止まない疑問
久々の投稿です。
バラバラな投稿頻度でも見てくれるだけでモチベーションが凄く上がります…!!
「この世界の事を教えよう。でも教えれる範囲ってものがあるけどね」
マッドハッターはどこか楽しそうにそう言った。しかしこの状況で楽しそうに出来るなんて余程の楽観主義者なのだろう。羨ましいとは思わないが、どうかしている。
「此処は、さっきも言った通りワンダーランドだ、そして、その主人公は君……と言いたいんだが…」
言葉に詰まるマッドハッター、面倒臭い予感がした。
「主人公が、二人居るんだ…」
主人公が二人、と言う発言については嘘偽りは無いものだろう。返す言葉を探しているうち、次の言葉が飛んでくる。
「君の後ろの死体、あれは紛れもない僕だ。だけど僕も紛れもないマッドハッターだ。だからこれは矛盾している!これはわかるね?僕が考えた所、僕は殺された覚えはない。だから、君の後ろの僕は僕ではない、と考えるのが妥当だね。ではあれは誰なんだろうか…???」
妙に屁理屈を混ぜた言い方をするマッドハッターに腹が立つ。結局のところ自問自答をしているマッドハッターをよそに振り返り、死体をまじまじと見つめて居ると、明らかに違うもの。
「尻尾がある」
ふわふわとした、ボーダーの。
「それは何色だい?」
「紫色」
私に答えさせるのは現状の把握を深めさせようとしているのか、意図は図れないが、それなりの理由があるのか、と考える。
「ああ、これで僕…の死体の正体がわかったね。あれは『チェシャ猫だ。尻尾を出しているね、可哀想に、僕に成り代わって殺されてしまったんだね…」
とても…深く暗く沈んだ悲しい声。然し、すぐに声の調子は戻り話を続ける。
「問題はここからだ。あの死体を作ったのはもう一人の『主人公』なんだ。あの主人公はワンダーランドの住人を殺して回っている。無残にも、それの一番最初の被害者が僕に成り代わった彼、つまりチェシャ猫だったんだ。」
「だからさ…」
「それを、君が止めてくれないかい?」
「は?」
本気で変な声が出た。よくわからない世界でそこの住民に助けを乞われる。良く出来たテンプレートのような筋書きに最早呆れさえしていたが、どうすることも出来ないのが現状だ。尤も、そのワンダーランドの住人とやらを殺して回っているもう一人の主人公を止める、と言う荷が重すぎる表舞台のヒーローも御免だった。
でも、
拒否をする事は出来なかった。
脳が、身体が、そして本能が命令をしている。
「止めてくれないかい?と聞いたけど、それは間違えた言い方だったかもしれない。正しくは」
「止めなければならないんだ。アリス」
アリス、と良く通る声が脳髄に糸を通したみたいに、入り込む。
私は頷く事すら出来ずに立ち尽くすしか無かった。
ちょっとづつですか着々と進めていくので、温かい目で見てください…!