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王都 その壱

随分と空いてしまいました。

こんなに空いたので、自分でも曖昧に。。

 「やっと王都か」

 

 ……誰も返事もしない。まあ、気にしないから良いけどね。それにしてもここに来るまでに色々とあったなあ。どの町の試練も特徴があり過ぎて忘れられない。トゥエーの大物を釣るってのは、今考えるとこの国柄らしいだと思った。そんな中俺達向きじゃなかったのは、大食いだ。俺だけじゃなく、皆食べるのは好きだ。だげど、限度ってのは何事もあるって初めて思い知った。珍しい、美味い物を少しづつたくさん食べたい。だから、一つの物で味が変わらないのは辛い。美味かったら何とかなったかもしれないけど。兎に角、量を優先だから味は二の次だ。何度も挑戦する羽目になったから暫く食べるのが嫌いになった程だ。それにもっと深刻な問題が生じたんだ。

 

 太った。

 

 太ってる事は必ずしも悪い事じゃない。冒険者の中には太っていても活躍している人はいるから。じゃあ何が問題かって?

 

 太った事で体が上手く反応しないんだよ。見た目で変わったのは少しだけだと思うんだけど、いつもと違って体が重い、ような。いつもは太ったなんて感じないんだよ。まあ、元々量は食べないし、食べても狩りで元通りになるんだよ。でも、今回は違った。何度でも何回でもいつでも挑戦できるんだよ。だから、何度も連続で挑戦しちゃったんだ。その結果、太ったと。何というか、腹回りがポコッと出て顎が丸くなった様な、ならなかった様な。

 

 ……と、とにかく今までの試練で一番の難敵だったんだ。こんな事なら大食いのヤツを仲間にすれば良かったな。

 

 「(あら、いたじゃないの)」

 

 「(いたよ、いたけどさ)」

 

 確かにいた。いたけど、あれは仲間とは言えない。だって、大食いの試練の為だけなんだぞ。試練を乗り越えられそうもない冒険者を見つけて、臨時の仲間に入れてくれって持ち掛けるんだ。その人たちは冒険者なんだけど、この町の専属みたいな感じだ。より詳しく言うと、試練専門になっただな。冒険者ではあったんだけど、この町に辿り着いて出ていかなかった人たちだ。それぞれ理由はあるけど、狩りよりも食べる事を選んだんだ。それに、家族が出来たのが大きいんだろうな。

 

 あと、太ってるから動きは遅い、でも体重があるから一撃は重い。重いけど。なかなか当たらない。それに、遅いから逃げ遅れる可能性があるんだよね。だから、冒険者として限界を感じてたところだったから、良い踏ん切りが着いたとも言ってたな。

 

 

 「遂にここまで来た訳だが、長かった様な短かった様な」

 

 「そうだな。俺は色々あったから長く感じたな」

 

 「内容が濃すぎたからそう感じたんでしょうね」

 

 「とは言っても、誰も外に出たことないから比較できないけどな」

 

 王族のデルですらないんだ。……いや、王族だから経験しないんだ。王族だから冒険者みたいに試練を超えなくてもいいだしな。

 

 「何を言うか。これでも王族だぞ。近隣の国へは行った事くらいあるさ」

 

 「それはそうなんだが。ただ、今回みたいに試練はやってないだろ?」

 

 「……それを言われると確かにそうなんだが。まあ、こうやって冒険者をやっていないと分からない事があるのだな」

 

 「そりゃ、王族と冒険者では立場が違いすぎるからな。良い経験なんじゃないか? 国に帰ったら自慢できるな」

 

 「まだ一か国とは言え、何から何まで違うからな。知識として知っているのと実際に経験するのでは、天地の差があるな」

 

 「そんなもんか」

 

 

 「……ぷ。あー君たち。そこで突っ立ってると通行の邪魔になるんだ。門を潜る気がないなら離れてくれないか? 他の人たちから気味悪がられてこっちに注意してくれって言われちゃってねえ」

 

 目線を前に向けると、門から一人の男がこちらに歩いてきてた。注意しにきたのに批難する様な顔はしてなくて、生暖かい目で見ている表情だ。だって、笑ったからな。堪えている様だったけど、最初に笑ったのを聞き逃さなかったぞ。それに、通行のって言うけど、道なんてないから邪魔しようにもできないし、目の前に王都へ続く大きな門があるだけだからな。周りなんて何もない平原だぞ。こんな環境で通行の邪魔をするのって一周回って凄いだろ。

