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何にでも抜け道はある

ちょっと長くなっちゃいました。

 「そっちはどんなもんだ?」

 

 「分かりきった事を聞くなよ」

 

 「だよな」

 

 さきに言うと釣りをやっている。そう、あの釣りだ。港の邪魔にならない場所から糸を垂らしてどれだけ経っただろうか。朝早くからやって、もう直ぐ陽は真上にくる頃だ。という事は結構やってるな。それでいて釣れていないのか。

 

 

 「そろそろ終わりにして狩りに行くか」

 

 「そうですね」

 

 今日も俺は釣れなかった。ナックは一匹釣ってるけど、そんなもんだ。ルークの声にどことなく元気がないと感じるのは、気のせいじゃないはずだ。

 

 

 潜り漁と泳ぎの練習をしてから、何日経っただろうか。今では二人もそこそこ泳げる様になった。これもフウィさん達が練習に付き合ってくれたお陰だろう。とは言ってもあの人達って魚人族だから俺達と泳ぎ方が違うんだよな。

 

 ……いや、違わないか。泳ぎが速いからそう見えるだけかな。身体の構造は同じなはずだから、種族の違いなのかな。いや、厳密には構造は違うと思う。やっぱり、種族の違いなのかな。

 

 まあ、それは良いとしてフウィさん達の指導のお陰もあって、二人は上達した。上達したけど、安心して見ていられるって程ではない。泳げるけどもまだ泳げてない? みたいな。まあ、一言で言うと溺れない程度にはなったという感じだな。

 

 それで、二人も一応泳げる様になったから試練を終わらる為に海に出たんだ。もちろん船でだ。買った訳じゃなくて借りたんだ。誰からって疑問はあるだろうけど、変な話……でもないか、試練の為の商売があったんだ。そこでは俺達みたいな冒険者相手に、釣竿から船まで幅広い品揃えがあった。買うも良し借りるも良し。

 

 俺達は一回で終わらせようと思ってたから、四人で乗っても狭くならない大きさで、且つ獲物を乗せるだけの広さがある。つまりはそれなりに大きいって事。船には帆があったけど、俺達は風を読む事なんて出来ないからオールで漕いだよ。それはもう漕ぎに漕いだよ。身体強化のお陰で疲れはしなかったな。

 

 で、目的地に着いたわけだよ。まあ、目的地とは言っても陸が辛うじて見える位で、ルーク達が駄目になった依頼の時に来た所だ。と思う。何の目印がないから多分だ。

 

 その時の成果は……言わなくても分かるよな。釣れなかった。それも一匹も。大物だけを狙ったからじゃないんだ。余りにも釣れないから途中から狙いを変えてみたんだよ。それでも駄目だった。

 

 

 

 「はあ、次の町へはいつ行ける様になるんだ?」

 

 「この調子だとまだまだ掛かりそうだな」

 

 「そのまだまだってのが知りたいんだけど」

 

 「俺に分かるかよ。ただ……」

 

 「ただ?」

 

 「ただ、何か考えないとずっとこの町にいる事になるぞ」

 

 「だよなあ。だけど何かって言ってもなあ。そうそう良い考えなんて出てこないぞ」

 

 「何かないんですか?」

 

 「あのなあ、俺を何だと思ってるんだよ。そんなポンポンと良い考えが出てくると思うなよな」

 

 「俺もそうは思うんだけどな。でも、アロならって、な」

 

 「『な』じゃねえよ。そんな事を期待しないで自分で考えろよな」

 

 「そうは言いますけど……」

 

 「おい、お前達! 今は狩りの最中だって事忘れるなよ!」

 

 釣りから一言も話さなかったデルが俺達に大声で注意してきた。まあ、その気持ちは分かる。なんて言ったって、狩っているからな。狩りの合間じゃなくって、まさに狩っている最中だ。

 

 「そんな事は言うけど、このままだといつ次に行けるか分からないじゃないか」

 

 「その話をしているのではない! 目の前の獲物に集中しろと言っているんだ!」

 

