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いよいよです?

 「おじい様! いらっしゃいますか?」

 

 「おう、ここにいるぞ」

 

 奥から出てきたのは、言うまでもなくプロさんだ。グループの証を作ってもらおうと訪ねたんだ。でも、俺には不満がある。俺達が呼んだ時は怒りながら出てきたのに、どうしてデルだと笑顔で出てくるんだ? 何が違うんだ? デルだって叫んだのに……。

 

 

 

 「良かったな、安くなって」

 

 「はい、嬉しいです。それでも、高いですけどね」

 

 「まあ、良いではないか。折角おじい様もやる気になって下さったんだ。きっと、良い品になるに違いない」

 

 「そうだな。ところで、アロはさっきからどうして黙ってるんだ? 嬉しくないのか?」

 

 「そりゃ、少しでも安くなるのは良い事だと思う。思うけど、どうして俺達とデルとの対応に差があるんだ?」

 

 「「「は?」」」

 

 「思い出してみろよ、俺達が呼ぶと怒り出して出てくるのに、デルが呼んだら笑顔だぞ。何が違うって言うんだ!?」

 

 「「「はあああ」」」

 

 おいおい、俺何か間違った事言ったか? 目が点になったかと思えば、盛大に溜息だよ。それも三人共。いやいや、別に変な事言ってないよな? ナックだったら分かってくれると思うんだけど。

 

 「あのなあ、俺等とデルじゃあプロさんとの関係が違いすぎるだろうが」

 

 「そ、そうは言うけど、同じ客だぞ? それに、姿を見てないのに笑顔で出てきたんだぞ」

 

 「同じ客だとしてもだ。デルは小さい頃からプロさんと会っていたんだ。声くらいは覚えているだろうさ」

 

 「うー」

 

 「何だ、まだ納得出来ないか? アロだって家族だったら声くらいは覚えてるだろ」

 

 「まあ、そうだけどさ」

 

 「おじい様とは小さい頃からの仲だ。それに、おじい様は私達の事を家族の様に可愛がってくれている。そんな私が訪ねたんだぞ? 何もしてないのに怒られる訳がないだろうが」

 

 「まあ、そうか」

 

 何だか納得出来ないよなあ。俺達だって何もしてないのに、怒りながら出て来るんだぞ? やっぱり家族ってのがあるのかな。

 

 「(そりゃそうよ。それに、本当に怒ってる訳じゃないでしょう)」

 

 「(まあ、そうなんだけどね)」

 

 「まあ、良いや。グループ名の変更しに組合に行こうぜ」

 

 「……何だよ、コロッと変わっちゃって。まあ、良いけどさ」

 

 

 

 「やっぱり言われたな」

 

 「予想通り過ぎて笑っちまうな」

 

 「何か、その、すまん」

 

 何があったのか簡単に言うと、グループ名を変えるんだから、いっその事作り直してはどうかって。それで、もちろん頭はデルで。それはもう強く言われたよ。目が本気で、『お前達、それで良いよな』って言われている様だった。もちろん、そんなのは断った。断ったら更に強い口調できたので、見かねたデルが一言言って終わった。

 

 「そんな事は忘れて、早く精霊殿に行こうぜ」

 

 「そうですね」

 

 ここは気持ちを切り替えて、いかないとな。何せ、これから契約するんだからな。いや、出来るとは決まってないけど、何だか嬉しいな。これで二度目か。キューカの時は、質問というか記憶についての事を追及されただけだった。だから、どんな風に契約するのか、ある意味ではこれが初めてになるのかな。まさか、記憶の事を知ってるって事はないよな?

 

 

 

 「姉上、お久しぶりです」

 

 「あら? 父上達と町を回っているんじゃなかったの?」

 

 「私は冒険者になりましたから、コライで別れてきました」

 

 「そうなの。それで?」

 

 「今日は契約をしに来ました」

 

 「あら、そうなの。じゃあ審査をしないとね。こっちに来て頂戴」

 

 「あの、姉上?」

 

 「な~に?」

 

 「審査は以前、終わりましたが」

 

 「あら、そうだったかしら?」

 

 「はい、そうです。その時に食糧が足りないから食糧を集める事と金貨一枚を収める事を言われました」

 

 「そうだったかしら。おほほほほほ」

 

 「まさかとは思いますが、もう一度同じ事をやれと言うつもりだったんですか?」

 

 「そ、そんな事ある訳ないじゃないの」

 

 そうは言うけど、足早に部屋に行こうとしてるぞ。これは同じ事を頼もうとしてたな。いや、前は炊き出しだったけど、違う事を頼むつもりだったか? それとも、金貨の方か? どっちにしろ、俺達には組合と精霊官からの印章があるから、依頼は大丈夫だろう。金貨は確認の印章なんてなかったからなあ。最悪、もう一度か?

