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迷ってます

金銭情報を後書きに追加(2019/1/13)

 「それでどうする?」

 

 「どうするも何も、なあ」

 

 「そうですね」

 

 「一言で言ってしまえば、高いな」

 

 「だよなあ」

 

 いつもなら森へ狩りに出掛けている時間だ。だけど、今は港の一軒の食堂にいる。さっき知った事実に驚きすぎて、狩りに行く気力が出ないからだ。

 

 「それでも払えない事もないんだよな。二人分だけど」

 

 「二人分だろうと払えても余りに高いぞ」

 

 「そうですよ。大金貨二枚って言ったら、駆け出しの冒険者が出せる額じゃないですよ、普通は。一生とまでは言いませんけど、結構遊べる額ですよ」

 

 「そんなもんか?」

 

 「そうですよ。俺達の位階ってⅡに上がりましたよね。この位階だと大金貨なんて持ってるヤツはいないはずですよ」

 

 「俺等はあるけどな」

 

 「だから、それが可笑しいんですよ。他の冒険者がどれ位稼いでるのかははっきりしませんけど、装備品や泊まってる宿や噂で大体分かりますよ。それよりも、どうしてそんなに稼いでるんですか?」

 

 「どうしてって言われても普通に依頼をしてただけだよな?」

 

 「ああ。普通にうっかり余計な獲物も狩ってな」

 

 「そうそう。最初は依頼だけだったんだよ。でも、飯とか宿が満足できなくてどうしたら良いかって考えて、うっかり狩る事にしたんだよ」

 

 「おいおい。うっかりって組合からは何も言われなかったのか?」

 

 「そりゃ言われたよ。毎回毎回依頼より上の獲物を狩ってくるんだからな。肉もそうだけど素材も足りないから、買い取る事は買い取るけど位階には影響しないってな。後は、こんな事は他でやらない様にって言われたな」

 

 「それはそうだろ。そもそもそれがまかり通るなら位階なんてものは必要ないからな。それを許してたらなんの為の位階なんだって事になるだろう。組合としても私達冒険者を管理するのに位階は必要だから、それを否定する様な事はないだろ」

 

 「まあ、そうなんだろうけどさ。やっちまったもんは今更だよ」

 

 そう今更だ。あれをやってたのは旅に出て直ぐの頃だ。それに今はやっていない。……やってないよ? ほ、本当だよ? たまに、たま~に近寄ってきた獲物を狩る事はあるけど、わざとじゃないからな。

 

 「(誰に説明してるんだか。それにわざとじゃないけど、嬉々として狩ってたじゃないの)」

 

 キューカが何か言ってるけど、これは無視だ。決して、他の獲物が来ないか期待して待ってたとかはない。

 

 「まあ、その話は良いとして、今後は……」

 

 「お客さん、座るだけじゃなくて何か頼んでくれませんかね?」

 

 「??」

 

 声のした方を見ると、そこには顔は笑っているけど目が笑ってない女性が立っていた。多分、女性だと思う。種族は海人族の中の魚人族だとは思うけど、祖がなにかまでは分からない。女性だと判断したのは服だ。種族が分からないのに、性別まで分かるわけがない。そもそも、人族と森人族くらいしか分からない。デルがいるからアッチャ族も分かると思うだろうけど、正直な話分からない。女性でも髭を生やしてた人もいたからな。だから、判断は服でする事にしてる。

 まあ、それで今まで間違った事はないからこれからもそれでいくつもりだ。っと、そんな事よりも

 

 「なあ、何て言ったんだ?」

 

 「食堂に来て何も注文しないのはどうなのかって。怒っているみたいだから、何でも良いな」

 

 「ああ」

 

 

 「それで何を頼んだんだ」

 

 「さあ。急いでたから任せた」

 

 「なんだそれ」

 

 「仕方ないだろ。どうやら怒らせたみたいだから、悩む暇なんてなかったんだ。そんな事よりも続きだが」

 

 「続きって言われてもなあ」

 

 「おう。どうするのかは決まってる様なものだろ」

 

 「そうですよ。二人分しか払えないし高いしじゃあ選択のしようがありませんよ」

 

 「うーむ。それではこのままなのか?」

 

 払えない事もないけど、二人分だけ。だけど、払わないといつまでこの町にいるか分からない。だけど、急いでるわけではない。

 

 ん~、もやもやするなあ。

 

 「早く済ませるなら、依頼を数多く請けて代行屋。遅くても良いなら、このまま。もう一度聞くけど、デルは早く次の町に行きたいのか?」

 

 「もう一度同じ事を言うが、この町にいたくない訳でもないし、早く次の町に行きたい訳でもない。だが、行けるなら行きたいではないか。何かないのか?」

 

 「それは結局次に行きたいって事で良いんだよな?」

 

 「そう……とも言えるな」

 

 「じゃあ話が早いじゃないか。さっきも言ったけど、依頼を数多く請けて代行屋に頼む事で良いんじゃないか?」

 

 「それだと何だかこう、納得できないと言うかなんと言うか」

 

 「何だかはっきりしないな」

 

 「いや、試練を自分達でやり遂げられないのが、な」

 

 「あー、それはあるな」

 

 「そうですね。こう何とも言えない気分になりますね。出来るなら自分達でやりたいですよね」

 

 「とは言ってもなあ」

 

 自分達でって言ってもなあ。そりゃ俺だってやれるもんならやりたいよ。でも失敗したばかりだしな。もう一度やったからといって成功するとは限らない。いや、絶対に失敗するだろう。大物が釣れる未来が見えない。

 