 「そんな事は言うけど、このままだといつ次に行けるか分からないじゃないか」

 

 「同じ事を言うな!」

 

 「まあ、良いじゃないか。森の奥に行ってる訳でもないし、慣れた獲物じゃないか」

 

 「それでもだ! いや、だからこそだ! それに、慣れたと言っても一度にこんなにも相手にして暢気に話してる場合じゃないだろ!」

 

 「まあ、良いじゃないか。森の奥に行ってる訳でもないし、慣れた獲物じゃないか」

 

 「だから、同じ。事を、言うな!! はあはあ」

 

 ったく、少しからかったらこれだよ。少し位良いじゃないか。試練がいつ終わるかも分からないんだから。

 

 「(それでどうしてデルをからかう事になるのよ。デルだって同じ境遇でしょうが)」

 

 「(それはそうなんだけどね。何となく)」

 

 「(何となくって。ルークにも同じ様な事を言ってた気がするわ。まったくもう)」

 

 「そんな事言ってないで、早く血抜きして運びましょうよ」

 

 「だな。数があるんだから、手伝えよ。血の臭いで他のが寄ってくるぞ」

 

 「「お、おう」」

 

 ったく、何で俺が怒られる様な形になってるんだ!? 一緒になって話してたじゃないか。まあ、良いか。それよりも早く血抜きしないとな。

 

 

 「それで、何か良い案でもあるのか?」

 

 「ん? 案って?」

 

 「だから、先ほどの話だ」

 

 「なんだよ、デルも気になってるんじゃないかよ」

 

 「それはそうだろ。この町にいたくない訳でもないし、早く次の町に行きたい訳でもない。だが、行けるなら行きたいではないか。それに、終わりが見えないのは中々に辛いものがあるぞ」

 

 獲物の血抜きをしていると一段落して暇になったからかデルからさっきの話の続きを聞かれた。因みにここの町では血抜きをする決まりになっている。何でも血を滴らせて運ぶと他の動物達が寄ってくるからだそうだ。そうなると俺達冒険者は獲物が来るから良いんだけど、冒険者以外つまりは戦う力がない人の為だ。

 この町を訪れる旅人や商人、後はこの町に住んでいる人も対象だ。この国、というか今まで血抜きをして来いなんて言われなかったのにな。それにこの国は戦いを好む傾向があるから、寧ろつれて来いって感じだと思ったのにな。

 

 「さっきも言ったけど、何も浮かんでこないぞ。デルはどうなんだ?」

 

 「私は今まで泳げもしなかったんだぞ。無理って話だろ」

 

 「何を偉そうに言ってんだよ。考えるのは俺の仕事じゃないんだぞ」

 

 「偉そうにはしていないぞ。ただ、今まで泳げもしなかったんだぞ。無理って話だ」

 

 「同じ事を言うなよ! ったく、さっきの仕返しか?」

 

 「そうではないが。そうだな」

 

 「いや、それどっちだよ。まあ、それはどっちでも良いけど、何も浮かんでこないぞ」

 

 「ふむ。そうなると後九十日程掛かるのか」

 

 「「「……」」」

 

 デルが一言呟いた。それを聞いた俺達四人は血抜きをしている手が止まった。言った本人も何故か止まってる。やべ、改めて口にすると何故だか焦ってくるな。

 

 「……分かってはいたが、口に出すと結構な日数なのだな」

 

 「そ、そうですね。何も考えてませんでしたけど、これは何か考えないと駄目そうですね」

 

 「そ、そうだな。ただ、金のかかる事は避けたいな。大物を釣るってんで、結構な金がなくなったからな」

 

 「まあ、今までそんなに金を使ってなかったから少し位は良いんじゃないか? 釣れないって事が分かっただけでも良しとしようじゃないか。それに、金って結構かさ張るからな。どこかに保管出来れば良いんだけど、中々そんな所は思い付かないからな」

 

 「しかし、馬車の購入を考えているのだろ? だったら、少しでも無駄には出来ないではないか」

 

