表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/165

回想

受け → 請け (2017/11/1)

 契約してからどれだけ経っただろうか。今では強化術なら意識しないでも出来る様になった。全力で強化しても、少しは耐えられるまでになった。精霊術を完璧ではないけど、ある程度使いこなせる様になったから旅に出ても良いかなって思ったので、父さん達に旅での事を聞く為に今日は狩りを中止した。

 

 「それで、旅の何を聞きたいんだ?」

 

 「旅の事もそう何だけど、この世界の事を知りたいんだ」

 

 「そうだね、じゃあこの世界の事から話そうか」

 

 今日は家族だけで話をする為に狩りに出ないで、家に集まっている。ナックも旅に出る様だけど、今日の話には呼んでいない。もしかしたら、記憶の事を話すかもしれないからだ。

 

 「まず、この世界全体には名前はないよ。私が旅に出た時は国は六つあったね。国の中に精霊殿があるんだけど、精霊殿を中心として護る様に国が出来たって言うのが成り立ちだね」

 

 「今さら何だけど、そういえば名前ないんだね」

 

 「そうだね。前の世界にはあったのかい?」

 

 「んー、記憶にはちきゅうって言ってたね。国毎に言葉が違ったから、それぞれの言葉で名前はあったみたいだね。因みに、前の国の名前はにほんって言ってたよ」

 

 「なるほど。言葉が国毎に違うのはこっちと同じだね。ただ、旅人は大体が何でも屋組合に登録するんだけど、そこでは別の言葉があるんだよ。だから何でも屋組合に登録する人は、生まれた国の言葉と何でも屋組合の言葉を覚える必要があるね」

 

 「……え? 言葉が違うの? 覚えられるかな」

 

 言葉が違う何て思ってもみなかったぞ。ダイスケも他の言葉を話せなかったみたいだし。

 

 「大丈夫。そんなに難しい事ではないよ。私でも旅を続けられたんだからね。それに、何でも屋組合の言葉ってタロス国の言葉を使っているんだ」

 

 「安心出来るかな? 他の言葉なんて聞いた事もないから、不安しかないよ。後、何でタロスの言葉を使ってるの?」

 

 「他の言葉なら聞いた事あるよ。トルはタルパ国の言葉だよ。後、何でも屋組合を作ろうって言い出したのがタロスなんだよ。それで、何でも屋組合ではタロスの言葉を使おうって決まったみたいだよ」

 

 「へー、そうなんだ。ここの言葉って何て言うの?」

 

 「名前はないよ。あえて言うなら、レント語じゃないかな。後、近くにあるタルパとは言葉が大体同じだから、通じるはずだよ。トプロ達も大丈夫だったろ?」

 

 「そうだね、大丈夫だったね。最初は新しい言葉に戸惑うけど、使う言葉も限られてくるから、そんなに不安になる事はないぞ。でも、依頼によってはその国の言葉も使える必要があるかもな。後、旅人じゃなくて冒険者に呼び方が変わってたね。何でも屋組合も冒険者組合になってたね。でも、依頼内容は何でも屋組合の時と変わらないよ」

 

 「ああ、そうなんだ。私が旅をしたのは随分と昔だから変わってるのも当たり前か」

 

 むむ。全部の国を行く予定だから、全部の言葉を覚えるのか? そんなの無理だろ。うわ、未知な動物や魔物に苦労するんじゃなくて、言葉で躓く事になるのか。

 

 「まあ、言葉は聞いてみないと分からないね。それでこの世界って一年って何日なの?」

 

 「んー、大体は同じになるんだけど、それも国毎に違うよ。どうやって一年を決めているのかが違うからね。星を基準にしてても、同じ星を基準にしてるとは限らないし、測る方法も違うからね。でも、大体400日じゃないかな。ここでは一年を400日で生活してるよ」

 

 「へー、400日だったんだ。知らなかったよ。と言うか、何で知らないの?」

 

