HR(ホームルーム)
「はい、それでは、皆さん、これから、1時間ロングホームルームをします」
教室に戻って来て、そうそう、HRが始まった。何をするかはだいたい検討はつく。入学して、1番初めのHRですることなんてどうせ自己紹介に決まってる。
「では、最初に、皆さんで自己紹介をしましょう。名前と出身中学校と何か一言言ってください。例えば、好きな漫画とか、中学校の時の部活何でもいいですよ」
やっぱり、そうなるのか。俺は自己紹介が大嫌いだ。なんせ、僕には、得意なことも、好きなこともまともにない。一応、バスケを中学校からやっていたが、別に上手という訳でもない。かと言って、得意なこと、好きなこと、苦手なことも、嫌いなこともない。おまけに趣味もない。普通すぎるのだ。だからきっと、高校生活3年間特に誰からも注目を浴びることも無く、卒業していくのだ。
出席番号が一番の子から、自己紹介をしていく。みんな、高校の時の部活どうとか、趣味がどうとか言っている。僕は、なんて言おうかをずっと考えている。中学校の頃バスケ部に入ってたって言おうか、でも、高校ではバスケなんてやりたくない。僕なんか、そんなに上手くないし、なんせ、練習が辛すぎる。僕がついていけるはずがない。何を言うか迷ってるうちに僕の前のチャラチャラした人にまで順番が回ってきていた。。まだ何を言うか決まってないのに。そんな焦りが僕の心臓の鼓動を早くさせる。
「じゃあ次は、相模原君!」
先生に名前を呼ばれると、自然と体が動き立ち上がってしまった。クラスのみんなが僕を見ている。
「えーっと、相模原麗です。出身は、天ケ丘中学校です。中学ではバスケをしていたので、高校でも、バスケをするつもりです」
言ってしまった…。バスケなんてやるつもり無かったのに。僕は教室の左後ろにいる。遥を見た。遥は僕の方を見てニヤついてる。僕は遥には高校でバスケをしないって言って、遥は続けた方がいいって言っていた。だから、俺がバスケ部に入るって言ったのが嬉しかったのだろう。僕の目には、遥の隣の七星さんの姿が目に入った。二人して僕の方を見て何か話している。遥は本当に人と仲良くなるのが早いとつくづく思う。まぁ、ルックスがいいから、どんな女の子も仲良くなりたがるだろうし、男子からの人気もあるから、自然と彼に人は集まる。
いざ、自分の自己紹介が終わってみると、心のモヤモヤ感はだいぶ無なくなっていた。ただ、バスケ部に入ると言ってしまった後悔はあったけど。
自分の番が終わってしまってからは、他の人の自己紹介が耳に入ってくるようになった。
遥の番まではあっという間だった。
「はい、男子最後は、宮原君!」
遥は、堂々とした雰囲気で席を立った。遥が立っただけで、女子はざわめき出す。
「宮原遥です。出身中学校は天ケ丘高校でバスケットボール部に所属してました。ちなみに、中学校の頃は県選にも選ばれました。高校でもバスケをしようと考えています。1年間よろしくお願いします」
遥はバスケで県選に選ばれていた。この学校はそれほど、バスケは強くないが、僕が一人になるのが不安らしく、私立からの誘いを蹴ってこの学校に入学してくれた。僕にはなぜ、遥がこんなにも僕のことを思っていますくれるのか分からない。
遥の自己紹介が終わり、女子の番になった。女子はやっぱり、運動部より文化部志望多かった。あの七星さんとずっと一緒にいたあの子は、春川舞雪というらしく、このクラスには数少ない運動部に入るつもりらしい。さらに、驚いたことが偶然にも、彼女はバスケットボール部に入るつもりらしい。彼女の出身は仙台市の山神中学校らしく、山神中の男子バスケットボール部とは何度か試合をした事がある。
春川さんの番が終わって、間に三人挟んで、遂に七星さんの番が回ってきた。
「じゃあ、最後、千聖さん!」
彼女は、スっと静かに立ち上がった。
「七星千聖です。出身中学校は希望ヶ丘学園です」
彼女の出身中学校を聞いて、教室の誰もが、オーっと声をあげた。それもそのはず、希望ヶ丘学園なら、宮城県にいる人が知らないはずがない。なんせ、その学校はお嬢様学校として有名で、かつ、頭がいい人ばかりの私立の学校だ。
「イギリスには小学二年生の秋から住んでいて中学の二年生の春に日本戻って来ました」
これまた、クラスの全員が驚いた。イギリスからの帰国女子?もうここまでくると、彼女がここにきた意味が分からない。僕の勝手な想像として、帰国女子の人たちはみんな頭がいいイメージがある。実際彼女はこの学校に首席で入学してきた。彼女ならもっと上のレベルの学校にも行けそうきがした。
「父がバスケットボールをやっていたので、バスケットボール部のマネージャーをしようと思っています。これから、よろしくお願いします」
いやいや、バスケットボール部のマネージャー?これは一体どういうことだ。あんな、子が、マネージャーをする?あのお嬢様が通う学校出身の彼女が?しかし、僕は、自然と彼女がいるバスケットボール部をイメージしてしまった。きっと、このことが学年中に広まったら、バスケットボール部入部希望者が増えそうなものだ。
「そういえば、私まだ、ちゃんと自己紹介してなかったわね」
七星さんの自己紹介が終わって、先生は思い出したかのように、自分の自己紹介を始めた。
「私は、七星妃奈です。七星千聖とは姉妹でーす!」
「ええーー!!」
妃奈先生が、七星さんのお姉さんって言うのにはクラスのみんなが驚きのあまり声をあげた。確かに、七星という名字は珍しいが、さすがに姉妹だとは思わなかった。父親とか母親とかの勤務する学校に子供が通っていていうことはたまにあるが、さすがに担任が同じクラスの子の姉って言うのに驚かないやつはいない。
「驚かせちゃったかな?ちなみに担当教科は、英語です。みんな一年間よろしくお願いね!」
先生の自己紹介が終わるのと同時に学校のチャイムが鳴った。
「じゃあ最後に、明日は新入生交流合宿があります。六時に正門に集合してください。持ち物などは、朝、机の上に置いてあった。しおりを見てください」
少し、教室がザワつく。明日の新入生交流合宿についてだろう。先生は教室が静かになるのを待った。
「じゃあ挨拶をしましょうか。今日はこのホームルームが終わったら、あとは帰っていいからね。じゃあ今日は、相模原君、注目、さうよなら、でいいから挨拶を頼めるかな?」
なんで俺なんかが挨拶させられるんだよって思ったけど、先生に言われると、どうしても、断ることが出来なかった。
「はい、わかりました」
「じゃあ、よろしくねー。よし!みんなきりーつ!」
先生はみんなを立たせると、僕に目で、挨拶をしていいよと合図を送った。」
「注目、さようなら」
「さよなら」
僕の後に、クラスのみんなが挨拶をする。中学校の頃は、挨拶係って言うのがあったから帰りの挨拶をするのは小学校の頃以来だ。
そして、僕の記念すべき高校生活一日目は終わった。