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見込みはアリ?

 『お前さん達、中々見所あるな!』

 

 『あんな負けをしたのにですか?』

 

 『がははは! 負けは負けでも、最後のは良い攻撃だったぞ。ボウたちが紹介する訳だ』

 

 『そのボウさん達にはまだ勝ってないんですけど』

 

 『俺から見た感じだと、個人で精霊術を使えば良い勝負になるだろう。だが、四人でとなると負ける確率の方が高いだろうな』

 

 『そうなんですか?』

 

 『まあ、俺の見立てだがな。連携を考えると、ボウ達の方がまだ上だな』

 

 『ありがとうございます』

 

 『お前さん達、四人での連携は慣れてないみたいだな。後、対人戦の経験が少ないだろ?』

 

 『良く分かりましたね』

 

 『そりゃあな』

 

 戦いが終わった後に、対戦してた人から話し掛けられる。まあ、それに応えるのはデル何だけど。でも、何を言ってるのか気になるよなあ。それは言っても仕方ないか。徐々に覚えていけば良いだろう。それよりも俺達に出来る事をしないとな。

 

 「なあ、戦ってみてどうだった?」

 

 「あー……何と言うか、手応えの無さが辛いな」

 

 「そうですねえ。あの大きさに騙されちゃ駄目ですね。鈍いのかと思ったら、想像以上に速かったですし。それでいて一撃が重いですからね」

 

 二人とも負けた事が悔しいって顔に出てるな。……そりゃそうか。俺だって悔しい。何しろ、一対四だぞ。数で有利とか思ってた自分を殴りたい気分だよ。でも、だからと言って油断なんかしてなかった……つもりだ。

 

 「動物相手だとこんな風に負ける事なんてなかったのになあ」

 

 「それは今回みたいに鍛錬で終わらないからだろ。負けるって事は死ぬ事だからな」

 

 「ああ、まあ、そうか。そうだよな。確かにお互いに強くなろうとかないからな。狩るか狩られるかのどちらかしかないからな」

 

 「あ、子供の頃にさ、オールスには負けたよな」

 

 「あー、あれは負けたとかじゃないだろ。勝負にすらしてないし。だって、俺等なんて助けを求めて逃げただけなんだし」

 

 「いや、あれは逃げるのが正解だろ。実際に戦ってたら三人共死んでたぞ」

 

 「まあ、結果的に逃げたのは正解だったけどさ。でも、あんな思いは二度とごめんだな。アロが死ななくて本当に良かったぞ」

 

 「あははは」

 

 笑えない。笑えないよ。乾いた笑いしか出てこないよ。オールスは確かに恐怖だった。だけど、死なない様になってたなんて言えない。言える訳がない。

 

 「で、どうすれば良かったかな?」

 

 「やっぱり連携だな」

 

 「そうですね。後は、ボウさん達みたいに役割を別けた方が良いんでしょうか?」

 

 「んー、どうだろうな。それが俺達に合えば役割もアリだと思うけどな」

 

 「役割か。防御を重視する人、攻撃を重視する人、指揮する人って感じか?」

 

 「思い付くのはそんなもんか。あ、後は回りの索敵も必要か?」

 

 「索敵かあ。目の前だけに集中しないってのは良いかもしれないけど、今回みたいに戦い相手が分かってる状況だといらないんじゃないか?」

 

 「あー、そりゃそうか。じゃあ、どうすれば良かったんだ?」

 

 どうすれば、か。一言で言うなら連携、難しく言っても連携だな。その連携をどうするのか、だが。繰り返すしかないよな。

 

 「やっぱり連携に行き着きますね」

 

 「だよな。攻撃も防御も悪くなかったと思うんだよな」

 

 「俺の盾だとあの一撃は防げる気がしないから、受けて防御するよりも避ける事を考えた方が良くないか?」

 

 「でも、確か身体強化の一撃でも壊れなかったし、皹も入らなかったよな? だったら、大丈夫なんじゃないか?」

 

 「多分、大丈夫だと思うけどさ。それでも試したくはないよ」

 

 今、装備してる盾には俺達で簡単に壊れないか試した。試したけど、絶対に壊れないって保証はない。

 

 「受け止めるんじゃなくて、受け流す様にするとかですか?」

 

 「そうなるよな。と言っても、盾を装備してるのって俺だけなんだよなあ」

 

 「俺は剣が大きいから、盾の真似事は出来るかもな」

 

 「俺の武器は槍ですからね。流石に片手で操れる程じゃないですからね」

 

 「何が良いのかこれから考えていくか。防御に関しては最悪、精霊術で動きを止めるってのもアリだとは思うけどな」

 

 受ける事も受け流す事も考えるけど、そもそも攻撃をさせなければ良いんじゃないか? 相手が攻撃出来ない状況に追い込んで、一方的に攻撃を仕掛ける、と。

 

 「精霊術で動きを止める、ね」

 

 「何か問題でもあるか?」

 

 「だったら、何でさっきの戦いでは使わなかったんだ?」

 

 「いやー、忘れてたと言うか思い付かなかったと言うか。そもそも木がなかったし」

 

 「なかった場合も含めて、色々と考えないとな」

 

 「そうですね」

 

 なんでか。精霊術で動きを止めるなんて考えは浮かんでこなかった。ただ、目の前の相手をどうやって倒すかに意識がいっていた。

 

 まあ、木がなかったから思い付かなかっただけかもな。

 

 あー、でも。樹じゃなくて地属性だったらどうだ? 上手い事使えれば、足場を崩して攻撃の機会が増えたか?

