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料理大会 総括

 「それでは結果を発表する! 兵士からの得票数が一番多かったのは、4021でエオン酒場!」

 

 「ありがとうございます!」

 

 「次に総合での得票数を発表する! 第三位は得票数3万507でハーブ食堂!」

 

 「きゃー!!」

 

 「第二位は得票数5万9008で食堂ミネー!」

 

 「うおっしゃー!」

 

 「そして第一位は、得票数11万6631で肉リアン!」

 

 「よっしゃー!」

 

 五日間の料理大会が終わり、中央広場にてシムさんから結果が発表された。嬉しさの余り、全員叫び出している。中には泣き出した人もいる。俺達が行った事があるのは、リアンさんの所だけだから、単純に嬉しい。知り合いが一番になるのは嬉しいものだ。この大会中は全部の料理を食べたけどね。それに何だか安心した様な顔になっている。まあ、分からなくもない。あんなに忙しそうだったから、終わって安心したんじゃないかな。一日が終わったら、抜け殻の様になってたから。

 それでも、一番になったのは凄いと思う。今回は全部タダにするって言ったから、こんなにも人が集まったんだと思う。だって、確かこの町の人口は12万って聞いた。それと同じ位ってのは凄いの一言に尽きる。ただ、全体的に量が少ないから、何度も食べる人が殆どだ。だから、単純に11万人がリアンさんに入れた訳じゃない。それでも凄いけどね。

 

 「それでは、記念の品を贈呈する」

 

 そう言って、次々に記念の品を渡していく。この料理大会は勝っても賞金は出ない。記念の品だけだ。その記念の品は、料理大会での成績を記した物になっている。それは店の内外で飾る用の二つだ。賞金は出なくても、それ以上の儲けが今後期待出来る。だから、今貰わなくても良いって訳だ。それに、勝てなくても良い宣伝にはなっただろうから、客は増えると思う。

 

 「リアンさんが勝ったな」

 

 「ああ。だけど、凄い得票じゃないか?」

 

 「だよな。この町の人口と同じ位だからな」

 

 「それだけ、この料理大会に人が集まったって訳か」

 

 「俺達もそうだったけど、一人で一票って訳じゃないからな。一人で何票あるか何て分からないからな」

 

 「それでも凄いですよ。今回参加した四十七の中の一番ですからね。これは凄い事になりますよ」

 

 「まあ、大会中も既に凄かったからな。行列が出来て当たり前で、しかも一人で幾つも注文するからな。あの味を忘れられない人達は、行ってみようってなるだろうな」

 

 「そうなんですよ。タダだから、金の心配をしないで済みますからね。そりゃ何回も同時に注文しますよ」

 

 「まさかここまでになるとは思わなかっただろうな、ラウンさんも」

 

 「それはそうだろ。ラウンさん達は結構大きな大会にする予定だったみたいだけど、ここまでは予想してなかっただろ。王様が来て、全部タダなんて宣言したら、予想なんて吹っ飛ぶぞ」

 

 リアンさん達が、シムさんから記念の品を受け取る様子を舞台の裏側から見ている。一応、シムさんの側仕えとなっているので近くにいるって訳だ。ここは少し段になっていて、遠くからでも見える様になっている。そこで話し込んでいるって訳だ。舞台にはシムさん以外にもユニさんやラウンさんもいる。まあ、ラウンさんはいるけど緊張してて、言葉を詰まったりしている。

 

 「うむ。アロから面白い事を思い付いたと聞かされた時は、何を起こすのか怖かった。だが、これを見ると父上に頼んで正解だったな」

 

 「だろ? 折角シムさんが来るんだから、それに合わせた方が良いだろうし。何より、ラウンさんよりも偉い人がいるんだから、その人に任せた方が盛り上がるだろ。何て言ったって王様なんだからな。それに、王様がいるのに無視する様な感じになっちゃうと、それはそれで変だろ?」

 

 「うむ。確かにな。父上がこうやって王都から離れるのは中々ないからな。式典みたいな事でもない限り国中を回ろうなんて考えなかっただろうし。良い機会だったんだろうな」

 

 「そうそう。それが偶然重なったって訳だよ。しかもこれってコライだけで終わらないと思うぞ」

 

 「どういう事だ?」

 

 「式典の最中は国中を回るって事で初めにコライに来た。その中には他の町の代官も一緒だ。そうなると、こんなにも盛り上がるならば、ウチの町でもやりたい! ってならないか?」

 

 「ううむ。それは確かになるかもしれん。だが、やりたいからと言って直ぐに出来る物でもないだろ?」

 

 「そうだ。だから、そこでラウンさん達、コライの役人が重要な役割になってくるんだ。自分達で最初から考えるよりも、既にやっていて成功と言っても良い結果が出てるんだ。そこから学んだほうが早くないか?」

 

 「なるほどな。確かにそれはそうだ。負けたくないと思う気持ちはあるだろうが、それに捕らわれていては失敗するかもしれない。だったら、コライの成功体験から学んで、更に良い物を考えた方が良いか」

 

 「だろ? 実行するまでに、どんな準備がいるのか、どうやって説明するのか等考えなくちゃいけない事はたくさんある。王都以外ではここがいちばん人口が多いだろ? だったら、予想人数もここを大幅に上回る事はないだろ」

 

