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呼び出し 弐

 「まずはルークがどれ程鍛えたのか知りたいから、フアを狩ってみてくれ」

 

 「いきなりフアですか!?」

 

 「ん? うん。何だ、狩った事ないのか?」

 

 「いえ、ありますよ。ありますけど、もっと小さい物からいくのかと思ってましたし。それに、狩ったと言っても正式な依頼で狩った訳じゃないですよ」

 

 「小さい物からでも良いんだけど、そうすると運ぶのが面倒だなって」

 

 「運ぶのが面倒って、一体どれだけ狩ろうとしてるんですか?」

 

 「どれだけかは決めてないよ。ルークの実力と連携を練習するんだから、狩れるだけ狩る。帰る時に残ってたら運ぶって感じだな。まあ、依頼の獲物は別に狩ると思うけどな」

 

 「はあ、思い出しましたよ。お二人はそうだったなって」

 

 俺達は今、ルークを仲間にするかどうかを決める為に一緒に依頼を請けている。連携が出来るかの確認も大事だけど、ルークが今どれくらいまでやれるのか確認の方が大事だ。確かに仲間に加えるとするなら連携も大事だろう、だけどもし孤立した場合に一人で切り抜けられるか、最後は自分に懸かっている。まあ、そうならない様に立ち回りを心掛けているんだけどね。

 

 それに、久しぶりに会ってどれほど成長したのかを確かめたいってのもある。後は、槍でどうやって狩るのかも興味があるし、それをどう連携に活かすのか考えるのも面白い。

 

 

 

 「ほら、早速見付かったぞ。どれだけ強くなったのか見せてくれ」

 

 「分かりましたよ。でも、あれ大きくないですか?」

 

 「大きくても大丈夫だろ? 一頭だけなんだから。それに、危ないと思ったら助けるさ」

 

 「分かりましたよ。でも、本当にお願いしますよ」

 

 弱音を言いながらも、フアに向かって行った。狩った事があるなら、大丈夫だろ。狩ったら組合に運ばないと駄目だから、ある程度の力も必要だ。まあ、荷車があれば余り関係ないけどね。

 

 「はあ!」

 

 ルークが果敢にフアに攻撃を仕掛けている。剣と違う攻撃を見るのは面白いな。剣が主に叩き斬るって感じだけど、槍は突く払う斬る、と剣よりも攻撃方法が多彩だ。長いから折れるかと思ったけど、そんな事はない様だ。ルークがそうさせない様に立ち回ってるってのもあるんだろうけど。

 

 「止め!」

 

 ルークが大声と共に槍を胴に深く突き刺し、その勢いのまま最後に首を落として狩りは終わった。弱音を言ったわりには、危なげなく狩っている。俺達はいつでも助けられる様に準備はしていたけど、必要なかったみたいだ。

 

 「大丈夫じゃないか」

 

 「はあ、まあこんなもんですかね」

 

 「動きが速いのに、良く対応してたな」

 

 「これ位はって言うと大げさですけど、鍛えられましたからね。槍の先生からフアを一人で狩れるまでは、冒険者として旅に出る事は禁止されましたから」

 

 「へー、そうだったのか。剣も握った事もないのに、厳しくなかったか?」

 

 「そりゃもちろん。でも、冒険者にはなりたかったですから。冒険者になるのが一つの目標でしたけど、簡単には死にたくないですからね、厳しくしてもらいました。それに、お二人の仲間になるんですから、足手まといにならない様に頑張りましたよ」

 

 「まだ仲間にするとは決まってないけどな」

 

 「っう。はい、頑張ります」

 

 「ところでさ、宿ってどうしてる?」

 

 「宿、ですか? そりゃ稼げてないので、安宿ですよ」

 

 「そこって一杯か? 俺達さ、どこも空いてないって言われて、ちょっと高級な所を紹介されたんだよ」

 

 「あー、今は在位五十年で人が大勢来てますからねえ。でも、どこも無理だと思いますよ。安宿から埋まっていきますからね」

 

 「そっかあ、無理か」

 

 「因みに、紹介って誰か知り合いがいるんですか?」

 

 「ん? ああ、違う違う。門にいる兵士に紹介されたんだよ。人が大勢来てるから今から探しても見付からないぞって」

 

 「組合からじゃないんですか?」

 

 「「え?」」

 

 固まる三人。さっきまで狩りをしていたとは思えない程だ。え、何? 組合と兵士だと何か違うのか?

