表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/165

ペルル迎撃戦 参

 今、自分が見てる光景を信じられない。信じたくないって訳じゃなくて、理解が追いつかない。だってそうだろ。魔物に弾き飛ばされるかと思ったら、魔物を弾き飛ばしてるんだから!

 

 ヘラクさん達は群れの先頭でぶつかり合って、そのまま群れの最後まで駆け抜けて行った。その間は攻撃する事なく、だ。だけど、それは見事と言う他ない。駆け抜けた跡には、一筋の空白地帯が出来上がっていた。その後は何度も行ったり来たりを繰り返しただけ。だけとは言うけど、その効果は絶大だ。何しろ、弾き飛ばされた魔物達は起き上がれる物は少なく、その少ない数も残りの地上部隊に狩られていく。

 

 そして、何往復かして魔物達が群れで行動が出来なくなった頃にはヘラクさん達も突進を止めて残りの地上部隊と一緒に狩り始めた。群れで一つの意識を共有してた訳ではなさそうだったので、連携は元々ないんだけどね。それでも、群れがどんどん減っていくのを見るのは気持ちが良いものだった。ヘラクさん達突進組は、盾を背負いながら殴る蹴るの大活躍だ。拳を一振りする度に頭が消し飛び、脚を振りぬけば身体が両断されている。魔物にとっては、弾き飛ばされるのとどっちが良いんだろ。……どっちも結果は変わらないから一緒か。

 

 「下のヤツ等に負けるな! 早く上を狩って、援護に回るぞ!」

 

 俺だけが見蕩れてた訳じゃなかったみたいだ。冒険者の即席隊長が注意を上に向ける様に、大声を上げる。それに気付いて、止まっていた手を動かして早く援護に回れる様に弓を射る。

 

 「冒険者に負けてられんぞ! 我々軍人もやれるってところを見せるぞ!」

 

 いたんだ。今まで何も指揮らしい事を言ってなかったし、どこにいるのかも分からなかったんだけど。まさか、冒険者がここまでやるとは思わなかったのかな。それが、こんなにも活躍するもんだから焦ったのかな? まあ、早く狩れるんだったら何でも良いんだけどね。

 

 それからは早かった。競う様に対空部隊もどんどんと狩り、仕留められない獲物は下に落とせば地上部隊が囲んで狩ってしまう。ヘラクさん達は駆け回ったから疲れてるかと思いきや、動きが鈍る事なく殴り倒している。しかも、孤立しない様に常に五、十人位で行動している。

 

 

 

 「ふう、やっと終わったか」

 

 軍から支給された矢を全部使い、自分の矢も十本程使った。今回は弓だけだったけど、中々に楽しめた。楽しめたってのは変な言い方だけど、実際そうだ。こんな数の群れを狩るなんて今まで経験してこなかったし、地上部隊のと言うよりもヘラクさんの戦い方を見れたのは良い収穫だ。

 

 「うわ、凄い事になってるな、下」

 

 隣で狩っていたナックが近づいて来て、下を覗きながらこう呟いた。それに合わせて俺も下を覗くと、魔物の死骸だらけでヘラクさん達しか立っていない。丁度朝日が昇ってきたから、下の状況の酷さが良く分かる。

 

 「こんな数いたのか。良く守れたな」

 

 「本当だよな。暗かったから良く分からなかったけど、これは逃げても誰も文句は言わないだろ」

 

 「だな。でも、この数を軍だけじゃ無理だったろうな」

 

 「ああ。軍だけじゃ無理だと分かると、冒険者は全員参加させられるだろう。そうなると、準備も下と上の連携もないだろうから厳しいな」

 

 「それに、ヘラクさん達の活躍が大きいだろ」

 

 「ああ! あれは凄かったな! あんな戦い方が出来るなんてな!」

 

 「お、おう」

 

 興奮するのは分かるけど、ナック程に筋肉に拘りがある訳じゃないから勢いに負けてしまった。だから、ここまで共感は出来ない。出来ないけど、あれは凄かった。兄さんでもあんな戦い方をしてなかった。

 

 「ま、まああの戦い方を真似出来るとは思えないけど、あんな戦い方があるんだなって知れたのは良かったな」

 

 「目指そうかな、俺」

 

 「本気か?」

 

 「いや、あそこまで極めるとは言わないさ。だけど、弓も剣もなくなった時に備えるのは良い事じゃないか?」

 

 「う、うん。それは確かに。でもあそこまで出来るって事は複数と契約してるぞ?」

 

 「まあ、それはな。今の俺が出来るかって言われれば、出来ないって答えるしかないからな。全部の精霊と契約出来たら、流石に出来るだろ」

 

 「まあ、な。ヘラクさんに教えてもらうのも良いかもな。でも、これからが大変だな」

 

 「これから?」

 

 「だってそうだろ? この群れを運ぶのだって、解体するのだってどうするんだよ」

 

 「あー」

 

 同時に下を覗く。解体は出来ないけど、あの数を運ぶのは流石に嫌だ。疲れてはいないけど、眠たすぎて身体が思う様に動かない。朝の依頼をして帰ってきたら、群れが来てるって報せがあってずっと待機してたからな。それから、直ぐに狩りに連れて来られたから休んでない。そう思うと、無性に眠たくなってきた。

 

 「それは大丈夫だ。後は軍に任せてくれ。流石にそこまでやらせる訳にはいかないからな」

 

