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今度こそ出発

タルパから穴道を抜けると直ぐにヴァーテルの町へと続くと書きましたが変更します。

約一日半で町に着くと変更します。

それと同時に、穴を抜けると審査機能のみを有する関所みたいな物をおきます。(2018/7/29)

 「ほら。準備も出来たんだから、早く行こう」

 

 「分かった。そんなに焦るな」

 

 次の国に行こうと提案してから、直ぐに出発出来なかった。ナックからテラと契約したんじゃないかって詰め寄られたからだ。まあ、詰め寄られただけで答えてないけどな。うっかり答えてしまったら、大変な事になるからな。今は『違う』とだけ言ってある。

 これを言った後に、少しだけ後悔した。折角、ナックが切っ掛けを作ってくれたって言うのに。でも後悔したのは少しで、話すにしても良く考えてからにしようって。だから、今は黙っている。

 あ、出発出来なかったとは言ったけど、何日も詰め寄られてた訳じゃない。幾ら詰め寄ったところで、俺の答えは変わらない。だったら、そうなんだろうって事で収まった。それを確かめる方法なんてないからな。あの日に出発出来なかっただけで、次の日の今日、出発する事にしたんだ。

 

 「クセンさんに別れを言わなくても良いのか?」

 

 「別に構うまい。私が冒険者になった事は知っているし、旅に出る事も分かっているだろう。改めて別れを言う必要はないな。帰ってからでも会えるだろ」

 

 「ふーん、そんなもんか」

 

 「そんなものだ」

 

 「それは良いが、アロ達は準備出来ているのか?」

 

 「準備も何も、する事ってないだろ」

 

 「いや、装備品の手入れとか食糧とか?」

 

 「手入れなんていつもしてるから、出発に合わせて改めてする事なんてないな。食糧だって、これから買えば良いだろ」

 

 「それはそうか」

 

 「ところでさ、これから行くところって暑いとか寒いとかはどうなんだ?」

 

 「今更それを聞くのか?」

 

 「いや、聞き忘れてる事ないかなって思ったらさ。国と種族は聞いたけど、その他の事を聞いてないと思って」

 

 「そう言えば、私も言ってなかったな。暑いか寒いかで言うと暑いな」

 

 「暑いのか。折角、毛皮の外套があるのに着る機会がないな」

 

 「それは仕方ないだろ。着る為に態々寒いところに行く訳にもいくまい」

 

 「まあ、そりゃそうなんだけどな。でも、寒い国もあるんだろ?」

 

 「それはあるさ。それに、季節によっても違うな」

 

 「なるほどね。じゃあ、食べ物とか珍しい物とか名物は何だ?」

 

 「んー、それは私から言うよりは自分で確かめた方が良いだろう。何しろ、これから行くんだからな」

 

 「そりゃそうか」

 

 そうだなよな。これから行くのに、知っても意味ないな。いや、意味なくはないけど。これから経験するんだから、聞くよりは自分で確かめた方が良いか。

 

 「おい、準備出来たぞ。そっちはどうだ?」

 

 「俺もいつでも行けるぞ」

 

 「じゃあ、行くか」

 

 

 全員、準備が出来たので宿を引き払う。王都に戻ってから、ずっとここに泊まってたな。安宿だったけど、悪い宿じゃなかった。まあ、最初の宿に比べたら劣るけどね。あそこと比べるのは違うよな。

 

 「それで、何か買っていくだろ?」

 

 「そりゃもちろんだ。でも、どれ位買えば良いんだ? ヴァーテルに入って、町に着くのはいつ頃になるんだ?」

 

 「そうだな。一日は途中で過ごす事になるだろう。次の昼前には着くと思う」

 

 「そっか。結構、離れてるんだな」

 

 「うむ。流石に穴を抜けて直ぐの所に町があっては、我が国としても油断出来ないからな。しかし、我が国と一番近いので大きな町だぞ」

 

 「へー、そうなんだ。じゃあ寝泊りする道具とかも必要だったか。その途中には何もないのか?」

 

 「んー……あるな。とは言っても屋根があって、雨風が凌げる程度の物だがな」

 

 「なるほどな。じゃあ、喰いもんとかは途中で狩れば良いか」

 

 結局、何も買わないでデルの案内で穴に向かう事にした。買うとしても、食糧くらいだったから別に良いけどね。荷物が少なくて済むし。装備品に関しても、揃えてあるし。手入れだってしている。うん、いつでも行けたんだな。

 

 

 「あ、買う物と言えばさ」

 

 「何だ、何かあったか?」

 

 「いや今すぐって訳じゃないけど、四人になった事だし馬車とかどうかなと思って」

 

 「あー」

 

 「馬車? 何でまた急に」

 

 ナックは分かってるから良いけど、二人は揃って首を傾げている。そりゃそうだ。馬車を買うって、こいつ何を言ってるんだって思うだろ。

 

 「温かい飯を喰いたいだろ?」

 

 「そりゃ、まあ。だが、それとどう繋がるんだ?」

 

 「それはな……」

 

 穴に向かっている間に、どうして馬車が必要なのかを説明する。まあ、説明されないと馬車と温かい飯の関係は分からないよな。今すぐって訳じゃない。でも、買うのも悪くないと思う。

 

 

 「温かい飯ですか。確かにそれは憧れますね」

 

 「だろ?」

 

 「でも、俺達ってまだⅠですよね。そんな低いのに持つと周りの目が……」

 

 「そう、それなんだよ。温かい飯が喰えるのは良い。良いけど、そこが問題なんだよ。どれ位になったら、買っても良いと思う?」

 