 「そうなんだけどさ。あの時は一回で終わらせようって皆で相談して決めたじゃんか。ま、失敗に終わった訳だけどな。だから、今後はあんな船は借りないって事で良いだろ」

 

 「それもそうか。悪い方に考えるのではなく、失敗をどう次に活かすかだな」

 

 「おお、デルが王族らしい事を言った」

 

 「らしいって何だ。らしいって」

 

 「試練の事は何か良い案がないか各自が考えるとして、まずはこいつ等を運ぼうか。少しでも貯めないとな」

 

 「そうですね」

 

 話している間に血抜きは終わっていて、後は運ぶだけになっていた。なっていたって変な言い方だけども、事実だ。簡単に言ってしまえば、獲物を吊るして血を抜くだけ。

 それよりも重要な事は血の臭いに誘われて寄ってくる他の生き物の警戒だ。この場合の生き物は動物、魔物以外に冒険者や盗賊も含まれる。動物なら良いんだけど、冒険者や盗賊は厄介なんだよな。獲物を横取りしようとしてくるヤツもいたし、血溜まりを利用して獲物を待つヤツもいた。もしそれで来たとしても俺達の獲物なのに。随分とせこい真似をするもんだ。ま、そんなヤツ等は追い払うけどな。

 

 

 「あ、そうそう。ちょっと前に思い付いた事なんだけどさ……」

 

 潜り漁の時に楽を出来ないかなって思い付いた事を話してみた。キューカ達からは反対されたけど、一応ね。

 

 

 「うん。まあ、何と言うか、そんな事を考え付くのはやはりアロだな。私では考えもつかん」

 

 表情は見えないけど、絶対に褒めてないな。

 

 「それでどうしてやらなかったんだ?」

 

 「ああ、それはな……」

 

 

 「それはやらなくて正解でしたね。もしやってたら誰に目を付けられていたか」

 

 「だな。アロだから思い付いたんだろうな」

 

 「王族の立場から言うとやらないで正解だな。やったらアロは良いだろうが、そこに暮らす者達にどんな影響が出るか分からないからな」

 

 「まあな、それも言われた。でも、誰もやってないなんてな。不思議だよな」

 

 「いや、精霊長様と契約してるからこその発想だろうよ」

 

 「そんなもんか」

 

 「そんなもんだ」

 

 精霊長と契約してるから納得ってのも段々慣れてきたな。まあ、実際の所は分からないけど、それもあるのかもな。

 

 

 

 「今日は何とか釣れたな」

 

 「一匹だけだけどな」

 

 「俺は二匹です」

 

 「私はなしだ」

 

 今日も今日とて朝から釣りだ。一日一匹って実際、凄い時間が掛かるな。

 

 「あれ、あの人達って俺達よりも後に来た人達ですよね? 大物を担いでるって事は試練は終わったって事ですか」

 

 「んー、何でだ? そんなに簡単なのか? それとも俺達が下手なのか」

 

 「良いじゃないか。彼等が上手かったって事だろ。それよりも早く出張所に行こう」

 

 

 

 「あなた達、随分と苦労してる様ですけど隣の商会へは行きましたか?」

 

 「ええ、初日に船を借りに行きました」

 

 「それではその一つ隣の商会にも行ってみた下さい」

 

 「は、はあ」

 

 

 「何だって?」

 

 「うむ。隣の商会へ行けと」

 

 出張所で魚を確認してもらっていたら、そこにいる役人から何か言われたらしい。デルの顔が少し変だから気になった。

 

 「それがここか。で、何の商会なんだ?」

 

 「代行屋と書いてある」

 

 「……おい、それって……」

 

 「し、仕方ないだろ!? 出張所の近くにあるから余計に怪しいと思って黙ってたんだよ!」

 

 「もしかしてさっきの人達は……」

 

 「……じゃないか?」

 

 まさか、こんな商会が存在してたとは。試練は自分でしてこそだと思ってたのに、これは流石に思い付かないわ。


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