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地精霊

 「あー、何もしてないのに一気に疲れたな」

 

 「だな。まさか仲間にするだけで位階が下がるとは思わなかったぞ。二人入ったから、最初からだもんなあ。まあ、個人まで下がんなくて良かったけどな」

 

 「本当だよ。あれを知っていたら、先にⅣに上がってたよ。どうして言ってくれなかったんだ? デルもそうだけど、ルークとも試しで一緒に行動する事は伝えてあったんだ。その時にでも話してくれればなあ」

 

 「本当だぞ。またⅠの依頼をやらないといけないなんて、なあ」

 

 「何と言って良いのか、すまん」

 

 「本当にすいません」

 

 「いや、良いんだけどさ。二人の責任じゃないんだし。知らなかった俺達の責任だ。でもなあ……」

 

 「ああ、何だかまた騙された気分だぞ」

 

 「本当だよ。……あ、ところでさ気になった事があるんだけど」

 

 「ん? これ以上何かあるのか?」

 

 「うん。シムさんは護衛の指名依頼を出すって言ったよな? それってⅠに下がった俺達でも請けられるのか?」

 

 「「「……」」」

 

 組合から出て、噴水のある中央広場の椅子に腰掛けている。位階が下がると聞かされて、少しいや結構落ち込んだからここに座っているという訳だ。そこでふと疑問が沸いてきたから、三人に投げかけたんだけど……。こりゃ駄目だな。位階が下がる事しか頭になく、シムさんからの護衛依頼の事を思い出せなかった様だな。

 

 「どうする?」

 

 「どうするも何も……。まずはシムさんに相談じゃないか? でも、指名依頼なら位階に関係なく、請けられた様な気もするんだが。どうだ?」

 

 「んー、覚えてないな」

 

 「私は分からないな」

 

 「えっと確か、指名の場合は依頼内容を組合が判断して、位階に合うようなら冒険者に紹介って形だったと思います」

 

 「おお、良く覚えてるな。そんな事説明されたっけ?」

 

 「覚えてないな。指名が来る事なんて考えてなかったしな。コライで指名依頼を請けた事はあったけど、そこまで考えてなかったな」

 

 こりゃ真剣に考えないと駄目かな。冒険者になって旅をするのは良いとして、組合の仕組みとか国とかも知る必要が出てきたかな。上手く組合を利用しないと、損する事になりそうだ。なりそうだ、と言うよりもなったか。王都に来た時に紹介された宿が位階に合わない高い所だったからな。まあ、組合に言ってもなかっただろうけどね。でも、組合にもっと利用した方が良さそうだよな。その町の事を知っているだろうから、装備品とかの紹介もしてくれるだそうし。

 ヘラクさんからも確か言われたよな。ただ依頼をするだけじゃなくて、組合はもちろんの事、その国の特産等を知る事も重要だって。これからは、少しずつでも良いから知っていくか。

 

 「まあ、指名依頼の事は後日聞こうぜ。今は何となく行きづらいし。それに、指名が入るかもって言ってる様なもんだからな」

 

 「ああ、それはあるな。位階が下がる事を知らないで落ち込んだのに、今度は指名について聞きに行く。出来ないな。お前達は冒険者になる時に説明されなかったのかってな」

 

 「ですね。あれ? でも、グループに関しては俺は説明されませんでしたよ」

 

 「うむ。私も同じだな。まあ、私の時は皆がいたから分かっているだろうけどな」

 

 「もしかしたら、俺達の仲間になるとは本気で思ってなかったとか? それか、グループに入る時に説明するつもりだったとか?」

 

 「うむ。作る時か入る時にでも説明するつもりだったのだろう」

 

 「まあ、良いか終わった事は。それで、事後はどうする?」

 

 「どうするって、何もする事がないよな。今から依頼を請けるってのもなあ」

 

 「そうですね」

 

 「じゃあ、俺がやっておきたい事があるんだけど良いか?」

 

 「何だ?」

 

 「精霊との契約」

 

 「「「おお!!」」」

 

 何だ、その驚きは。もしかして忘れてたとかじゃないよな?

 

 「精霊と契約は良いけどさ、式典の最中だぞ。大丈夫なのか?」

 

 「さあ? それをデルに聞きたいんだけど。どうなんだ?」

 

 「式典の最中だからと言って、精霊殿が休止する事はない。中には式典の事を知らずに我が国を訪れる者もいる。何より、精霊殿は精霊との契約が主ではない。寧ろ、少数だ。怪我をしたら精霊殿に行くし、病気になれば精霊殿から精霊官が派遣される事もある」

 

 「なるほど。ん? 怪我をしたら自分で治せない? 全員が契約してる訳じゃないのか?」

 

 「うむ、違うな。精霊と契約すると言う事は、今までにない力を手に入れる。中には悪事に使ったりする者もいるだろう。だから、我が国ではまず精霊殿で契約しても良いか審査がある。その上で精霊長様に会って、更に判断を受ける事になる」

 

 「俺等の森だと全員が契約してたけどな。違うんだな」

 

 「うむ。全員を契約させれば、生活の上で便利にはなるだろう。だが、そうすると他国に余計な事を疑われかねん。そんなに契約者を増やすのは戦争をするつもりなのか、とな」

 

 「ふーん、何だか面倒な話だな」

 

 「面倒でも仕方なかろう。現に、王族である私だって契約していないんだぞ。それに、全員となると、遠い町に住んでいる者も一度は王都に来なければならなくなる。無事に着けば良いが、途中何があるか分からんからな。全員来いとはとてもじゃないが言えないんだ」

