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そんなつもりは毛頭ないです

来い所 → 濃い所 (2018/3/22)

 「じゃあ、行ってくる」

 

 「ああ。俺等は適当に依頼でもしてるぞ」

 

 「分かった。試すのは良いけど程々にな」

 

 「今試さないでいつ試すんだよ。死なない程度にしておくから大丈夫だ」

 

 「それのどこが大丈夫なんだよ。本当に頼むぞ」

 

 「大丈夫だって。俺は良いけど、この二人はまだ慣れてないからな」

 

 「それもそうか」

 

 「うむ。まだまだ制御出来てないからな。無理はしないつもりだ」

 

 「そうか。じゃあ」

 

 ああは言ったけども、ナックの事だから無理をさせるんだろうな。でも、無理や危険な事をしないと覚えられない事もあるからな。どれが正しいとかないだろうな。あの時にやっておけば、何て思った時には死んでるからな。まあ、俺がいない間はナックに任せれば大丈夫だろう。何しろ、契約するのは二度目だしな。

 そうそう。三人の契約は何事もなく終わった。ナックは夕飯前に、ルークとデルはそれぞれ半日で終わった。契約は一日に一人だけっていう決まりがあるらしく、早く契約出来たとしても続けては駄目らしい。だから、三日。最短と言えば最短なんだけども、俺がまだ契約出来てないから何とも言えないな。

 

 

 「来ましたね。では、行きましょうか」

 

 「あの、案内をするのは毎回クセンさん何ですか?」

 

 「ええ、そうよ。どうしたの? 急に」

 

 「こう言っては何ですけども、案内何て簡単な事は他の人に任せれば良いのになと思って。精霊官長がやる事じゃないのかなと」

 

 「ああ、そういう事ね。確かに案内は誰でも出来るし、特別な能力はいらないわね。でも、これは精霊官が関われる最後の事なの。だから、他の人に任せるなんて考えはないわね」

 

 「なるほど」

 

 「まあ、これは先代からの教えだけどもね。私からも良いかしら? あの後、デル達から何か言われた?」

 

 「あー、言われました。あり得ないって。精霊の相性かとも言われましたけども、それだとシムさんや父さん達の説明が出来ないって。それに、何を考えて言ったところで、俺達が出来るのは何もないって事で終わりましたから」

 

 「あら、そうだったの。まあ、契約出来るかどうかはテラ様次第だからね。どんなに位階が高くても、どんなに契約を希望していてもね。もう一度ってのは聞いた事がないけども、テラ様も態々契約出来ないのに呼ばないでしょうからね。安心して良いと思うわよ」

 

 「テラ様から何か聞いたんですか?」

 

 「聞くには聞いたけども、はっきりとした理由は聞けなかったわ」

 

 理由を言わなかった? 何故だ? クセンさんも言ってるけど、もう一度ってのは普通じゃないんだろ? だったら、理由くらいは話してると思ったんだけども。何か話せない理由でもあるのか? ……まあ、俺の記憶だよな。それでも、記憶の事に触れないで伝える事は出来るよな。どうしてしなかったんだ? もしかして、テラ様とこの国は関係が悪いとか? ……それはないか。じゃあ、クセンさんはああ言ってるけども、本当は知ってるとか? うん、そっちの方があるな。

 

 

 「さあ、着いたわよ」

 

 っと、考え事をしてたらもう着いちゃったか。ここに来るのも二度目とはね。

 

 「じゃあ、私はここまでです。終わったら、前と同じで近くの精霊官に一言言ってね。それで、その精霊官と一緒に私の所に来てもらえるかしら」

 

 「あ、はい」

 

 「初めての事だから、私もどうなったのか知っておかないといけないし」

 

 「分かりました」

 

 「では、ね」

 

 余程気になるのか、別れた後もチラチラと振り向いてくる。気にはなっても、一緒に入る事は出来ないからな。後でどうなったか知る事は出来るだろうけど、俺が本当の事を言うとは限らないしな。

 

 「じゃあ、行きますか」

 

 

 扉を開ければ、前と同じ光景。ただ、違う所をある。それは既にテラ様が姿を見せている事だ。

 

 「待っていましたよ」

 

 「前に来た時とは違うんですね」

 

 「初めてでもないのに、そんな演出はいらないでしょう」

 

 「あ、はい」

 

 あれって演出だったんだ。キューカの時もそうだったけど、見惚れちゃうんだよな。あれも演出と言えば演出なのか。しかも、成功してるからな。何も言えないな。

 

 「では、そこに座って続きをしましょうか」

 

 「はい」

 

 「とは言っても、改めて何かをする事はありません」

 

 「そうなんですか?」

 

 「ええ。貴方達とは聞きたい事は前回に全て聞けましたから」

 

 「はあ。では、何故もう一度呼ばれたのでしょうか?」

 

 「それは貴方だけでなく、貴方の周りの者を見極める為です」

 

 「契約するのは俺なのに、仲間もですか?」

 

 「ええ、そうです。そこにいるキューカさんから話を聞いたので、貴方だけでなく周りの者も対象にしました」

 

 隣を見ると、いつの間にやらキューカが出ていた。前の時もそうだったけども、俺の意思とは関係なく出られるんだな。

 

 「い、いつの間に」

 

 「当然でしょ? アロの契約がかかってるんだから」

 

 「そんなに簡単に出られるなら、普段からそうすれば良いのに」

 

