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出国?

 「そろそろ、次の国に行かないか?」

 

 俺は依頼で来ている、森でそう提案してみた。実際、この国にいる意味はもうないだろう。契約出来たし、証も作ってもらった。位階に関しては、上げられない。位階を上げる事だけが目的じゃないけど、上げられるなら上げておきたい。

 

 「んー、そうだな。ここにいる意味はもうないか」

 

 「だよな。二人は何かあるか?」

 

 「俺はないですね」

 

 「私もないな。父上達には別れを言ってあるしな。おじい様に証を作って頂いたし。ここでやり残した事はないな」

 

 「そうと決まれば、早速行くか」

 

 「おいおい、早すぎじゃないか?」

 

 「何言ってるんだよ。ここで何かやる事が残ってる訳でもなし。だったら、早い方が良いだろう?」

 

 「そうだけど……。デル、次の国に行く為に必要な事ってあるか?」

 

 「んー、ないな。出入りに関しては何も手続きはない。ただ、出入りをする時に兵士の審査はある」

 

 「ああ。町に入る時と同じ様な物か?」

 

 「まあ、大体そんな感じだ。後、前に行き来をし易くする為に穴を開けてある、と言ったのを覚えているか?」

 

 「ああ、もちろん」

 

 「それは少し、いや結構違ってな。行き来をし易くする為ではあるが、平和目的ではなく戦争の為だ」

 

 「戦争?」

 

 「うむ、戦争だ」

 

 「いや、『戦争だ』って言われても、これから行くんだぞ? 大丈夫なんだよな?」

 

 「それはもちろんだ。戦争とは言ったが、大体二百年前の事だ。今は互いに争う気はないから安心して大丈夫だ。ただ、過去にそういった事があったとだけ、知っておいてくれれれば良い」

 

 「何だ、驚かすなよな。行った先で戦争だなんて嫌だぞ」

 

 「アロ達は知らないだろうから、教えたんだ」

 

 まあ、俺達はそんな事は知らないな。この国に来て、結構経つけども知らない事の方が多いだろう。かといって、ルークが全部を知っているかと言えば違うだろうし、デルも同じだろう。

 

 「それで、俺達が知っておいた方が良い事って他に何かあるか?」

 

 「んー、そうだな。これから行く国名はヴァーテルと言って、クローコー族が多い」

 

 「クローコー? どこかで聞いた様な……。どこだっけ?」

 

 「あー、あれだ。ペルルに行く途中で一緒に戦った人達だ」

 

 「あー。そう言えばそうだったな。良く覚えてたな」

 

 「覚えてたってよりは忘れないだろうが」

 

 「忘れられないって、一体何があったんだ?」

 

 「いや、それがな……」

 

 ナックがあの時の事を楽しそうに話し始めた。態々話す事でもないだろうに。しかも、楽しそうに。あの時の事は楽しくもないだろうに。突然起こった事で、少し間違えば死んでたかもしれないんだ。そりゃ、自分の力を試したいってのはあった。あったけど、それで死のうなんて思ってない。危なくなったら逃げるつもりだったし。まあ、逃げないで済んだけどさ。

 

 「(まあ、あれは忘れないでしょうよ)」

 

 「(そうかあ?)」

 

 「(アロはそうでしょうけど、あそこにいた人達は驚いてたでしょ)」

 

 「(どうだったっけなあ)」

 

 「(どうだったっけって、忘れたの? あれで私と契約してる事が分かったんでしょうよ)」

 

 「(あー、そうだったそうだった。じゃあこれからどうしようか)」

 

 「(どうしようって、何が?)」

 

 「(いや、キューカだけであれが出来ただろ? テラとも契約したんだから、もっと凄い筈だよな。誤魔化せないよな?)」

 

 「(今までと同じだと、直ぐに知られてしまうでしょうね)」

 

 「(だよなあ)」

 

 俺がキューカと契約してるのは、認めたから仕方ないだろう。まあ、ナックが勝手に言っちゃったのもあるけど。精霊長様と契約してるってだけで大事なのに、一人? だけじゃなくって二人? だからな。驚かれるだけじゃなくって、何かあるんじゃないかって疑われるぞ。まあ、疑われて理由を聞かれても、「精霊長が決めた事だから」で済むとは思うけどな。

 

 あ、そもそも精霊長様がどれだけの事を出来るか知らないだろうから、テラと契約した事は流石に分からないか。

 

 「(いえ、そうとは限りませんよ)」

 

 「(どういう事?)」

 

 「(今回、全員契約出来ました。中には位階が高い精霊もいます。私が選んだのですから、知っていて当然ですね。それで、範囲や精度で分かると思うんですよ)」

 

 「(でもさ、精霊力って属性に関わらず共通でしょ? だったら、精霊長のキューカがいるから疑う事はないんじゃない?)」

 

 「(確かに、精霊力は共通ですよ。でも、範囲や精度は契約した精霊が関係するのですよ)」

 

 「(それって、どんなに精霊術に慣れたとしても、属性に関わる精霊術は自分では制御しきれないって事?)」

 

 「(そうですね。どんな種族だろうと、属性の精霊術は精霊には敵いませんからね)」

 

 「(ちょ、ちょっと待って。もっと詳しく聞かせて……)」

 

 

 「(そうですね。その認識で合ってます)」

 

 纏めると、

 

 ・契約する度に精霊力は増える

 ・精霊力は属性に関係なく共通

 ・精霊力が増えると範囲や威力や精度が増す

 ・属性に関係ない精霊術は自分で制御可

 ・属性に関係ある精霊術は精霊が得意

 