 「そうだねえ。一年が何日なのかって知るよりも、狩りのやり方や野草などの知識を覚える方が重要だからね」

 

 「ああ、なるほど。確かにそれはあるか。そう言えばここには畑がないよね。それも関係してるのかな」

 

 「んー、どうだろうね。近くの村で畑をやってる人達は、経験で種を撒く時期とかを知ってるからね。一年が何日あるのかを知ってるのは、国を動かす人たち位じゃないかな」

 

 なるほど。まあ、国を動かす様な気はないから大丈夫か。もし国を動かす気になっても、余所者を受け入れるとは限らないか。

 

 「国ってどれ位あるの?」

 

 「んー、私が行った事があるのは4つの国と1つの集落だね。で、旅した時には六つの国があったね」

 

 「俺達が旅してた時も国は六つあったぞ。多分、父さんが旅してた時とは違うと思うよ」

 

 「ん? 戦争か何かあったのかい?」

 

 「国同士の大きな戦いはなかったけど、領土拡大する為に集落を攻めてた国はあったな。」

 

 「へー、そうなんだ。それはどこだい?」

 

 「聖ルミターゼ神国だね。幾つかの集落を攻め落としてたね。神が降臨した国だから、神の教えを広めると言ってたね」

 

 「それって、もしかしてオクヤマ様の事かな?」

 

 「いや、それは分からないな。降臨したのも随分昔の事らしいし、姿絵なんかは残ってないみたいだからね」

 

 んん、何だか神様って聞くとオクヤマ様が浮かんでくるな。でも降臨したからと言って、そこの種族を特別視するはずないよな。それとも、統一するのが神の意思なのか?

 

 「じゃあ、そこの国は注意した方が良さそうだね。お金はどうなってるの?」

 

 「それも国毎に違うな。大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨、石貨の七種類だったかな。大体この七種類なんだけど、意匠や金属の含有量が違うね。タルパには世界最大最古の鉱脈があって、鉱石は豊富に採れるから一番質が良いね」

 

 「タルパのお金が一番質が良いと。他の国でもお金は使えるの?」

 

 「それは大丈夫だよ。大きな商店ならば問題なく使えるよ。でも小さい店とかでは使えない事の方が多いから、その場合は何でも屋組合で替えてくれるよ」

 

 「あのさ、ここではお金がなくても生活出来てたでしょ? 父さん達は旅に出る時どうしてたの?」

 

 「時々、近くの村と物々交換はしてるんだけど。その時に、お金が混じる事もあるんだよ。それを各家族に配分って感じだね。後は旅人が契約に時々来るんだけど、その時にも交換はするね」

 

 ふむ。お金がなくて仕事もなくて、飯もなく野宿って可能性もあるんだな。そりゃそうか。仕事探しに行って直ぐに見付かるとは限らないか。

 

 「その冒険者組合って、どこにあるの?」

 

 「大体の村にはあるよ。登録はどこでも出来るはずだよ」

 

 「いや、登録も小さな村では出来なくなってたね。少し大きな町位じゃないと出来ないね」

 

 「ほう、そこまで変わってるんだ」

 

 「登録って何か必要な事あるの?」

 

 「いや、何もないな。名前と出身だけだな。依頼は個人から村までで、内容は子守りや素材採集や魔物討伐があるな」

 

 。冒険者組合って名前は変わったけど、内容は何でも屋なんだな。旅人だと魔物や動物を狩るのが主だと思ってた。

 

 「魔物や動物を狩るのが多いのかと思ったよ」

 

 「ああ、それはね。旅人は全員が戦いを得意としてる訳じゃないからね。珍しいのでは、楽団がいたね。彼らは戦いよりも、人を楽しませるのが得意だからね。だから、彼らが移動する時に護衛する依頼も出るよ」

 

 「へー、そんな人達もいるんだね。何だか楽しそうだね」

 

 「楽しい事は楽しいよ。でもね、楽しい事ばかりじゃないよ。言葉も習慣も違うから、疲れるよ。最初は小さな事でも、段々積み重なっていくと取り返しの付かない事になる事もあるからね。それに、森人って外に出る事が少ないから珍しいってのもあるね」

 

 そうか、言葉の壁があるのか。意思疎通出来ないのは辛いな。発音が似てて違う意味の言葉ってのもあり得るか。うう、旅に出なくても良いんじゃないか? ここでも生活は出来るし、揉めると分かってて旅をする必要はないんじゃないか?