 「それは有り難いですね。じゃあ、休みます」

 

 軍の指揮官がそう言ってくれたから、俺達冒険者は遠慮なく、壁を降りて各々の宿へ歩き出した。周りを見ると、疲れているのか眠いのか足取りは重い。だけど、やり切ったと感じているのだろう、目が血走ってる。声には出さないけど、興奮してる様だ。まあ、それは俺も同じだけど。

 

 宿に戻ってからは、何もする気力がなく装備品を外したら直ぐに寝台に倒れ込んだ。倒れ込んだと同時に自分の意識とは反対に瞼が落ちてくる。今はそれに素直に従って眠気に身を任せる事にする。

 

 

 

 「全く、冒険者と言うヤツは凄いな」

 

 「いきなりどうしたんですか? 隊長」

 

 私は今、魔物の死骸確認と運ぶ作業の指揮をしている。そんな私のつい出た呟きに、目敏く反応したのは副長のホークだ。長い事、私の補佐をしてくれる頼れる副長だ。こいつもそろそろ副長じゃなくて、隊長に昇格出来る様に上に申請するかな。

 

 「隊長?」

 

 「ん? ああ、すまん。西門に来た以上の数だったのに、倒しきってしまったなと」

 

 「ああ、そういう事ですか。彼等がいなかったら、ここまで早く討伐出来なかったですね」

 

 「それもそうだが、軍だけだと止められずに全滅してたかもしれん」

 

 「それは流石にないんじゃないですか?」

 

 「あの数の群れの突進を軍が止められるか? それに、壁が無事とは思えん」

 

 「それは……」

 

 「西側だけで兵士は疲れきってたんだぞ。そこにそれ以上の群れが来たんだ。対応出来ると思うか?」

 

 「負けない心があれば」

 

 「負けない心、か。それは大事だ。だが、それだけで魔物達が手加減してくれるのか? もし、それだけで勝てるならば鍛錬なんて必要なくなるだろ」

 

 「そ、それはそうですけど」

 

 「お前も冒険者達の戦いを見ただろ? 特に地上部隊を」

 

 「……はい、見ました。正直、真似出来るとは思えませんでした」

 

 「真似しろとは言わん。冒険者は個、軍は集団だ。それぞれ戦い方が違うのは当たり前だ。それに、あのヘラクって冒険者、恐らく三か四の精霊と契約しているぞ」

 

 「!? それは本当ですか?」

 

 「冒険者の強さを把握しておくのも軍の勤めだ。いつ敵になるか分からんからな。あいつのグループは位階Ⅶだ。過去には契約してないでその位階まで到達したグループはいたが、それは種族が違う。彼は人族だ。人族も最高位まではいけるだろう。だが、それは契約してる場合に限ってだ。あの突進の速さだけでも、身体強化してるのが分かる。尚且つ、武器を使わないで魔物を圧倒していたんだ。あれで契約していないのだとしたら、恐ろしいよ。敵にはなって欲しくないな」

 

 「た、確かに彼が敵になった時に止められる自信がないですね」

 

 「そうだろ。それに、魔物の群れがここを襲うなんて今まであったか?」

 

 「そう言われれば。私が小さい頃にあった様な記憶がありますね」

 

 「それほど前って事だ。しかも今回は同時に二度だ。前の事を知ってる者は軍には少ない。だから、気の緩みもあったんだろう。実際、私もそうだ」

 

 「では、どうしましょうか」

 

 「それについては、長官に今回の事を報せる。それでどうするか決まるだろう。私としては、ある程度の人数ずつ各国へ冒険者として派遣して、精霊と契約させるべきだと伝えるがね」

 

 「そこまでする必要があるって事ですね?」

 

 「ああ。お前も報告を受けたから知ってるだろ。こことクリスタとの間でも魔物の群れが発生した、と」

 

 「!! もしかして、何かが起こっているとお考えですか?」

 

 「分からん。分からんが、何かが起こってるんだと思う。魔物の群れなんて、そうそう起こるものじゃない。それなのに短い間に三度だ。何かがあると考えて備えるのは当然だろ?」

 

 「そ、そう言えばあの時の群れを全滅させたのも冒険者でしたね。クリスタからの援軍を待つ事なく」

 

 「ああ。誰も死ななかったのは良い事だ。だが、冒険者にだけ任せるのは軍としては駄目なんだよ。全て任せる様になると、軍なんていらないって事になる。冒険者は確かに強い。強いが、彼等は町や住人の為に命を懸けて戦う必要はないんだ。今回だって、戦いに参加しなかった冒険者はいるんだからな。だが、軍はそうじゃない。敵が如何に強大でも立ち向かわなければならん」

 

 「その為の契約って事ですね?」

 

 「ああ。それで全部解決出来るとは思わないが、出来る事は後悔なくしておきたくてな。だからホーク、これからは更に忙しくなるぞ」

 

 「はい、望むとこです」

 

 良し、この問題を共有出来たな。私だけが危機感を持っても意味はない。だが、それを一人ずつ増やしていかないと、対応が遅れる事になる。今回は冒険者がいたから乗り切れたが、次も冒険者がいるとは限らない。軍だけで対応出来る様に、住人からの信頼が軍から冒険者に向く事のない様にしないとな。


やっと終わりました。

今回はアロ達以外を活躍させたかったものですから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