何事にも最初はある 弐
えー、お久しぶりの投稿です。。。
「ぷはっ。はあはあは」
あー、しんどい。潜るのってこんなに難しかったのか。森でも泳いではいたけど、精々が肩までだから、そこまで深くはない。潜ることはあったけども、潜って泳ぐことなんて滅多になかった。まして、漁なんて。
浮上して小船に獲ったばかりの貝や甲殻類を放り込んでいく。放り込んでいくとは言ったけど、一度に獲れる量なんて高が知れてる。だから、何度でも潜るんだ。それと、小船とは言ったけど……。
何やってるかって? 見て分かるだろ。分からない? ったく、依頼の漁だよ。それも潜り漁だ。これが難しいのなんって。漁が難しいのは当然だろ。だけど、潜るのは難しいとは思ってなかったんだ。森にいた頃だって……。
え? その説明は聞いた? じゃあ、一体何が聞きたいんだよ。何をしてるのかって聞いたから説明しただけじゃないか。それを『それは聞いた』って言われてもな。
「(ねえ、さっきから何独り言言ってるのよ。誰も何も聞いてないじゃないの)」
と、ここで久しぶりのキューカのため息交じりの小言。久しぶりに話し掛けてきたと思ったら、小言かよ。呆れてる顔が思い浮かぶよ。
「(ちょっと、何か失礼な事考えなかった?)
「(べ、べつにぃ)」
「(それで?)」
「(それでって?)」
「(だから、なんで独り言なんて言ってたのってことよ)」
「(ああ、特に意味なんてないよ。ただ単に現実を確認しただけ)」
「(確認って。何でそんな事するのよ。何度確認したって潜り漁をしてるのは変わらないわよ)」
「(良いじゃないか。減るもんじゃないんだし。こうやって潜り漁もやってるんだから、細かい事は)」
考え事とキューカと話している間も漁は続けている。難しいとは言ってもこれ位はする余裕はある。と言うよりも普段の狩りは、もっと色んな事を並行してるからな。ナック達とも会話しつつ精霊術を使って狩りだ。時にはキューカ達とも話す事もある。だから、同時並行は何でもない。
……とは言っても、何も俺達が特別な訳じゃない。と思う。誰でも考えながら行動するだろう。歩きながら景色を見たら何か思い浮かぶだろうし、料理してる時だって次に何をすれば良いか考えるだろ? それと同じだ。ただそれにキューカ達、精霊が加わるだけだ。それに精霊術は最悪、キューカ達に任せる事だって出来る。だから、契約していない人と変わらないと思う。
「(なあ、精霊術で何とかならないの?)」
「(何度同じ事聞くのよ。水の中だと私もテラも無理よ。出来ない事はないけど、本来の力は出せないわよ。身体強化なら出来るけどね)」
「(まあ、それが出来るから楽ではあるんだけどね。だけど、もっと楽をしたいって思うのは怠けなのかな)」
「(怠け、か。楽をしたいってのは、今以上の事を望んでいる訳だし。それって技術の向上なしには考えられない事だから、怠けとは違うんじゃない?)」
「(ふーん、そうか。そう言えばさ、テラの精霊力で楽出来ないかな?)」
「(だから、水の中だと難しいって言ったでしょ)」
「(違う違う。水の中じゃなくて、陸に上がってだよ)」
「(陸に上がって? それでどうするのよ)」
「(何て言ったら良いかな。底の岩を丸く盛り上げるんだよ。もちろん、中はくり貫いた状態だぞ。そうしないと魚が獲れないからな)」
ここ何日か潜っていて、どうにか楽が出来ないか考えてたんだ。楽って言うのは具体的に言うと潜らないで良い方法の事だ。だってルーク達は相変わらず泳げてない。練習はしてるけど泳げる様子がない。練習してるのに泳げないから、フウィさん達が見かねて練習に付き合ってくれている。
もちろん、それは善意で付き合ってくれてる訳じゃない。組合に依頼こそ出してないけど、報酬は払っている。俺達が請けている依頼との交換って訳じゃないけどね。それでも払っている。しかも、ルーク達は泳げないから潜り漁は出来ない。だから、俺とナックの二人で依頼をする事になってる。
その間は近くの森で狩りでもと思ったんだけど、一緒にいる方が泳ぎを教えやすいって理由で近くにいる。まあ、海と森の依頼は交互に請ける様にしてるから、森での依頼の時はルーク達に頑張ってもらっている。その方が気分的にもお互いに楽だしね。
「(で、どう思う?)」
「(んー、テラはどう思う?)」
「(そうですね。出来るか出来ないかで言えば出来るでしょう)」
「(だったら……)」
「(やるとなると、周りへの影響も考えないといけませんわね。盛り上げて終わりではなく、戻すとは思いますけど。それでもどんな影響が出るのか分かりませんわね)」
「(なるほどね。それは確かに考えてなかったな)」
これをやれば楽に漁が出来ると思ったんだけどなあ。確かに何もないところに樹を生やすのとは違うよな。流れが変わるかもしれないし、何より岩がずっと下にあるとも限らないしな。その場合は、周りの岩から集めれば良いけど。そこまでする必要はないな。
