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天使のお茶会

 

勝負は今日の放課後。

 ルシファーの提案で、朝は通常授業があるため待ってもらうことにした。

 律儀に待つミカエルもミカエルだが、教育者として授業は大切なのだろう。


 その代わり、放課後の勝負のことは大々的に宣伝された。


『えー……本日、授業が終わり次第になりますが、大天使ミカエル様と、この学園の一年、天野 泡姫さんがグラウンドを使用します。生徒の皆様は、放課後の部活動と、すぐに帰宅することを控えてください。繰り返し、ご連絡いたします……』


 その放送が流された時、同じクラスの天使と悪魔で反応が様々だ。

 悪魔のほうは『キャー! 泡姫ちゃん頑張って!』やら『悪魔代表としてお願い!』やら色々とあるが、天使のほうでは『……マジ?』やら『……ああっ、泡姫ちゃん可哀想に』といった憐れむ声が多い。


「……別に、悪魔代表でもないから」

「またまたー、ルシファー校長にご執心なくせにっ」

「なッ! ちょ、違うわよ!」


 特命任務のため、よく校長室に呼ばれるアリエル。

 それは授業中でも関係なく呼ばれるため、クラスメイトにはそんな風に噂される。

 特命任務のことを皆に言うわけにはいかない。しかし、だとすると呼ばれる理由がない。


 なので、言葉を濁すアリエルに代わって『泡姫は校長のお気に入り』という噂がひとり歩きする結果となった。

 アリエルにとって校長は好みでもなんでもないが、ムキになって否定する態度が逆に信憑性を持たせる結果になっているとは、気づくはずもなかった。


「もう、ツンデレさんなんだから」

「うるさいうるさいうるさーい!」

「キャー! 泡姫ちゃんが怒ったー!」


 この学園をかけた勝負を控えるといっても、アリエルのクラスはいつも通りであった。




 その時間、校長室ではアリエルを抜いた三人がお茶をしていた。


「……兄さんは、本当にあのアリエル? という天使が私に勝てるとでも?」

「やってみなくちゃわかんないだろ?」

「あらあら、まるでアリエルちゃんみたいなことを言うのね」


 その言葉に、ミカエルは少し、アリエルという天使に嫉妬心を燃やす。

 自分を捨てて、地上に居座った兄。その兄が、地上で下級天使と信頼関係を築いていると知ったのは、つい最近の話だ。


「……そういえば、私のゾフィエルとラグエルはどうしました?」

「何もお前のってわけじゃないだろ。じゃあ呼ぶか」

「え?」


 そう言い、ルシファーは近くに用意してあったベルを鳴らす。

 ミカエルには何のためのベルかわからなかったが、そのベルが鳴らされた時に全てを察した。


「お呼びでしょうか?」

「なっ……! あなたっ……!」

「お茶菓子を頼む」

「畏まりました」


 そう言って、何事もなかったかのように退室していくゾフィエル。

 そこに、ミカエルに忠誠を誓ったかつての姿はなかった。


「ちょっ、どういうことよ!」

「おや、お前は全ての天使の能力を使えるんだろ? あいつがああなったのも、天使の能力だぜ?」

「……まさかそれが」

「そう、アリエルだ」


 ミカエルが全ての天使の能力を使えるのは周知の事実だ。

 しかし、膨大にいる天使全ての能力を使ったことがあるわけではない。


 そのいくつものある能力の故、有用性がない能力は使えるだけで試したことはない。

 そもそも、有事が多くもない天界で、そうそう使える機会があるわけでもない。

 なので、使えるとはいっても下級天使、ましてやアリエルという天使の能力など、気に留めてもいなかった。


「アリエル……洗濯天使……能力は……『ドラム式トルネード』?」

「ああ、それがあいつの能力だな」

「一度閉じ込められちゃったら、ウリエルの能力も使えないわよぉ」


 中に閉じ込められたら最後、その空間を破壊できるのは神しか存在しない。

 例え天使の長であるミカエルにすら、空間を破ることは不可能であろう。


「でも、それだけでゾフィエルが変わるとは……」

「ミカエル、良いことを教えてやろう」

「……え?」

「あら? それは言っちゃっても良いのかしら?」

「大丈夫だろ。どうせこいつには真似できないんだ」

「ただの天使に出来て、この私に出来ないことは絶対にありません!」


 全ての天使の能力は把握している。

 故に、ミカエルには知らない能力はないという絶対の自信があった。

 ……はずだった。


「絶対といったな? アリエルはな……洗剤能力者なんだよ」

「洗剤……能力者?」

「さすが洗濯天使といったところかしらぁ? あの子は『洗濯』することができるのよぉ」

「そ、そんな……ありえません!」


 洗剤能力。

 それは各個人に隠された能力とも言える。

 通常神から授かった能力は一つだが、ごく稀に能力を既に持っている天使がいる。

 アリエルは洗濯天使という特性のため、神から授けられる前にも唯一無二の能力を持っていたのだ!


「それが、アリエルよぉ」

「ば、ばかな……私が使えるのは神から授かった能力のみ……」

「まあ、それでもアリエルに勝ち目は薄いがな、ハッハッハ!」


 いくら洗剤能力があるからといって、全能力の使える最強天使に勝てるとは限らない。

 ミカエルの心にダメージは与えたが、知らぬところで敵の闘争心に火がついたことに、アリエルは気づくはずもなかった。


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