 

 「騙されたとは言いませんけど、組合は位階に合わせた宿を紹介しますよ」

 

 「そうなの!?」

 

 「はい。位階を把握してる組合だったら、それに合わせた商会や宿を紹介しますよ。幾ら稼いでいても、位階が高い冒険者を対象としている所は紹介しませんからね」

 

 「「マジか!?」」

 

 あー、でもどこだったっけ、クリスタだっけ? 確かあの時は、装備品を紹介してもらおうと組合に行って説明を受けたな。何だっけ、俺達が幾ら求めても、実力が伴わないと売ってもらえないって話だったけか。そうだとすると、宿にも当てはまるよな。あー、こりゃ組合に聞くのが一番だったか。

 

 「で、でも。お二人が着いたのは最近ですよね? それだったら、組合に聞いても安宿はなかったと思います。……まあ、それでも高級な宿は紹介されないと思いますけどね」

 

 「そっかあ。冒険者としては先輩だけど、組合の事とか国の事とか興味なかったからなあ」

 

 「装備品の事とか宿もそうですけど、冒険者に係わるのなら組合に聞くのが一番ですよ」

 

 「そっか、気に留めておくか。よし、話はここまでにして、狩りを再開するか」

 

 「ああ、そうでした。狩りの最中でしたね」

 

 フアを狩って少し話し込んでたけど、今は狩りの最中だ。こんなゆっくりと話し込んでる場合じゃない。それにしても、血の臭いもしてるのに何も寄ってこなかったな。この森って獲物が少ないのか? だとしたら、冒険者として稼げなくなるなあ。いや、試し斬りの時はいたから少ないって事はないか。

 

 

 獲物が少ないって事もなく、順調に狩れた。どうやら、森が広すぎて寄ってこなかっただけみたいだ。それに、他の冒険者を見掛ける事もなかった。それにしても、幾ら森が広いからと言っても他の冒険者に会わないってどうなんだ? もしかして、俺達が入ってる森じゃないところが良い狩り場なのか? まあ、それも組合に聞けば良いか。

 

 

 「まあ、初日としてはこんなもんで良いだろ。どうだった?」

 

 「どうだったじゃないですよ。途中からお二人も狩りに参加しましたけど、狩りすぎじゃないですか?」

 

 「そうか? 剣の試し斬りの時もこんな感じだったぞ」

 

 「流石にこの数を狩ったんですから、疲れましたよ、僕は。もう終わりですよね?」

 

 「終わりと言えば終わりだな。だけど、まだあるぞ」

 

 「な、何ですか?」

 

 「これを運ぶ事だよ。運ばないと依頼を達成した事にならないだろ?」

 

 「あー。でも多いですよ、運べますかね?」

 

 「運べるだろ。でも、フアは狩った事あるんだろ? その時はどうやって運んだんだ?」

 

 「その時は槍の先生が見守ってましたから、一緒に運びましたね。でも、一人の時はランしか狩ってないですから、それほど大変じゃないですね」

 

 「なるほどね。でも、俺達の仲間になるならこれ位は慣れないとな」

 

 「仲間にしてくれるんですか?」

 

 「まだだ。まだ初日だからな。あと何日か一緒に依頼を請けて判断だな」

 

 「そうですよね」

 

 「よし、そういう事だから運んじまおう。流石にこれ以上狩っても運べないからな」

 

 今回はラン五頭フア三頭グリエ一頭だった。ランは小さいのでルークに任せて、残りはナックと運んだ。今回も試し斬りと言うか、ルークの試しがあったから獲物の状態は良いとは言えない。それでも、前回と同じで肉も持っていったから買取り額は上乗せされた。今泊まってる宿が高級だから、少しでも稼いでおきたいとこだ。