「(分かった。これはやらないでおこう。思い付きでやらないで良かった。やっぱり相談するもんだな)」
「(分かってくれて嬉しいわ。それにやらないで正解かもね)」
「(え? どうして?)」
「(だって、いきなりそんな事をやったら周りが驚くでしょう。デル達は耐性があるから大丈夫でしょうけど、他はねえ。周りへの影響も考えないと、って言いましたよね)」
「(……なるほど。それもそうだ)」
危ないところだったな。危うくナック達からも飽きられるところだった。でも、俺がやろうとしてたのはそんな驚く様な規模じゃないんだけどな。それに、キューカ達の力を使ったのって数える程しかないよな。
まあ、その数える程の時は驚かれたか。それでもヴァーテルに来てからは何もしてないと思うんだけどな。
「(何言ってるのよ。闘技場で大きな樹を生やしたでしょうが)」
「(……あー、そんな事もあったか)」
「(ちょっと、そんなに前の事でもないでしょう。忘れないでよ。衰えるのは早いわよ)」
「(いや、完全に忘れたわけじゃないよ。ただ、そんなに驚かれたかなって思ってさ)」
「(……いや、驚かれたでしょ)」
そう、だったっけ? 驚かれたか? うーん、戦いの後に何も言われなかったからな。実感ないんだよな。それよりも森を出てからの時の方が驚かれたと思うんだけどな。
「(まあ、やらなかったから良いとして。随分と獲ったから一度、戻ろうか)」
黙々とやってたら、樽が一杯になってた。ああ、さっきは小船と言ったけど実際は樽だ。大きさは一抱え程で深さはない。それが一人一人にある。但し、俺とナックは二人で一つだ。
「アロ、随分と熱心だったな」
「そうか?」
「俺が話し掛けても反応しなかったから」
「え、本当に? それはすまんな。精霊と話してたから。それで何の話だ?」
「いや、特にこれといった事はないんだ。そろそろ休憩しようと言っただけだ」
「そうか、それはすまんな。ちょうど一杯になったから休憩するか」
「そうだな。長い事潜ってると流石に疲れてくるからな」
「だな。同じ時間、狩りをしてるのとは違う疲れだよな」
何でか、潜ってる方が疲れるんだよな。狩りだとまだまだ大丈夫なんだけど、潜るというより泳ぐのは思ったよりも疲れるのかもな。後は、普段から泳いでないってのも理由の一つなんだろうな。
今は、いやレントよりも暖かいのに海から出ると急に寒く感じるんだよな。潜ってる時は、そんな事感じないのにな。
「どうだ? 泳ぎの調子は」
陸に上がると、ルーク達は泳ぎの練習をしていた。それも必死で。初日に比べれば良いとは思うけど、とてもじゃないけど安心して大丈夫とは言えないな。
「まだ全然駄目だが、段々と要領を掴んできたと思うぞ」
「そうか、それは良かった。ただ、泳げる様になるまでは船に乗る事は禁止だからな」
「分かっている。また迷惑になる様な事はしないさ。そっちはどうだなんだ?」
「俺達は元から泳げるから慣れれば早いぞ。ほら」
そう言って、抱えていた樽の中身を見せる。初日に比べると獲れる量が増えているのが分かると思う。俺もそうだけど、ナックも随分と慣れたもんだ。
「ほお~、おめえさん達なかなかやるようになったな」
声がした方に振り返るとフウィさん達が俺達と同じ様に休憩の為に陸に上がっていた。ただ、その抱えている樽には溢れんばかりの獲物がいた。俺達は二人なのに対して一人でだからな。その凄さが分かるってもんだ。
「こんな短い間でここまでできるなら、このままわし等と漁でもするか?」
「デル」
「はいはい」
「ああ、そういう事ね。それは無理だな。伝えてくれ」
「と、いう事ですので無理です」
「そうか、それは残念じゃな。まあ、気が変わったらいつでも声を掛けるんじゃよ。さて、冷えるから火にでも当たるか」
一瞬残念そうな顔をしたけど、それは本当に一瞬だった。それからはいつもの様に休憩小屋へ行って火に当たって体を温めた。長い時間、海の中にいると疲れるのと同時に体が冷える。潜ってる時はそうでもないんだけど、上がると急に冷えてくるんだよな。だから、暖める必要があるんだ。しかも、一日中潜っている訳じゃないのにだ。
まだこの町にいるからフウィさん達の依頼は続けるとは思うけど、中々に良い経験ができたな。
はい、申し訳ないです。
章の終わりなら兎も角、途中で筆が止まるとは。。。
書く意欲がなくなったと思ったら、エディタを開くこともなくなっていました。
そして、2ヶ月も経過していたと。
自分でも驚きですよ、本当に。
間が開いたので、言葉遣いが変になっているかもです。
後、物語の構成を修正するかもです。(大体の構成は決まっていたんですけどね)
後は、これまで通りの投稿ペースに戻せれば良いかなと。。。




