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工作のお時間です?

 「もっと! もっと右だ!! あー、それだと回り込めないぞ! もっと早くだ!」

 

 「くぁー、外した! も、もっと近づいて下さい! 今度こそ当てますから」

 

 「なに!? 負けてられんな! もっと速くだ!」

 

 「……へいへい。どうして俺だけが漕いでるんだよぉ」

 

 「……おい、俺も一緒って事を忘れるな」

 

 「ああ、悪い」

 

 「って、どうして俺等だけが漕いでるんだよ!? 俺だって、狩りたいぞ」

 

 

 

 なんかそろそろ? 新しい何かあればなぁ。

 

 「(……何よ、そのふんわりとした言い方は)」

 

 「(いやね、食べ物は不味い訳じゃないし、宿も良いよ。でもさ、折角森を出たんだから、何か刺激的な事を期待しちゃうじゃんか。それにあんなに練習したのに、俺達だけ練習だけで終わっちゃってさ。だから、何かこうないかなと)」

 

 「(だからって、ねえ。それで? 何かって何よ)」

 

 「(そりゃ、何かだよ。こうさ、何か変化が欲しいんだよね)」

 

 「(変化って言うけど、船を漕ぐ練習だって変化と言えば変化じゃないのよ)」

 

 「(いや、そう言われればそうだよ。だけどさ、練習だけじゃん。もっと刺激が欲しいんだよ)」

 

 「(刺激ねえ)」

 

 うーん、何て言ったら良いのかな。次の町への試練の為に船を漕ぐ練習はしたよ。だけど、それだけ。その先の大物を釣る際にはもしかしたら、あったかもしれないけど結局俺達は漕いだだけ。話し合った結果、ナックと二人で漕いだ方が早いんじゃ? ってなった訳で。オールで漕ぎつつ、帆に向かって思いっ切り煽いだ。+何の為に練習したのか分からないよ。でも、これの方が早いって気付いたから、仕方ないな。オールは、まあ方向を決めるためだけに使った。

 

 まあ、そんな訳だから試練は何とか乗り越えた。一日じゃなく、何日も掛かったけどね。直ぐに次の町に行こうと思ったんだけど、デル達は泳ぎの練習が残ってTたからな。泳げるようにはなったけど、まだ安心して良いって程じゃない。だから、海関連で何かないかと思ったんだけど。そう上手いはないか。

 

 「(でしたら、海か川で何かをしたら良いんじゃありませんか?)」

 

 「(何かをする?)」

 

 「(ええ。刺激的な事を探すのではなく、アロが行えば良いのではないですか?)」

 

 「(俺が、か。とは言っても何をすれば良いかな。んー。……そう言うって事はテラには何か考えがあるんだよね?)」

 

 「(そうですわね。例えば……家を作るとかかしら)」

 

 「ぶっっ。……あ、すまん。何でもないから」

 

 食べてた物が思わず、出そうになったじゃないか。……少し出たけどさ。危ない危ない。突然、せき込むから三人とも驚いてるじゃないか。因みに、今は黙ってるけど食事時は話してる事が多い。

 

 「(吹いちゃったじゃないか! 急に何を言い出すんだよ)」

 

 「(だって)」

 

 「(だってじゃないだろ!? 何の脈絡がないじゃないかよ!? 何考えてるんだよ)」

 

 「(キューカさんは記憶の中の物を再現をしてますでしょ? わたくしが再現してはいけないなんて理由はないはずですわよね?)」

 

 「(それはそうだけどさ。でも、家はないんじゃないか? 泊まってる宿だってあるんだし、何よりずっと住むんじゃないぞ)」

 

 「(そう言われればそうですわね。ただ、私は地精霊ですから、建築とかに興味があるのですよ)」

 

 「(そう言われてもなあ)」

 

 もぐもぐ。んぐんぐ。建築って言われてもなあ。建築、ねえ。そう言えば、何も作ってなかったか。料理はあったけどな。んー、他にやる事がなかったら良いのかもな。でも、練習の合間に出来るものなのか?

 

 「なあ、建築って興味あるか?」

 

 「「「……」」」

 

 「……いきなりだな。今まで話もしないで黙ってたのは、精霊長様たちと話してからか」

 

 「ま、まあな。で、どうなんだ?」

 

 三人とも食べてる手が止まって、目が点になってる。そりゃそうだよな。これからの練習の事とか森での狩りの事を話してたんだからな。

 

 「私はもちろんあるぞ。国柄や種族もあるのだろうがな。もちろん建築だけではなく、武器防具もだぞ」

 

 一人だけ、顔つきが変わったよ。まあ、言うまでもないけどデルだ。国柄とか種族って言うけど、そういうものなのか。俺はプロさんしか知らないから何とも言えないけど。

 

 「デルって興味あったんだ」

 

