悪い夢でも見たのかい?
この回からちょっと(?)ホラー要素強めになります。
目を覚ますと、奇怪な風景が広がっていた。
色彩が眼球を通して脳みそへダイレクトに突っ込んでくる。そこは教室だった。机の配置などは普通だった。だがしかし、どうも色がおかしい。レッド、パープル、ブルー、グリーン……と、主張の激しい色がペンキをぶちまけた様に広がっている。
壁の方に目を向けると草が生い茂り、カラフルなキノコが所々に生えていた。確かキノコは木材の辺りに生えるのでは…と呑気なことを考えていると、
がっしゃあぁぁぁん!!
机と椅子が派手にぶつかり床に転がるような音が聞こえた。私が気を失うときに倒した椅子の音より何十倍も大きい音だ。
特に驚きはしなかった、が、私以外の『誰か』が居るかもしれないという希望があったので、音のした方向へ進むことにした。
私は慎重に教室(?)のドアを開けて廊下に足を踏み入れる。
相変わらずに色が変だ。
だが、それよりも致命的におかしいのは、
『果て』が無かった。
私の知る学校は廊下に出て左に突き当たりがあり、その右に1階への階段があるはずだ。
しかし、この学校の廊下はずっと奥まで続いている。
私は諦めて教室へ戻ろうとした、その時
がっしゃあぁぁぁぁん!!!!!!
二度目の騒音、最初より断然大きい。まるで戻ろうとした私を招いているかの様だ。
直感でそう感じた私は果ての無い廊下を歩く事にした。
「長いなぁ……」
12個目の教室を通り過ぎたあと、私は宛もなく呟く。それはどうしようもなく溢れた言葉だった。
体力はまだあるものの、気力が削られる。ましてやこの色彩の中では頭がおかしくなりそうだ。
壁に手を当てると、ポスターが貼られている事に気がついた。どうやら掲示板のようだ。ポスターに書かれている文字は殴り書きのような汚さで、読むのに時間がかかる。目を凝らし、解読すると、そこには
『Don't believe Mad Hatter!!!』
そう書かれていた。
「マッドハッターを信じるな……?」
マッドハッターは「不思議の国のアリス」に出てくるキャラクターだったはずだ。なぜこんな所で?
意識を手のポスターから外し、掲示板を見ると、その一面に英語で『マッドハッターを信じるな』と書かれたポスターが貼られていた。
すると、
ギギ………
掲示板の向かいの教室、つまり私の背後の教室から何かが擦れる音がする。私は振り返った。
「嘘……」
窓から『それ』のシルエットは見えていた。一見するとくたびれたてるてる坊主のようだ。
その教室のドアを開ける。
強烈な光景。
赤。 赤。ひたすらに赤い部屋。
その真ん中、異様な存在感を放つ『人だったもの』
へんてこな帽子、黒いジャケット、丸みを帯びた革靴。
その形は「不思議の国のアリス」の「マッドハッター」
つまり、
『教室の真ん中でマッドハッターが首を釣って死んでいた』
……皮肉なことに『感情のない』私は『それ』に驚く事が出来なかったのだ。
まだまだ序盤ですが、頭の中ではストーリーが凄い進んでいます。