 「ううむ。確かに私では何から手を付けたら良いのかさっぱりだ」

 

 「でもアローニさん凄いですね。そこまで考えてるとは」

 

 「だよな。良くも思い付くよな」

 

 「確かに。またしてもアロが思い付いたか。こういう事は、役人や王族である私が思い付かなければ駄目なんだがな。何だか自信がなくなるぞ」

 

 「おいおい。俺は最初から考えてた訳じゃないぞ、もちろん。シムさんが来る事が分かって、それがどんな風に見られるのかを考えたら出てきたって感じだな。それに、これだけを取って、国の為に仕事をしてると思われるのも何か嫌だな」

 

 この先の事を考え付いた俺の事を凄いだなんて流れになっているけど、凄くはないだろ。多分、最初にこの大会に係わったからじゃないかな。それにラウンさん達、役人達はこの先を予測出来てるんじゃないかな。近いうちにと言うか、既にラウンさんに接触してる人はいると思うけどな。国の仕事がどんな物があるのか分からないけど、こんな事をいつもいつもやってる訳じゃないだろ。中には目立たない仕事だってある筈だ。と言うよりも、そっちの方が大事だと思うけどな。

 

 あ、でも良い事思い付いたな。これは面白そうなんじゃないかな?

 

 「どうしたんだ? 急にニヤニヤして」

 

 「ん? いやー面白い事を思い付いちゃって」

 

 「またか!?」

 

 「何だか聞くのが怖いぞ」

 

 「デル様、俺もです」

 

 「何だよ、三人して。俺は面白い事って言っただけだぞ。怖い事を思い付いた訳じゃないぞ」

 

 三人共、反応は同じだ。驚きと呆れが混じっている。デルなんかは腕組みをして渋い顔になっている。俺が言う事はそんなに怖いのか? 思い付いた内容は怖い物からかけ離れてる物だぞ。まったく。

 

 「それで? 聞くのか?」

 

 「……まあ、一応聞いてみるか。聞いてみない事には判断出来ないからな」

 

 「聞きたいなら素直に言えよ。簡単な話だ。コライだけじゃなく、他の町でも料理大会が開かれる様になったら」

 

 「なったら?」

 

 「各町の代表者が王都で料理大会をするってのはどうだ?」

 

 「っ! そ、それは可能なのか?」

 

 「さあ。俺は思い付いただけだしな。それに、可能だとしてもいつになるか分からないぞ。やろうとすれば絶対に大きな物になるだろうから、準備はコライの比じゃないぞ」

 

 「ううむ。確かにな。コライでも準備してた食糧が足りなくなりそうだったからな。まあ、それは父上達が来て、全部タダだと宣言したからでもあるんだが」

 

 「そう。俺もそうだけど、ラウンさん達もシムさんが来る事は想定外だったんだよ。だから、そこは仕方がないと思うんだよ」

 

 「なるほどな。まあ、やるとしたら父上達にも話をしなければいけないな。今すぐどうこう出来る物でもないから、急ぐ必要はないが話だけはしておくか」

 

 「そうだな。まあ、話だけはしてもしても良いだろ。実現するかは別としてな」

 

 「どうして私に説明させようとしてるんだ?」

 

 「は?」

 

 「だから、どうして私に説明させようとしてるんだ?」

 

 「同じ事を二度も言うなよ」

 

 その言い方だと、俺にさせるつもりか? いやいや、幾らなんでもそれはないだろ。俺が今言った事をそのままシムさんに言えば解決じゃないか。

 

 「思い付いたのはアロだろ? だったら、アロが説明する方が早いと思うんだが違うか?」

 

 「違うかと言われてもなあ。今言った事をそのまま言えば済む話だろうが」

 

 「すまんな、忘れてしまった。だから、アロに頼む事にする」

 

 何コイツしれっと言ってんだ? 絶対に忘れてなんかないだろう。俺に説明させる事になんの意味があるんだ? 俺が説明したからって実現する方向で話が進むとは限らないし、俺が言ってもデルが言っても変わらないだろ。ん? それだと俺が説明する事に何ら不思議な事はない、のか?

 

 「あのさ、俺はこの国の生まれじゃないんだけどさ。王様にこんなに会うのって普通じゃないよな?」

 

 「ですね。普通は会う事なんて、一生のうちにはない人の方が多いと思いますよ」

 

 「だろ? だったら、俺が会って説明するのは変だろ」

 

 「そこは大丈夫だ」

 

 「何が大丈夫なんだよ」

 

 「父上の昔の仲間の子であるし、何よりも今は側仕えとして雇われているんだから、会うのは変でも何でもない」

 

 「そうきたか」

 

 「だから、諦めて父上達に説明してくれ」

 

 「……はああ、分かったよ。でも、本当に思い付きだから、計画とも呼べない穴だらけの物だぞ」

 

 「それでも構わんさ。それを実現するかどうか判断するのは父上達だ」

 

 「分かった分かった」

 

 「あの~、俺はその場にいなくても良いですよね?」

 

 「何言ってるんだ? 側仕えとして雇われているんだ、全員で会うに決まってるだろ」

 

 「ちょ、ちょっと、アローニさん!?」

 

 ルークが足元にしがみ付いて、縋りつく様な目付きで訴えてきた。だが、それは無視しよう。ふん。俺だけにこんな事を押し付けられるとは思わない事だな。


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