僕が付いているから
色々撒いていきたいです。(何を)
どうして、とただひたすらその感情が心を支配していた。
クラスメイトとの関わりや学校で少々理不尽なことはあってもそれなりには耐えてきた。
だが、ここまで率直に理不尽を押し付けられてはどうしようもない。
私は目の前のマッドハッターの首吊り死体を見てつくづく思った。目の前の許容範囲を超えている現実に吐き気を催す。
「君は本当に感情が無い様に見える。」
教室の扉あたりから声が聞こえた。
「さっきから見ていても君はまったく驚いたり怯えたりしなかったから。」
わたしは扉へゆっくりと振り返る。
………やはりここは普通の理屈は通らないらしい、振り返った先の人物は首吊り死体と全く同じ顔だった。
「僕は見ての通りマッドハッターさ。今度こそ驚いて…って思ったけど…やっぱり『感情が死んでいる』んだね。」
私はこの空間から置いてけぼりにされている。状況を何一つ理解できないままで世界は進んでいっている。私はこの状況から一つでも『理解』を生もうと私は言葉を放つ。
「此処は……どこ??」
一拍の静寂。
「ああ、此処は『ワンダーランド』だ。そしてこの世界は造られた世界なんだ、君は此処に迷い込んでしまったみたいだね。ねえ、アリス……?」
「アリスって…?」
「君のことさ。」
恐ろしい事に、意味不明な事が続くと『此処はそういう所だ』と脳みそが勝手に処理してくる。
仕方のない事
しょうがないこと
どうしようもない、と
でもそれが無ければ今頃発狂して色々ぶち撒いているが…
…………
ふと、大切な事を思い出した。掲示板の『マッドハッターを信じるな』というポスター。鮮明に思いだす。
途端に自分の中で目の前のマッドハッターに対して不安感が湧き、疑いの目をむけてしまった。
『それ』を察知したマッドハッターは少し悲しそうな顔をし、
「あの張り紙を見たのかい…?……そうか。見たんだね。でも君は僕の事を信用して。僕はワンダーランドの管理人だ。この世界のことならなんでも知っているよ。」
違う、そうじゃない、自分の状況下において何一つ理解できないままでそんな事を言われてもという話だ。
「じゃあ………」
私は何かが吹っ切れた。
理不尽とは本当に気持ちが悪い、理性がぶちぶちと千切れていく感覚がする。
順応しそうになっていた思考を押さえつけ、次々にマッドハッターに疑問をぶつけまくる。
「ワンダーランドって何?!アリスって何?!どうして私はこんな所にいるの?!首を釣っている貴方は何者なの?!元の世界に帰してよ!!」
「わっ、ちょっと、まってまって!」
突然な私の言葉の連続に焦るマッドハッター、しかしすぐにニヤリと不思議な笑みを浮かべる
「君の感情が死んでいるはずなのに…どうしてだろうね?疑問が湧いているんだね。」
問いかける様にそう言った。私は無我夢中で叫んでいた為その感情の正体に気づけなかった、だがしかしその感情に気づいた今はその『疑問』というものが心を支配して腹の底から溢れ出していた。
………私には感情が本当に無いのか…???
「さあ、君の疑問を一つひとつ解決していこうか」
マッドハッターは静かに言った。
話の顛末を広げていくのが苦手と感じてきた。
まだまだ続きます。