 

 「ふーん、契約した方が良いのにな。それで、冒険者は契約出来るのか?」

 

 「冒険者、か。確か数は少ないがいるはずだ」

 

 少ないけど、いる。うーん、これってどうなんだ? 来てみないと契約出来るかどうか分からないって。来て契約出来ないってなったら、大変どころの話じゃないぞ。

 

 「おい、俺等は大丈夫なのか? その審査ってヤツは」

 

 「んー、何とも言えんな。その審査の内容は知らされないんだ」

 

 「でも、数は少ないけどいる事はいるんですよね? だったら組合に聞けば分かるんじゃないですか?」

 

 「いや、それも無駄だろう。審査の内容はそれぞれ違うらしい。我が国では、国と精霊殿は別の組織として扱っている。だから、父上でも精霊殿に何か命令する事は出来ないし、精霊殿の関係者が政治に関係する事は出来ない、となっている」

 

 審査、審査か。その審査とやらにどれだけ掛かるか分からないと、コライに行けないぞ。いや、ずっといる必要はないのか?

 

 「ううむ、何だか難しい話だな。で、結論から言うと俺等は契約出来るのか?」

 

 「それは分からん。精霊殿に行ってみないと何とも私では判断出来ないな。しかし、精霊殿の長は姉だ」

 

 「おお! 何だよ、そういう話は早く言えよな。契約出来ないかと思って焦ったじゃないか」

 

 姉!? おいおい、そんな良い情報を何で早く言わなかったんだよ。これで安心だな。

 

 「(ちょっと、仲間になる条件として身分を持ち込まないって話じゃなかったっけ?)」

 

 「(そうだっけ?)」

 

 「(もう。都合の良い事を忘れようとするんだから)」

 

 「おい、幾ら姉だとは言え今の私は冒険者なんだぞ」

 

 「でも、デルのお姉さん何だろ? 何とかならないか?」

 

 「アロまで!? おい、仲間になる条件として、王族ではなく一人の冒険者として扱うって言わなかったか?」

 

 「それはそれ、これはこれ。もし王族って身分が使えるなら遠慮なく使う」

 

 「何と言う清々しいまでの言い様だ。だが、王族の身分や弟と言う関係を使ったとしても審査が通るとは断言出来ないぞ。それに、審査が通ったとしても、精霊長様には王族だとかは関係ないからな。契約出来ないかもしれんのだぞ」

 

 「まあ、それは仕方ないだろ。俺達が幾ら騒いだって精霊長様が納得しなければ、契約出来ないんだからな。ただ、その前段階の審査を簡単に出来たら良いなあってな」

 

 「弟だからと言って、審査を簡単にしてくれる保証はどこにもないんだぞ。それでも良いのか? 最悪、この関係を使ったから審査を通さない事だってあるんだぞ」

 

 「あ、それは困るな。出来れば契約したいんだけど、何とかならない? 程度に収めたいんだけど」

 

 「そんな難しい事を言うなよ。それだったら行けば分かる事だろ? こんな姑息な事を考えないで堂々と行こうじゃないか」

 

 「そうですよ。どんな審査があるか分かりませんが、最後は精霊長様の判断なんですから、堂々と行きましょうよ。もし王族って事を使って行ったら精霊長様から駄目って言われるかもしれないですし」

 

 「……はあ、そうだな。もし審査や契約が長く掛かるなら、コライへは行けないかもなって思ってたんだけど。少しでも悪い方向に行く可能性があるなら、やらない方が良いか。でも、王族としての身分が使えると分かったら遠慮なく使うからな」

 

 「そこはブレないんだな」

 

 「そりゃそうだ。使えるモノは何でも使うさ。それが俺達にとって良い結果が出るならな」

 

 「分かった。それも一応父上に相談しておく」

 

 中央広場から精霊殿に向けて歩き出した。キューカと契約した時は二日掛かったから、もしかしたらもっと掛かるかも。逆にナック達みたいにその日の内に終わるかも。こればっかりは俺達には分からないよな。審査でどれ位、精霊長様とどれ位掛かるのかさっぱりだ。俺達の都合を優先させる訳にはいかないからな。

 

 

 

 「あら、デルじゃないの。どうしたよ?」

 

 「姉上、別に遊びに来た訳じゃありませんからね。今日は契約出来るかどうか、審査を受けに来ました」

 

 「へー、契約ねえ」

 

 精霊殿に着いて入り口を入ったら、入ってきたのがデルだと気付いて直ぐに精霊官長様の所に案内された。デルが言ってたけど、休止はしてなかった。でも、冒険者らしき人達はいなかった。怪我をしてる人が運び込まれただけで、静かはものだった。

 で、精霊官長様の部屋に入ったら直ぐにデルに気付いて椅子を勧められた。対面に座って挨拶もそこそこに来た目的を告げたら、俺達をじーっと睨みつける様な視線で見てくる。初めて会って、こんなにも見詰められるとは。何だか、心の奥底まで見られている様なそんな気分にさせられる。

 名前はクセンさんと言って、デルの姉で二番目らしい。デルの姉だけあって、どことなく似ている。歳は……まあ、結構離れてると思う。思うってのは、デルが歳を言おうとしたら凄い笑顔で睨まれて口止めされたからだ。

 

 「ええ、良いわよ」

 

 何とあっさりと審査? が終わってしまった。これって弟って関係を使ってないよな? 勝手にここに通されただけだよな? 何か精霊長様に会うのが不安になってきたな。


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