆然としながら呟いた。