 

 

 「それで姉上、契約の手順はどうなっているんですか?」

 

 「簡単よ。精霊殿の奥に一人で行って、精霊長様に会うだけ」

 

 「それだけですか?」

 

 「それだけと言えばそれだけよ。何せ、契約出来るかどうかは精霊長様次第なんだから。私達は精霊長様に会う前に、どういう人物なのかを調べるだけ。それを精霊長様に伝える事はしないわ」

 

 「つまりは、依頼も金貨も契約出来る保証がないって事ですか?」

 

 「そうよ」

 

 そう言って、茶に口をつけた。まあ、契約出来るかどうかの判断は精霊長様ってのは分かる。分かるけど、その前にやってる依頼と金貨って。

 

 「では、金貨も無駄になる事もあるって事ですか?」

 

 「まあ、そうなりますね。ただ、今までに契約出来なかった人は少ないわね」

 

 「なるほど。それで、精霊長様に会って何をするんですか?」

 

 「それが決まりがないのよ。私の時は一言二言話して終わりだったけど、他は一日中話し込んでた人もいたわね。中には戦い方を見せたって人もいたわね」

 

 へー、戦い方ねえ。一人で行くのに、戦い方って。それで何をどう判断するんだ? まあ、一日話し込む位なら良いか。キューカの時もそうだったしな。

 

 「それで、今すぐにでも会えますか?」

 

 「今はすぐは無理ね。何しろ、契約したいって人は貴方達だけじゃないからね」

 

 「それではいつ頃だったら、大丈夫ですか?」

 

 「んー、何とも言えないわね。さっきも言ったけど、直ぐ終わる人もいれば、一日掛かっても終わらない人もいるの。だから、それまで炊き出しでもやらない?」

 

 「やりません」

 

 「あらま、即答。そんなに嫌なの?」

 

 「この前の式典は多分、異常だったんだと思います。ですけど、位階も上がらない報酬もなしだとやりませんね」

 

 「アロ、そんな事言わないで助けると思って、な?」

 

 「『な?』じゃねえよ。お前は冒険者になったんだぞ。だったら、報酬もなし位階も上がらない依頼なんて、やるだけ損しかないだろうが。前の時にあれだけ辛い思いをさせたのを忘れたのか?」

 

 「そ、そうかもしれん」

 

 「だったら……」

 

 「それでもだ。私は冒険者になった。だが、王族としてこの国の民の事を考えるのを止めるつもりはない。それに、父上からも王族である事を忘れるなと言われたばかりだ」

 

 そりゃ、お前は王族としてこの国の事を助けたいと思うだろう。だけど、俺達は? それに付き合わないと駄目なんだろ? 仲間だって事は知られているだろうし、一緒にいないと不思議に思われるだろう。

 

 「あのな、お前は簡単に言うけどさ。報酬なしの間はどうやって生活するんだ? 飯は? 宿は? いつ契約出来るかも分からないのに、金だけがなくなっていくぞ」

 

 「それは、王宮で過ごせば良いじゃないか」

 

 「『良いじゃないか』じゃねえよ。冒険者だって言っただろ? どうして冒険者が王宮で寝泊りするんだよ。それに、忘れてるだろうけど俺達の位階はⅠだ。狩りは出来ないぞ」

 

 「それは……久しぶりに帰ってきて生家で過ごすのは変ではないだろ? それに、位階に関してはまた特例って事で出来るだろ」

 

 「はああ、お前なあ」

 

 どうしてくれようか。何が何でもやりたいのかよ。ここで炊き出しに参加して、寝起きは王宮でってなると、更に目立つだろう。しかも、良い意味じゃなくて。王族だからってのもあるんだろうけど、これじゃあ冒険者としてやっていけるのか? それとも、この国だからか?

 

 「二人はどうだ?」

 

 「俺は嫌だな」

 

 「俺も……出来ればやりたくないですね」

 

 「ほらな?」

 

 「どうしてだ? 民の為になるのだぞ!?」

 

 「どうしてもこうしてもないだろ。俺達三人は、この国の民の事をそこまで考えられないんだよ。今での分かっただろ、デルだけだよ。それに、炊き出しが必要になるって事はシムさん達、国の責任が大きいだろ? それに俺達を巻き込むな。後な、俺達は稼ぐ必要があるんだぞ?」

 

 あー、言いたい事を言ってスッキリしたな。反対にデルは悔しそうだけどな。ルークはオロオロしてるな。やりたくないとは言ったけど、デルを困らせるのが目的じゃないからな。でも、金が必要な時に報酬なしではやれない。となると、黙っていてやらない方向に行けば良いと思ってるのかな。これが、この国だからこそって考えだったら良いんだけどな。

 

 「あははははは」

 

 え、何? 突然笑い出して。笑う様な事言ったか?

 

 「姉上、笑い事ではありません」

 

 「ごめんごめん。でもね、嬉しくって」

 

 「今の話を聞いてどうして嬉しい何て思えるんですか?」

 

 「あー、そうじゃないのよ。デルにこんなにも物を言えるなんて、良い仲間じゃないの。大事にしなさいよ」

 

 「分かってますよ」

 

 恥ずかしいのか、プイっと顔を逸らした。口を尖らせて。炊き出しには反対されて不満だけど、俺達の事は大事って思ってるって事かな。

 

 「分かったわ。今回はちゃんと報酬出すから、どう?」

 

 「俺達は位階Ⅰですけど、それでも?」

 

 「それでもよ」

 

 デルが凄い期待の眼差しを向けてきてる。見ないでも、分かる。何も言わないのは、俺に判断を任せてくれるって事だろう。でも、やりたいんだろうなあ。今回は報酬は出すって言ってるし。この国を出れば、こんな事も言わなくなるか。

 

 「はああああ。順番がきたらちゃんと教えて下さいよ」

 

 「それはもちろんよ」

 

 はあ、結局やるしかないのか。仕方ない、付き合うか。


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