 

 それにしても大きいよな。これまでの町も大きかったけど、ここは格が違うな。塀は丸いんだろうけど、左右がわからない程伸びてる。

 

 「……で、どうするんだ?」

 

 「ああ、すいません。やっと王都に来れたから、何だか色々と思い出しちゃって」

 

 「なるほどな。まあ、分らんでもないな。君たちみたいな冒険者は少なからずいるからな。それでは急かしては悪い事をしたな。準備が整ったら来ると良い」

 

 「あ、はい」

 

 それ以上、追及する事もなく門へと戻って行った。クローコー族で冒険者の知り合いと言えばワイパーさんだけど、彼よりも少し小さいかな。だけど、厚みがあるかな。どっちが優れてるってのは断言できないけどね。

 

 「いつまでもここで浸っていては確かに気味悪いしな。では行くか」

 

 「ですね」

 

 あ、因みに言葉は何とか覚えた。覚えないと生活ができないからな。いつまでもデルに頼る訳にはいかないしな。

 

 

 

 門での審査はあっさりと終った。王都だから今まで以上に厳しいのかと思ったけど、逆で一番早かった。何でも試練を超えた証があるから、信用はあるのだとか。犯罪歴は一応見るけども二度までなら許されるらしい。罪は当然、犯した町で償うけども赦されたなら次の町へ許可が下りるらしい。人柄とかよりも強さを重視する国柄みたいだ。それでも、二度までなら赦されるけども三度目はない。どうなるのかと言うと、武器防具、所持金など金目の物は没収されて、国外追放だ。且つ組合にもある程度は制裁がある。

 

 「王都っていうくらいだからなのか、何もかもが大きいな」

 

 「うむ。私は訪れた事があるから驚きはアロ達ほどではないな」

 

 「でもさ、王都だからって同じ種族なんだから身体の大きさなんて変わらないだろ? もしかして王都に住んでるのは特別大きいとか?」

 

 「んー、それはないだろ。ほら、周りを見てみろ。特別大きくないだろ?」

 

 「そ、そうだな。じゃあ何でだ?」

 

 「単純に人の往来が多いからだろうな」

 

 「そんな理由か」

 

 「それよりも他に気付かないか?」

 

 他って言われてもな。大きいってのが目立って特にこれといって。まあ、広いから歩きやすいけど、そんな事じゃないよな。そう言われたけど、何も気付けずにただ歩いてる。いや、ちゃんと組合って目的地はある。俺だけじゃなくて、誰も気付いていないみたいだな。

 

 と、不意に。

 

 「あ、綺麗なんですよ」

 

 「綺麗? ……まあ、これまでの町に比べたら綺麗だな。道に物が落ちてるなんてのは当たり前だったけど、ここは……落ちてはいるが少ないな。だが、それがどうした?」

 

 「それもそうなんですけど、臭くないんですよ」

 

 「「あっ」」

 

 そう言われれば、確かに臭くないな。物が腐った臭いとでも言えば分かりやすいだろうか。それがない……なくはないな。でも、随分と抑えられている。

 

 「うむ。その通りだ。王都だからってのは理由にはならないが、他の町と比べると水が豊富にある。ほら水路がそこらにあるだろ。それだけではないが、いつも新鮮な水が流れてるから臭いが残らない様になってるんだ」

 

 「へー、結構考えられてるんだな。確かに他の町は臭かったし汚かったな」

 

 汚いと言っても食べ残しや排泄物が路上にあるって意味じゃない。食べ残しがないわけじゃないけど、なんとなく臭かった。腐りかけの様な臭いがしてたな。

 

 「王都が大きいのも綺麗なのも理由があった訳なんですね」

 

 「そんな事よりも早く組合と宿に行こうぜ」

 

 そうだ。俺たちは遊びに王都まで来てる訳じゃないんだ。精霊と契約しに来てるんだ。

 

 ……まあ、美味い物があれば良いんだけどな。

 

 「(はあ。観光に来てるのではない事なに。そんな浮かれた気分で大丈夫かしら)」

 

 「(そうは言っても期待しますのよね?)」

 

 「(……まあ、そりゃあね)」


蛇足だったかな。

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