 「俺だって自分達でやれたらやりたいよ。でも、どうしろってんだ?」

 

 「もう一度とか?」

 

 「成功するって言い切れるか?」

 

 「うぐっ」

 

 「だろう? 次やれば成功すれば良いぞ? でも、成功するのか? 何回もやればいつかは成功するだろ。でも、それっていつだ? それまで金を無駄に使う事になるんだぞ?」

 

 「うーむ。……アロも中々考えているじゃないか」

 

 「おい、どういう意味だよ。何かないかって言ったのは誰だよ。それに、これ位は思い付くだろ」

 

 「では……」

 

 「は~い、おまちどう~」

 

 ある意味で結論が出ている話で悩んでいると、卓に食事が次々に置かれていく。本当は結論が出ているのに認められないだけなんだけどね。

 

 皿がどんどんと置かれていく。頼んでもないものが……いや、頼んだことにはなってるのか。中には見た事もない物がある。この町に来てから間もない訳でもないのに、知らない物がまだあるんだな。

 

 皿が置かれていく間、何もする事がないから黙っていると、ふいに話し掛けられた。

 

 「さっきから難しい顔して何を話してるんだい?」

 

 声から判断するとさっきみたいに怒ってる訳ではなさそうだ。それに、声を掛けてきたって事はこれで置き終わったのかな。相変わらず何を言ってるのかは分からないけどな。

 

 「ああ、それは……」

 

 

 「なるほどね。それで悩んでたのかい。だったら、漁師を雇うってのはどうなんだい?」

 

 「漁師を雇う? その様な事が出来るのか? 後、それは試練であっても良いものなのか?」

 

 「ああ、そういう事かい。その説明も聞いてないって事か。いいかい、冒険者に雇われる漁師ってのは当たり前なんだよ。それを専門にしてる漁師だっているくらいだ。それに雇われて釣れても釣れなくても金になるんだから、漁師にとっては良い商売さ」

 

 言葉が分からないから会話はデル任せにして、俺達は食事をしている。種類としては陸と海両方ある。豚肉は分かるんだけど、海のは分からないな。コリコリとした食感で面白いんだけどな。多分、貝だとは思うんだけど分からないな。味付けは、まあそれなり?

 

 いや、それなりって言うと美味くないって思うかもしれないけど、そうでもないんだよ。だけど、特別美味しいかと言われたら答えにくい。だって、味付けが塩っぽいんだよ。これまでも魚と貝を食べてきたけど、どれも同じ様な味付けだったんだよ。この豚肉みたいに色んな味付けはないものかね。食感は面白いんだよ、食感は。

 

 「なるほど、それは聞いてなかったな。それで試練についてなんだが」

 

 「ああ、それも問題はないよ。あまりおおっぴらにしちゃいないが、役所は認めてるよ。と言うか、役所としては冒険者から金を巻き上げれば良いからね」

 

 「な、なるほど。有難い助かった」

 

 「なーに、良いって事よ。それにしても説明を詳しく聞かないなんて、冒険者として失格なんじゃないかい?」

 

 「うぐっ。それを言われると辛いな」

 

 何だかデルの顔が困った様な感じになってるな。何を話してるんだ? 所々、単語は聞き取れるけど、内容までは全然だ。まあ、単語から予想すると試練の事だとは思うんだけど。それにしたって、何故に困った顔になるんだか。

 

 「そんなあんた達にあたしから良い事を教えようか」

 

 「い、良い事?」

 

 「そ。この町では漁師を雇うだけにしておきな」

 

 「雇うだけ? 買っては駄目なのか?」

 

 「そ。雇うだけ。でないと次で苦労する事になるよ。あたしが言えるのはここまでだね」

 

 「なにやら分からないが、その忠告有難く聞いておこう」

 

 「じゃ、頑張んな」

 

 話が終わったのか女性は他の卓へ行ってしまった。

 

 「で、何の話だったんだ?」

 

 「ああ、食べながら話すとするか。せっかく温かいのに冷めてしまっては台無しだからな」

 

 と言うなり凄い勢いで食べ始めた。まあ、俺達は先に食べてたから追いつこうとしてるのかもしれないけど。

 

 

 「そんな方法もあったのか」

 

 「らしいぞ。それとこの町では雇うだけにしておけと忠告もあったな」

 

 「雇うだけ? 何でだ?」

 

 「それは答えなかったな。次で苦労するとだけ」

 

 「ふーん、次でね。まあ、そういう事なら今回は雇うだけにするか。と言っても俺達は最初から自分達でやり遂げたいって思ってたからな」

 

 「そうですね。そんな方法があると分かれば、前みたいな事にはならなそうですよね」

 

 「おう、そうだな。それとデル、こんな方法があるって何で教えなかったんだよ。俺等はまだ言葉を読めないんだぞ」

 

 「……い、いやー。驚きすぎてて何も頭に入ってこなかったんだよ。あはははは」

 

 「あはは、じゃねえよ。しっかりしてくれよ。この国ではデル頼みなんだからな」

 

 「そ、それを言うならお前達だって言葉を練習してるはずだろ? 何故気付かなかったんだ?」

 

 「「「……い、いやー」」」

 

 「おい、お前()

 

 サッと顔を逸らす三人。ここにきて言葉をデル頼みにしてたツケがきたか。まあ、俺達だって練習してない訳じゃないんだ。ただ、そう。ただ、デルが話せるからついつい任せちゃうんだよな。

 

 「(それで今回の事に繋がったわけだけどもね)」

 

 「(は、はい)」


大金貨は日本円換算で約1000万円と想定しています

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