 「それは無理よ。ここだから、こうやって出られるのよ」

 

 「ここって精霊殿だからって事?」

 

 「そういう事よ。精霊殿は精霊が長い年月(としつき)をかけて築いた場所なのよ。だから、他と比べると精霊力の濃度が違うわ」

 

 「なるほど。じゃあ、ここと同じ様に精霊力が濃い所なら、精霊殿じゃなくても姿を現す事が出来るって事?」

 

 「まあ、そうなるわね」

 

 「ふーん。知らなかったな」

 

 「で、もう良いですか?」

 

 「あ、はい」

 

 知らなかった事だから、つい興味を持っちゃったよ。駄目だ駄目だ、今の目的は契約する事なんだ。他の事は後回しだ。

 

 「それで、他の者達の印象はとても良いですね」

 

 「そ、それはどうも」

 

 仲間を褒められた様で、何だか恥ずかしいな。

 

 「『他の者達は』って事は、アロは含まれてないのね」

 

 「残念な事に決められないのです」

 

 「と言うと?」

 

 「わたくしの問いかけに対して、満足出来る答えではなかったからです」

 

 「満足していないのに、決められないの?」

 

 「契約して強くなりたい。これはアローニだけに限った事ではありません」

 

 「な、なら」

 

 「他の者はどうして強くなりたいのか、はっきりとしていました。中にはアローニと同じ様に、旅を続ける事が目的で契約は考えていない者もいました」

 

 「だったら、アロもそれで良いんじゃないの?」

 

 「最初はそれでも良いと思いました。強くなりたいと言ったのも、嘘ではなかった様ですから。ただ一つ気になる事がありまして」

 

 「それは何?」

 

 「それは、アローニが神に選ばれたという事です」

 

 「続けて」

 

 「選ばれただけならば、まだ良いでしょう。ですが、『世界に変革を齎す』と仰ってました。それは、アローニの意志に関係なく動き出すという事です。ですので、それに備えて力をつけておくのも手段の一つであるのかなと。ただ、力をつけた事によって、より大きな変革に繋がらないのかとも思うのです。ですから、判断出来ないのですよ」

 

 「……」

 

 契約は俺の事なのに、俺の事を放っておいて話が進んでいる。隣のキューカは難しい顔で考え込んじゃったし。と言うか、オクヤマ様はそんな事を言ったのか? 世界に変革って……。一体何をするんだ、俺は。俺にそんなつもりはないし、そもそも出来ないだろう。でも、オクヤマ様がそう言うって事は先が見えてるのか?

 

 「『世界に変革』か。私の所に降臨なされた時は言ってなかったわよ」

 

 「そうですか。では、アローニはその様な存在ではないと?」

 

 「んー、どうだろう。先の事までは分からないわね。ただ、一つ言える事は」

 

 「言える事は?」

 

 「それは悪い変革ではないって事かしら」

 

 「それは相反していませんか? 先の事は分からない、けども悪い事ではない、と」

 

 「ええ、先の事は分からないわ。ただね、短い間だけども一緒に行動してみて、アロの考えや思いは大体分かってるつもりよ。だから、悪い事をしようと思わないはずなのよ」

 

 「……なるほど。一緒にいるという経験からですか。では、これまでにアローニが何かを変えた事はありませんか?」

 

 「変えた事? んー、変えた事と言うよりも新しく作ったと言った方が正しいかしらね」

 

 「それはどういった事ですか?」

 

 「まずは……」

 

 キューカがどんどんと話を進めていく。いや、進んでいるのか? 俺がどんな事をやったのかを教えているだけだ。これを教えて、契約に関係するんだろうか。ああ、料理大会の事まで話しちゃって。俺の事なのに、俺が関われないなんてな。これって、本当に俺の契約なのか? 何だかキューカが契約に来てるみたいじゃないか。

 

 

 「なるほど。そういった変化ですか」

 

 「まあ、今話したのは、どれも悪い変化じゃなくって、寧ろ良い変化だと思うわよ。それによって、周りも刺激されて良い効果が出ているみたいだし」

 

 「なるほど。わたくしは『変革』と仰ったから、何故だか世界にとって良くない事だと思い込んでいました」

 

 「そうよ。それに態々降臨なされて、世界にとって良くない変化を齎す者を選ぶとは言わないと思うわよ?」

 

 「……それもそうですね」

 

 「そうよ。それに、もし悪い方向に進もうとしたら、私達が止めれば良いんだから」

 

 「それもそうですね。あー、何だか悪い事ばかりを考えてしまって、最近気分が良くなかったのよねえ」

 

 「まったく、気をつけてよね。これから一緒になるんだし」

 

 「そうですね」

 

 「「あははは」」

 

 「二人で納得している様ですけども、俺の契約精霊はテラ様なんですか?」

 

 「そうですよ。何か不満ですか?」

 

 「いいえ、そんな事はありません。ただ……」

 

 「ただ?」

 

 「俺には世界を巻き込んで変化させる力なんてありませんし、そのつもりもないですよ」

 

 「「あははは」」

 

 笑って誤魔化してるけど、俺にそんなつもりはないぞ。変化って簡単に言ってるけども、世界の事を何にも知らないんだぞ。何をどう変化させるって言うんだよ。それに、仮に力があったとしてもどうして世界を巻き込まないといけないんだよ。俺は楽しく旅が出来れば良いんだよ。ったく。


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