 こんな感じか。ううむ。キューカはこんな事教えてくれなかったぞ。もしかして、知らないとか? いやいや、それはないだろう。でも、そうか。どうしても誤魔化せない部分があるのか。そうすると、いつかは知られるだろうって事だな。だったら、属性精霊術も自分でやったらどうだ? それだったら、テラと契約してる事は誤魔化せるだろう。

 

 「(今更なのですけど、わたくしと契約してるのは秘密にしますの?)」

 

 「(秘密、と言うよりは言いふらす必要がないかな。キューカの事はナックが勝手に言っちゃったから、知られちゃったけど)」

 

 「(まあ、わたくしとしても広く知られたい訳ではありませんからね)」

 

 「(そうそう。精霊長の二人と契約なんて、騒ぎにならない訳がないよ)」

 

 「(まあ、そうですわね。ただ、デル達は知ったからと言って、周りに言いふらす様には見えませんでしたよ?)」

 

 「(いや、俺もそれは思う。思うけど、注意しないよりは良いでしょ)」

 

 「(……そうですわね)」

 

 「(テラ、無理よ。この事に関して、アロは頑固だから。記憶の事だって、家族に言うのさえ拒んでたんだから)」

 

 「(そう、ですか。難しいですわね)」

 

 二人して話させる方向にいきたい様だけど、俺は嫌だ。どうして、話す必要があるんだよ。必要がないのに、する理由って何だよ。言ってから前の状態に戻る事なんて出来ないんだぞ。言った後の事が分からないのに、そんな事は言えない。そんな冒険はしたくない。

 

 「(ですがデル達には知られてないでしょうけど、クセンには知られていますよ)」

 

 「(え? 何で?)」

 

 「(前にも言ったと思いますけど、契約が終わったらクセンが来るのですよ。ですから、わたくしがいなくなった事は分かりますよ)」

 

 「(あー、そんな事言ってたね。そっかあ、クセンさんには知られちゃったか)」

 

 「(それだけではなく、シムには当然伝わるでしょう)」

 

 「(……シムさんにもか。それは俺にはどうしようもないから諦めるしかないか。と言う事は、デルが仲間になったのは何かに気付いたって事?)」

 

 「(それはどうでしょう。アロが来てキューカさんから話を聞くまで、誰かは分かりませんでしたから。それに、神に選ばれたのがアロだと知っているのはわたくしだけです。ただ、アロが神に選ばれた者だと分かるのではないでしょうか)」

 

 「(分かっちゃうかな?)」

 

 「(恐らくは。何しろ、精霊長であるわたくしが契約したんですから。何かには気付いてるでしょうね。ただ、確信はないと思いますよ)」

 

 「(と言う事は、いずれデルにも伝わる?)」

 

 「(どうでしょうね。あれからクセンには会いに行ってない訳ですし。シムからも何か知らせるには手紙くらいしか思い付かないですからね。この国を出たら、シム達からの連絡は難しいでしょうね)」

 

 「(そっか。それでも可能性はなくはないんだ)」

 

 んー、人伝に知られるよりは自分から話した方が良いな。ん? それだったら今話しても良いんじゃないか? ……いやいやいや、それはないだろ。危ない危ない。うっかり自分から話すところだった。キューカもそうだけど、テラにも乗せられるところだった。

 

 

 「と、こんな事があったんだ」

 

 「へー、そんな事やってたんですね。俺は直接王都に来たので、見てませんね」

 

 「ふむ。私もアロ達が来てからは、周りの町に行ってないからな。知らなかったな」

 

 「シムさんから聞かなかったのか?」

 

 「私は聞いてないな。私は王族の一人だが、何でも知っている訳ではない」

 

 「そうなのか?」

 

 「それはそうだ。私は王族ではあるが、何の役職にも就いていないからな。ただ、兄上と姉上は知っているだろうな」

 

 「ふーん。シムさんやクセンさんに会ったのに、何も言われなかったな」

 

 「まあ、それはそうだろう。広く知られている訳ではないし、本人に向かって『本当か?』とは聞けないだろ。それに、父上が知っていても姉上に知らせる必要もないからな。一応は別の組織と言う事になってるからな」

 

 「ふーん、何だか面倒だな」

 

 「面倒って。まあ、そう思うのも無理はないだろう。だが、それがこの国なんだ。他の国がどうなっているのかは、行ってみないと詳しい事は分からないな」

 

 「ふーん。じゃあ、この旅は王族としての勉学にもなると?」

 

 「そうだな。人伝に聞く知識と、自分で経験して得る知識では空と大地の差がある」

 

 「なるほどねえ」

 

 と言う事は、王族としてデルに成長して欲しいから旅に出すのか。そして、それをデルも分かっていると。まあ、冒険者に憧れていたってのもあるだろうけどね。

 

 「まあ、それは良いとして。早く準備しよう。これじゃあ今日中に出発出来ないぞ」

 

 「え? 本当に今日出発するつもりだったんですか?」

 

 「何を当たり前の事を。ほら、早くしないと暗くなるぞ」

 

 「ったく、仕方ないな」

 

 「なあ、アロ」

 

 「ん?」

 

 「お前、精霊長様と契約してないよな?」

 

 「!?」

 

 な、何を言ってるんだよ。って、どこで気付いたんだよ。俺、どっかで間違いをした? ナックは見てない様で見てるからな。前の時の事もあるしな。


すいません。まだでした。

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