 

 

 「ほお、今回は前回よりも少ないけど大物が多いな」

 

 「まあ、前回も今回も試しですからね」

 

 「試し、か。これで試しか。お前さん達が本気で狩ったら一体どうなっちまうんだろうな」

 

 「いやいや、本気になっても変わりませんよ。俺達はまだⅢなんですから」

 

 「そうだったな。まあ、お前さん達が大物を狩ってくるのが楽しみだよ」

 

 「まだまだ掛かりそうですけどね」

 

 「そうか? 俺はそうは思わねえけどな。ほれ、これが引き換え券だ」

 

 

 「はい、引き換え券です」

 

 「今回も素材だけじゃなく、本体も狩ってきたんだな」

 

 「もったいないですからね」

 

 「その方が組合としても有難いな。ほら、報酬だ」

 

 「ありがとうございます」

 

 「ところで、そっちのは仲間にするのか?」

 

 「いえいえ、まだ初日ですからね。これから何日かかけて依頼を請けて判断するつもりです」

 

 「そうだな、焦る事はない。ゆっくり決めれば良いさ。じゃあⅣに上がるのは延期で良いんだな?」

 

 「ええ、それでお願いします」

 

 それから俺達は報酬を受け取って、飯を喰いに出掛けた。王都はルークの方が早く着いてるから、食堂は任せた。ルークの稼ぎだとと言うと見下してる様に聞こえるかもしれないけど、それなりの味の食堂だった。まあ、それでもロッチで泊まった宿で喰った飯よりは良かったけどね。

 

 

 

 「試しで俺達についてきて、もう五日か。どうだ、慣れたか?」

 

 「そうですね、流石に慣れましたよ。慣れたと言っても、お二人の感覚にですけどね」

 

 「感覚ね。狩りの連携とかはどうだ?」

 

 「んー、僕には分からないですね。今までは一人で狩ってたんで。お二人はどうなんですか?」

 

 「そうだな。槍っていう新しい攻撃が増えた事で、苦労するかと思ったけど案外そんな事なかったな。寧ろ、どうやって槍を活かそうか考えるのが面白いな」

 

 「それって仲間に加えてもらえると?」

 

 「だな。ナックとも話してたんだけど、足手まといにはならなそうだし、新しい槍って言う武器が俺達にはなかった攻撃だからな」

 

 「ありがとうございます!」

 

 「という事で、これから組合に行って仲間にする手続きをするか」

 

 

 ルークと再開して五日はずっと狩りをしていた。初日でルーク一人の実力は分かったから、それ以降はどう連携していくのが良いのかって事に重点を置いた。その結果、足手まといにはならないだろうし、何より新しい槍が加わる事で俺達の攻撃の幅が増えるのが良いって事になった。ルークの事が嫌いで仲間にしなかった訳じゃないから、この五日で良いヤツだと分かったから仲間にする判断をした。これからは、三人でグループを組む事になる。あ、グループ名を変えないと駄目かな?

 

 

 

 「すいません、仲間を加えたいんですが」

 

 「おお、それよりも手紙が届いてるぞ

 

 「「「手紙?」」」

 

 「しかも、王宮から」

 

 「「「王宮!?」」」

 

 そんな所に知り合いなんていないぞ。そもそもこの国に知り合いで動き回ってるのって、グリさんくらいじゃないか?

 

 「驚いてないで、読んでみろよアロ」

 

 「お、おう。なになに……」

 

 

 「で、何だって?」

 

 「簡単に言うと会いたいから王宮に来てくれだってさ」

 

 「会いたいって知り合い……なはずねえよな。どうしてだ?」

 

 「父さんの知り合いらしい」

 

 「アロの親父さんか。あり得る、のか?」

 

 ルークを仲間にしようと組合に朝一で寄ったら、思わぬ手紙が届いた。しかも、王宮から。父さん、一体誰と知り合いだったんだよ。まさか、その人に悪さとかしてないよね? その仕返しに会うなんて嫌だぞ。でも、今回も断れないんだろうなあ。はあ、面倒事じゃなきゃ良いな。


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