 「まあ、それなりにだな。国民、アッチャ族全てがそうだとは言わないが、建築や鍛冶の職に就いている者は多いぞ。何よりおじい様がそうだ。ずっと王でいるつもりもなかったから、譲位したんだぞ」

 

 「へー、そんな裏話があったんだ」

 

 そう言えば、鍛冶が好きだと言ってた気がするな。……気がするだけで、言ってないかもだけど。まあ、俺達もアッチャ族の知り合いは少ないからな。プロさんだけで判断するのもアレだしな。

 

 「(記憶の中でもアッチャ族は鍛冶とか建築が優れてるって話だったわよ。まあ、アッチャ族はいないから想像上の話なんだけどね)」

 

 「(ああ、確かにそんな事を言ってた様な気がしないでもないな)」

 

 とは言うものの記憶の中と同じな訳がないよな。しかも想像上の話だしな。

 

 「で、興味あったらどうなんだ?」

 

 「いやー、テラがさ何か作りたいって言うんだよね。それで何か良い考えはないかなってさ」

 

 「それはまた唐突だな。ふむ、なるほどな。それで聞いた訳か。とは言えだ、急に言われても何も思いつかんぞ」

 

 そりゃそうだ。幾ら興味があるからって常に何かを作りたいって訳じゃないよな。

 

 「そりゃそうか。変な事聞いて悪かったな」

 

 「まあ、待て。直ぐには思い付かないとは言ったが、やらないとは言ってないぞ。むしろ、やってみたい程だ」

 

 「じゃあ、何か考えがあるんですか?」

 

 「ふむ。武具は論外として、無難なところだと家か?」

 

 「家? そんなの作ってどうするんだよ。俺等が住むのか?」

 

 「そう言われるとそうだが、では何を作るつもりなんだ?」

 

 「俺は分からんぞ。いきなり言われた事だし、何より何かを作りたいって欲求はないからな。言い出したアロに聞けよ」

 

 「ふむ」

 

 言ったは良いけど、俺も何かを作りたいって欲求はないんだよな。住めれば良いし、外観や内装に拘りがある訳でもないし。とは言うものの言った手前何か提案しないとな。

 

 「ふむって。何も考えていなかったのか?」

 

 「まあ、な。俺が考えた事じゃないしな。言わされたってのが本当だな。そう言っても先に進まないから……」

 

 「(まるで、わたくしが強制したみたいではないですか)」

 

 「港とか?」

 

 「いやいや、あるじゃないですか」

 

 「(ちょっと、わたくしの事は無視ですか!?)」

 

 「いやさ、作るとは言ったけど、ただ作るだけだと駄目かなと。使われない物を作っても無駄になるだけだし、何より邪魔になるだろう」

 

 「(そうだよ。俺達が住まない家なんて作っても仕方ないでしょ)」

 

 「(まあ、確かに一理あるわね)」

 

 よし、何とか説得はできたな。

 

 「じゃあ何を作るんだ?」

 

 「……なあ、何か作る事が決定みたいだけど、作らないと駄目なのか? と言うか、俺等が使う訳でもないのに、作る必要がないだろうが」

 

 「そうだよな。無駄な物を作るのは駄目だな」

 

 「……そう、だよな」

 

 いやさ、俺だって何かを作りたかった訳じゃない。だけど、テラに言われたから。

 

 「それよりも俺は気になることがあるんだが。お前、また精霊長様と契約したのか?」

 

 「……あ」

 

 「「あ!」」

 

 聞いてる風だが、確信してるんだろ。声音もそうだが、目が雄弁に語ってる。それに合わせてルーク達もジト目で見てくる。誤魔化す事は……できないな。テラって言っちゃったし。

 

 「何だ、その格好は?」

 

 「……降参って事」

 

 そこからは飯もそこそこに、色々と聞きだされた。どうしてお前なんだとか、どうしてまた何だとか、そりゃもう色々だ。だから言ってやったよ、俺が望んだんじゃない。選ばれただけだってな。まあ、猛反発されたよね。普通は、望んでも選ばれないのに、望んでもないのに選ばれるとは!ってね。

 

 そんなに強く言わなくても良いじゃないか。こっちは選ばれる側なんだから、断れるなら断ってるよ。

 

 「(断るつもりでしたの!?)」

 

 「(……いや、断らないけど)

 

 「(そうでしょうね。強さはあって困る物じゃないしね。何かを成すのに、力不足で後悔するよりは良いわよね)」

 

 「(今でも充分過ぎると思うけどね)」

 

 「(後々何があるか分からないでしょ)」

 

 うん。まあ、そんなもんか。まだ困った事はないけど。これから、か。まだ二か国だからな。もしかしたらそんな場面に直面するのかもな。俺だって後悔はしたくないし。まあ、貰える物は貰っておくか。

 

 「おい、どうしたら精霊長様と契約できるんだ?」

 

 「知るかよ!?」

 

 いや、本当に知らないって。


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