 

 「父さん達はどうしたの?」

 

 「私は一人だったから、何から何まで戸惑ったよ。相談出来る友人もいないしね。森を出た時は楽しい旅になるんだろうなって、心躍ってたよ。だけど、言葉や習慣の違いから揉める事が日常になって、帰る事ばかり考えていたよ」

 

 「それで、どうして旅を続ける気になったの?」

 

 「そんな時に同じ旅人に助けられてね。そいつはタルパの生まれだから、言葉も習慣も問題なかったんだ。困っているのを見て放っておけなかったんだろうね。まあ、珍しい森人ってのもあったと思うけど」

 

 「へー、じゃあ、その人に会わなかったら森に戻ってた?」

 

 「ああ、そうだろうね。そいつは何に対しても明るく振舞ってて、こっちまで悩むのが莫迦らしくなってね。だから、そいつとはずっと旅してたよ。旅を続けたからスイにも出会えたんだけどね」

 

 「そうねえ。あの人に会えてなかったら、プーマと出会えてなかったし貴方達も生まれてなかったからね」

 

 そうか、二人が出会ったから俺達は生まれる事が出来たんだ。ある意味、命の恩人って事かな。

 

 「兄さん達はどうだったの?」

 

 「俺達は父さんと違って、二人だったから相談出来たからな。一人で心細いとかはなかったな。でも、新しい場所に行って馴染めるのか不安はあったな」

 

 「そうねえ。見た目じゃあ森人って分かり難いけど、視線を常に感じてたわね。何かこう、観察している様な」

 

 それは分かる気がする。二人とも、顔立ちが整ってるからな。見ちゃうのは仕方ないだろう。

 

 「兄さん達はずっと二人で旅してたの?」

 

 「ずっと一緒にいたのはいなかったな。でも、何度か同じ依頼を請けて仲良くなったやつとかはいたな。そいつらと町から町への護衛の依頼を、一緒に請けたりとかはあったな」

 

 なるほど。ずっと一緒じゃないけど、同じ依頼を請ける事もあるのか。そうだな、初めから仲間を探すよりも、同じ依頼を何度か請けて能力とか考え方が近い方が良いかな。

 

 「登録した後って、何か紙みたいなのもらうの?」

 

 「紙?」

 

 「んー、何て言ったら良いのかな。記憶にあったんだけど、登録する時に血を垂らして自分専用にするんだ。それで、達成内容とか自分の能力を見る事が出来るんだよ。それで達成していくと難度が高い依頼を請けられるんだけど、そういうのない?」

 

 「紙は発行されるよ。だけど、血なんか垂らさない普通の紙だよ。名前が記載されるだけだね。依頼が達成出来たら、依頼者と一緒に組合に行って、達成報告とお金を貰うんだ。その時に、紙の裏に達成した事を書き加えるだけだね。依頼の成功が多いと組合の信用も上がるし、依頼を請けやすくなるってのはあるね。難度に関しては、あったかな。トプロ達はどうだい?」

 

 「大体そんな感じだったな。依頼の難度は設定されてたね。最初は簡単な物から請けていって、徐々に難しい依頼を請けられる様になるんだ。だから、依頼と冒険者には位階はあるんだ」

 

 なるほど。流石に記憶にある様なものはなかったか。と言うか、そんなのどうやって作るのか見当も付かないか。でも、それだと偽物が作られないかな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