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再会

 「それの使い心地はどうだ?」

 

 「うーん。前のと比べると斬れ味は同じ位で、こっちの方が軽いけど直ぐに壊れそうな感じがするな」

 

 「軽いってのは良いけど、壊れそうってのは駄目だな」

 

 「だよな。斬れ味とか重さよりも壊れないってのが一番だな」

 

 「じゃあ、依頼の動物を狩りつつどんどん試していくか」

 

 俺達は組合に行って、適当な依頼を請けてきた。今回は依頼を請けるのが目的じゃなくって、剣の試しだ。剣は何種類か借りてあるから、依頼の獲物を探すというよりは試し斬りをする獲物を探す方が正しいかもしれない。だから、試し斬りだから数は狩れている。でも、試し斬りだから狩った獲物を持ち運びながらってのは出来ない。勿体無いとは思うけど、今は剣の方が大事なので諦めている。

 まあ、帰りに残ってたら持って帰ろうとは思ってるけどね。

 

 

 

 「結構狩ったな。で、どんな感じだ?」

 

 「んー、使い慣れてないから違和感が凄いな。やっぱり」

 

 「じゃあ、前のと同じ様な物を作ってもらうか?」

 

 「うーん、どうしようか。俺等の戦い方って弓でけん制しつつ、剣で仕留めるのが多いだろ?」

 

 「うん、そうだな」

 

 「そうなるとさ、弓よりも剣の方が重要だろ? 止めをさすんだから」

 

 「まあ、そうだな。で?」

 

 「違和感はあるけど、使っていけば慣れるだろ。だから、これを機に変えようかなって思ってさ」

 

 「なるほどね。で、具体的にはどう変えるんだ?」

 

 「それは相談しながらになるんだけど、大きな剣にしたいんだよ」

 

 「大きな? それじゃあ弓はどうするんだ?」

 

 「それなんだけどさ、弓は諦めるつもりはないよ。でもさ、弓はアロで接近は俺って感じで別けないか?」

 

 「んー、別けるかあ」

 

 「今までは危ない場面もなかったから、良いけどさ。これからも同じとは限らないだろ?」

 

 「まあ、そりゃそうだけどさ。それだったら、遠目から弓で仕留める方が危険は減るんじゃないか?」

 

 「それを言ったらそうなんだが。遠目から弓で一方的に狩れれば良いだろうさ。だけど、近付かれた時の事も考えると、接近武器も使えた方が良いんじゃないかなって」

 

 「……なるほ、ど。剣が大事ってのは分かるし、接近された時に弓より剣の方が良いってのも分かる」

 

 今まで通りにいくとは限らないか。確かになあ、依頼で狩りに出掛ける時は危なかった事はないな。それ以外でも、まあ危ない場面はなかった、よな。あ、でも群れと遭遇した時は危ないとは思わなかったけど、弓よりも剣で狩った方が多かったな。

 いや、でもペルルでは弓でしか狩ってないな。そう考えると、弓が駄目って訳でもないよな。

 

 「だろ? 両方出来た方が良いと思うんだよ。弓はもちろん鍛錬を続けるさ、だけど、今以上に剣を鍛えたいんだよ」

 

 「まあ、弓に拘って危険になるよりは良いか。攻撃方法が増える方が良いし。森人族だからって絶対に弓を使わないと駄目だなんてないしな。でもさ、それなら、剣よりも槍の方が長くて良いんじゃないのか?」

 

 「あー、それも考えたんだけどさ。槍って頭を斬り落とすのは出来ないだろ? 目を潰すとか心臓を刺すとか、点での攻撃だけだろ、多分。それに、長いから折れそうなんだよ」

 

 「あー、折れるのは問題外だなあ。じゃあさ、槍も折れない様な物にしたらどうだ?」

 

 「折れない様に? ってどうするんだ?」

 

 「そりゃあ堅い素材を使うとか、刃の部分を剣みたいに長くするとか?」

 

 「なんだよそりゃ」

 

 「俺だって言ってて分からねえよ。それこそプロさんに相談した方が良いだろ」

 

 「あー、それもそうか」

 

 「それよりも考えないといけない事があるだろ」

 

 「? 他に何かあったか?」

 

 「試し斬りで狩った獲物をどうやって運ぶかだよ」

 

 「あー」

 

 たった今狩った獲物を見て、後ろを振り向く。見えないけど、相当な数の獲物が転がってるはずだ。盗まれない様にとか、喰われない様にとか一切してない。だから、いなかったらいなかったで別に構わない。だけど、依頼の獲物だけは運ばないと。

 

 

 

 「おい、こりゃまた多いな」

 

 「ええ、目的の獲物を探してたら他のがつい目に入っちゃって」

 

 「ついで狩れたら誰も苦労はしねえぞ。まあ実際に狩れてるんだけどな。お前さん達、本当にⅢかよ」

 

 「Ⅲですよ。Ⅳに上がる資格はありますけど」

 

 「まあ、Ⅳだとしてもこの量はなあ」

 

 依頼のルスはもちろん持ち運んだ。でも、他の狩った獲物は食い荒らされたり、運ばれていなくなっていたので、運べたのはルス一頭にフア一頭にランが十頭だ。血抜きはしてあったけど、門を潜る際に兵士に止められてしまった。血抜きはしてあるけど、血の臭いで他の動物や魔物が寄ってくるかもって事で。でも、冒険者なんて俺達だけじゃないんだから、持ち運ばれる量なんてこれ以上でしょ。

 