 

 「まあ、精霊術で動きを止めるってのも考えつつ、今は色んな可能性を考えよう。何が有効なのか分からないんだから、今は色々と試そう。幸い、ボウさん達との鍛錬はまだ続く訳だしな」

 

 「そうですね。今日戦ってみて、色々試したい事がありますからね」

 

 「だな」

 

 

 「何の話をしてるんだ?」

 

 「今の反省会。そっちは終わったのか?」

 

 「終わったと言うか、特に何かをしてた訳ではないのだぞ」

 

 「ふーん。何か話してたんじゃないのか?」

 

 「『中々見所がある』と『精霊術を使えばボウさん達と良い勝負になるだろう』と『対人戦の経験が少ない』の三点だな」

 

 「へー、そんな事言ってたのか。今日会ったばかりなのに、良く見てるな」

 

 「それよりも酷いじゃないか」

 

 「え、何が?」

 

 「反省会をするなら私がいる時にしてくれ。私だって思うところはあるんだぞ」

 

 「すまんすまん。何か話し込んでたから先に始めちゃったよ」

 

 「今回は見逃すけど、頼むぞ」

 

 「分かったって」

 

 やべ。これじゃあルークの時と同じだ。仲間なんだから、一緒に考えないとな。

 

 「他には何か言ってたか?」

 

 「んー、『見所はあるから、暇な時はいつでも来い』だと」

 

 「これはえらく気に入られたな。でも、ボウさん達との鍛錬もあるしな。どうしようか」

 

 「なんならボウさん達も一緒に来いって言ってたぞ」

 

 「なるほど」

 

 これは逃げられないな。強くなる為だと思えば苦でもなんでもない。ないけど、自信がどんどんなくなっていくなあ。

 

 「あ、それとこれから狩りに行くから準備しろって」

 

 「準備と言われても、いつでも行ける様に準備はしてきたからな」

 

 「そうだな。準備と言われても困るな。それでも準備って言うからには、何か特別な物が必要なのか?」

 

 「さあ? ボウさん達からは狩りとしか聞いてないし、あの偉い人も何も言ってなかったぞ」

 

 「じゃあ、特に準備する事はないな。ところでさ、あの偉い人って名前は何て言うんだ?」

 

 「ああ、そういえば聞いてなかったな。偉い人ってだけで」

 

 「ズワルト・トーナって名前だ」

 

 「ズワルト……どこかで聞いた様な気がするんだが」

 

 「それはですね、デル様がこの国の事を説明された時に出た名前ですね」

 

 「良く覚えてるなあ。でも、何で国の説明に出てくるんだ?」

 

 「忘れたんですか?」

 

 「「うん」」

 

 ズワルト、はて? 国の説明に出てくる名前だったか? 出てくるとしたら、重要な名前だよな。何で覚えてないんだ? デルもルークも呆れて俺達を見てるよ。てか、逆に疑問だよ。どうしてルークは覚えてるのかと。

 

 「ズワルトはこの国の王族ですよ」

 

 「へー、王族。王族!?」

 

 「やっと思い出したんですね」

 

 王族がどうして、この町にいるんだ? それも軍の偉い人で。軍の視察か何かか?

 

 「いや、思い出してない。でも、王族がどうしてここに?」

 

 「この町の代官で軍の最高責任者だ」

 

 「「「へー」」」

 

 「どうして、そこで私を見るんだ?」

 

 「どうしてって言われてもな」

 

 目の前に王族がいるわけで。王族ってこうなのか? こうって言うのは、自由。ズワルトさんが自由かどうかは分からないけど、王都でゆっくりしてるのかと。しかも、代官で軍の最高責任者だぞ。

 

 そんな人が狩りに行くし俺達と戦うし。王族ってなんなんだ、一体。俺が知ってる王族ってシムさん達やデルだけだからな。これが王族の正しい姿だとは思わないけどさ。

 

 自由すぎない? 狩りなんて、兵士にやらせれば良いのに。

 

 

 『よし、それじゃあ楽しい狩りの時間だ! 行くぞ!』

 

 『うす!』

 

 槍を高らかに掲げてるよ。楽しそうと言うか、怖い顔してるよ。クローコーだから怖いってのは当たり前なんだけどさ。凄みが増したよね。

 

 一体、どんな狩りなんだよ。一気に不安になってきた。


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