 「んー、そうですね。最低でも個人とグループでⅣかⅤは欲しいですね」

 

 「やっぱり、その位は必要かあ」

 

 「しかも、四人だけで馬車か?」

 

 「今の状況だとそうだな。人数も多い方が良いか?」

 

 「んー、どうだろうな。確か父上達は歩きだけだったはずだし。まあ、少ないよりは多い方が良いんじゃないか?」

 

 「人数もかあ。それは何とも言えないな。増やしたい訳でもないし、かと言って絶対に増やしたくない訳じゃない。まあ、そんな事も考えてるって覚えていれば良いよ」

 

 「うむ、分かった。さあ、もう直ぐだ」

 

 

 次の国へと続く穴は、中腹にある町の中にあった。俺達は中腹の町にもいたんだけど、ここには来た事がなかった。穴の前に門があって、町に入る時の門よりは少し小さかった。小さいけども、俺達は余裕で通れるし馬車も通れる横幅だ。

 

 「ここから行けるのか。近かったんだな」

 

 「気付かなかったな」

 

 「結構、並んでますね」

 

 「うむ。商人にとっては、珍しい物を仕入れたり出来るからな」

 

 「なるほどね。まあ、そんな事より早く並ぼう」

 

 「そんな事って……」

 

 

 「次の者、前へ」

 

 列に並んでいると、案外早く順番がきた。早い方が良いから助かるけどね。で、審査をしている兵士がデルを見ると突然、態度が変わる。いつもの事だ。

 

 「これはデル様!」

 

 「うむ、仕事ご苦労。それでは審査を頼む」

 

 王族ではなく冒険者として旅をするのに、偉そうだな。いや、この国だからか。まだ、冒険者よりは王族としての方が有名だもんな。

 

 「どうぞ、お通り下さい!」

 

 「こら、しっかりと審査をしないか。私は冒険者として行くのだからな」

 

 「は、いえ。しかし……」

 

 「私が危険な物を運ぶかもしれないんだぞ。王族だろうが、しっかりと審査は頼むぞ」

 

 「は! では」

 

 

 「デルってやっぱり王族なんだな」

 

 「やっぱりって何だ、やっぱりって」

 

 「思ったまんまだよ。ま、それもここまでだとは思うけどな」

 

 「うむ。王族としての私は通用しないから、そのつもりでいる事だな」

 

 「それでも、王族としての身分が使えるとなれば迷わず使うけどな。あるんだろ? 王族である事を証明する手段を」

 

 「……あるには、ある。だが、使うつもりはないぞ。それでは、冒険者とは言えないからな」

 

 「分かってるって。最悪の場合だけだよ。それしか方法がないって事とそれをしないと死ぬだろうって時だけだ」

 

 「うむ。それが良いだろう」

 

 審査は本当に簡単に終わった。デルがいるからなのか、いても変わらないのかは分からない。だけど、対応してた兵士の人は手が震えてた。問題がないか審査するんだ、手荷物から何から何まで。しかも、どういった目的で行くのかとかも聞かないといけない。デルが同じ対応を頼んでたけど、あれは兵士の立場からすればやりたくないんだろうな。ま、それもここを抜けたらそんな対応する人は現れないけどな。

 

 「それにしても、ここって寒いな」

 

 「ああ。外套があって良かったぞ」

 

 「本当だな。こんな事言ってなかったぞ」

 

 「寒いのは分かっていた。だが、この穴だけだぞ。この為に荷物を増やすのもどうかと思ってな」

 

 「まあ、それは分からなくもないけどな」

 

 審査の門の先の穴を進むと、一言で言うならば洞窟だ。テラに会いに行く為に降りた階段と様子が似ている。壁や天井、床などは崩落を防ぐ為に精霊術で固めているらしい。だから、崩落の心配はないんだ。なんだけど、寒い。陽が中まで当たらないからなのか、外とは随分と違う。かといって、湿気でジメジメしているかと言えばそこまでじゃない。次にこの穴を通るのはいつになるかな。

 

 

 「なあ、これってどれ位歩けば良いんだ?」

 

 「昼前には着くぞ」

 

 「結構、長いんだな」

 

 「それはそうだ。何しろ、山を貫通しているんだからな。それでも、山越えよりは遥かに早いぞ」

 

 「そっか、そうだよな。戦争の為なのに、山越えよりも遅いと意味がないもんな」

 

 「ああ、そうだ。今でこそ穴が開いているから早いが、昔は山越えは命懸けだったからな。それを乗り越えても戦争だからな」

 

 「うわ。何その怖いの」

 

 「うむ。山越えで生き延びたと思ったら、戦いで死ぬ者も大勢いただろう。だから、どうにかして山越えをしないで済む方法を探したんだ。その結果がこの穴だな」

 

 「ふーん。それが今は戦争の為じゃなくって、平和の為に使われていると。何とまあ」

 

 「おいおい。戦争は確かに悪い事ばかりだ。だが、戦って死んだ者達が無駄死にだったとは思わない。彼等の死があって、今があるんだからな」

 

 「へー、流石王族」

 

 「そこに王族は関係ないだろうが」

 

 「まあまあ、もう少しで終わりみたいですよ。前に灯りが見えてきましたから」

 

 「お、本当だ」

 

 穴を抜けると、頑丈そうな建物が穴を囲んでいる。ついでに強そうな人達が待っていた。前に会ったクローコー族だな。手には槍と盾、鎧も金属で揃えている。さあ、ここからは何が待っているのかな。楽しみだな!


やっと、タルパ編が終わりました。

長かった。

この後は、数話幕間を挟みます。

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