 そんな疑問を言ったら、大体の冒険者は金になる素材だけ剥ぎ取るらしい。肉は大体が置いてくるらしい。だから、狩った獲物をそのままの状態で持ち運ぶ事が珍しいのだとか。そう言えば、ここでの依頼は獲物本体じゃなくって、目的の素材だけってのが多かった。なるほど、こりゃ止められる訳だ。今回の俺達の依頼も素材だけだったな。

 

 「まあ、量はすげえけど。状態は良くはねえな」

 

 「まあ、狩る事を目的をしてましたから、素材の事までは考えてなかったですね」

 

 そう。剣の試し斬りのついでに依頼を請けたから、状態までは考えていなかった。いつもだったら矢傷と頭を落とすだけだ。でも今回は、弓は使わずに剣だけだったから斬り傷が多い。頭だけじゃなく、腕や脚も斬り落としていたりする。

 

 「それじゃあ、依頼は失敗ですかね?」

 

 「うーん、まあこれ位なら大丈夫だろ。それに、素材だけじゃなく肉まであるからな。これもしっかりと買取るぞ」

 

 「ありがとうございます。でも、依頼とは違う物を持ってきても買取ってくれるんですね」

 

 「ん? ああ、そうだな。依頼にある分は依頼主に渡す。だが、それ以外の物は組合が買取るんだ。もちろん、金になる部分だけだけどな」

 

 ふーん、そうなんだ。冒険者として活動してるけど、それは知らなかったなあ。今まで素材だけってのがなかったからなあ。ふむ、そんな仕組みだったんだ。知らなかった。いや、教えられたと思うけど忘れたんだな。

 

 「ほれ、引き換え券だ」

 

 

 「はい、報酬引き換え券です」

 

 「ふむ。依頼達成だな。じゃあ、これが報酬だ。追加の報酬も入ってるからな」

 

 「はい、ありがとうございます」

 

 「ところで、Ⅳへの昇格はどうするんだ?」

 

 「あー、どうする?」

 

 「んー、どっちでも良いけど」

 

 「急ぐ理由はないから、まだ良いか」

 

 「だな。それにここにどれだけいるか分からないしな」

 

 ふむ、ナックも急いでないか。まあ、これからも旅を続けるから位階を上げる機会はあるだろうし。今じゃなくても良いだろう。それに、いつ昇格の試験が出来るか分からないからな。コライに戻る予定もあるし。

 

 「と言う事で、Ⅳへは昇格しないでおきます」

 

 「ほう、他の冒険者とは違うな。まあ、昇格したくなったらいつでも言いに来な」

 

 「はい、分かりました」

 

 

 

 「それで具合はどうじゃった?」

 

 「色々試したんですけど、もっと大きな物が良いですね」

 

 「もっと大きな物? 槍みたいに長い物とかか?」

 

 「それも含めて相談したいんですけど、今考えてるのは頑丈で重さもあって、盾の役割もある程度出来る様にしたいんですよ」

 

 「ふむ、なるほど。槍はどうして駄目なんじゃ?」

 

 「使い慣れてないってのと使い方が分からないのと、折れそうってのが不安ですかね」

 

 「ふむ。確かに槍は剣に比べると折れやすいな。じゃが、その分長さがあるから有利なんじゃぞ。それに、折れにくい素材にも出来るぞ?」

 

 「んー、今回試した中には槍はなかったので、剣でいきたいですね。これから槍を持つにしても、使い慣れるのに結構掛かりそうだし」

 

 「うむ。確かにこれから槍を一から始めるのは難しいか。それで、盾の役割も出来るって具体的にはどれ位大きいのを考えてるんじゃ?」

 

 それからナックがどんな剣が良いのか、プロさんにあれこれ注文してた。出来る事や出来ない事まで、ナックがどんな物が欲しいのかプロさんと相談している。これからナックは剣を今以上に鍛えるって言うから、拘りが凄い。他の冒険者や兵士の物を参考にしながら、色々と決めている。

 

 俺はナック程には剣に拘りがないから、あっさりしている。今までと同じ大きさで、壊れなければ良いかなって。まあ、斬れ味が良くなれば尚良いかなって位だ。

 

 「お前さんの望む剣は一から作らなきゃならんから、結構掛かるな。逆にお前さんの方は簡単だから直ぐにでも出来るぞ」

 

 「まあ、俺は急いでないんでゆっくりで良いですよ。少ししたらコライに行くので、戻ってくるまでに出来てたら良いですよ」

 

 「ふむ。一年とか掛かる訳じゃないんじゃろ?」

 

 「ええ、そこまでは掛からないですよ。行き帰り含めても、四月もあれば大丈夫だと思います」

 

 「ふむ。そうか。じゃあそれまでには剣は仕上げておく。弓ももう少し改良したいから、その時にでも良いか?」

 

 「ええ、それで良いですよ。と言っても、直ぐにコライに行く訳じゃないので、ちょくちょくここに来ますよ」

 

 「おお、そうかそうか。そうしてもらえると有難いな。その方が調整がしやすいからな」

 

 「じゃあ、そういう事でお願いします」

 

 「うむ、任せておけ」

 

 プロさんに武器の事は任せて、宿に戻る。町の散策は終わってないけど、久しぶりに数を狩ったから疲れた。今日は直ぐに寝そうだな。

 

 

 「武器が出来るまでどうしようか」

 

 「今まで通りに依頼でも請けてようぜ。それしかやる事がないとも言うがな」

 

 「そりゃそうか。俺達は冒険者なんだしな、狩ってこそだよな」

 

 そんな調子で組合に向かう。まだいつコライに戻るかは決めてないけど、これからは組合へ行く事が日常になりそうだ。

 

 

 「お二人とも、遅いっすよ!!」


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