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おわり~

算数修正 寿命100歳とした場合、享年35だと残りは75年 → 65年 (2018/2/7)

 目の前にはたくさんの空の酒缶が、転がっている。普段飲まないのにだ。会社での飲み会は付き合いで少しだし、晩酌をする事もない。しかし、今はたくさん飲んでいる。同僚などは、昨日は死ぬ程飲んだってよく口にするが、今まさしくその状態だ。気持ち悪いやら眠いやらで、欲求が定まらない。ああ、まだ意識がはっきりしてる。もっと飲まなきゃ。

 

 ゴクッ…ゴクッ……ゴクゴクッ……ゴ……

 

 あ~、全部飲んじゃった。それじゃあ、逝こうか。

 切っ掛けは仕事の失敗だけど、俺って幸せだよなぁ。だって、自分で最期を決められるんだから。あ、両親に迷惑かけちゃうな。ま、いっか。あの世で詫びれば。こんな時でも、両親の事、考えちゃうんだな。

 

 神様も輪廻も信じてるけど、しょう…め……つ………で………

 

 

 

 「汝、村下大輔。200年天界にて奉仕活動に従事せよ。」

 

 いきなりこんな事を言われて理解できるだろうか。いや、できやしない。皆、理解できた? ……誰に聞いてんだか。よし、状況を整理しよう。

 

 「次の者が列をなしている故、後の事は担当の者に聞くかよい」

 

 と言われてもなぁ、見えないし動けないし話せないじゃあ、どうしろってんだよ。てか、担当者って誰? どこに行けばいいの? ま、手足の感覚がないから動きたくても動けないんですけどね。

 ……放置ですか? 放置プレイですか、そーですか。あんまり好きじゃないんだけどなぁ。

 

 「……もう、気が済みましたか?」

 

 え? あ、はい。……じゃなくて! ここ、どこですか? てか、あなた誰ですか?

 

 「それを含めて今から説明します。宜しいですね?」

 

 はあ、お願いします。

 

 「まず、貴方は死んでいます。今の貴方は魂だけの状態です。貴方の世界にあるテレビ等で見る、人魂を思い浮かべて下さい、あれです。肉体がないのは、物質世界にて火葬が終わってないからです。意思疎通ができるのは、こちらの都合です。そしてここは、天界です。まあ、貴方の世界の概念ですと、天国、地獄、極楽浄土、エデン、常世の国、等色々呼ばれています。理解できましたか?」

 

 えっと、首を吊ったとこまでは、何となく覚えているような覚えていないような。

 

 「そうです、死んだので魂がこちらに送られてきたのです。火葬が済めば肉体もこちらに送られてきます。その後に、200年の奉仕活動に従事していただきます。宜しいですね?」

 

 あの、200年の奉仕活動とはどういう事でしょうか。自慢ではないですが、生まれてこの方、他人を傷つけたりまして殺したりしていないのですが。

 

 「はあ、皆さん同じ事を言うのですね。いいですか、生きるという事は他の生命を奪って延命しているだけに過ぎないのです。他人を殺していないと言いましたが、自分を殺しましたよね。他人を殺してはならないというのは、貴方の世界の決まり事であって、天界では違うのです。天界では他人よりも自分を殺した方が、罪は重いのですよ」

 

 それにしたって、200年は長いと思いますが。私は35歳で死にました。仮に100歳まで寿命があるとして、私が殺したのは残りの65年のはずです。どうして、200年なのでしょうか。

 

 「先程、生きるという事は他の生命を奪うと言いました。間接的に殺してはいますが、生きる為に食べた動植物は良いのです。問題は、殺す必要もないのに殺した動植物がいるということです」

 

 牛や豚はもちろんの事、犬や猫でさえも、快楽で殺したことはありません。どちらかというと、可愛がる方でしたよ。

 

 「はあ、皆さん同じ事を言うのですね。いいでしょ、思い出させてあげましょう。分別がつかない子供ならいざ知らず、蟻を見つけては意味なく踏みつけたり、蝶を捕まえては羽を千切り水に浮かべたりと、どこまでやったら死ぬか等を楽しんでやっていましたね。それに、花を摘んでは蜜を啜ったりもしましたね。貴方には他に甘味があるにも関わらずです。まだありますが、思い出しましたか? 動物は確かに直接殺してはいないでしょう。ですが、虫や植物は生命ではないのですか?」

 

 ……いや、同じ生命です。思い出しました、大人になって虫に忌避感があったので殺していないと思い込んでいたようです。確かに、子供の頃、その様な事をしていました。今、考えると残酷な事をしていたんですね。残酷だと認識していなく、遊びと思っていたから気軽に殺していたんですね。そして、そこから何も学んでいないと。はは、駄目ですね。それならば何故、200年の奉仕活動で済んでいるのでしょうか。たくさんの生命をいたずらに奪ったのに。

 

 「一つは、あらゆる生命は循環していると言う事です。もう一つは神は視ているという事です」

 

 それはどういう事でしょうか。

 

 「歩く時の癖なんでしょうね。成人してから、前方よりも地面を見て歩く事が多かったですね。その時に、踏むはずだった虫たちを避けていました。そして、鳩や野良猫に自分のご飯を分けてもいましたね。無意味に殺した生命は数多く、しかし救った生命も確かにあったのですよ」

 

 そんなの気まぐれで、偽善でしかないですよ。

 

 「それでもです。殺した生命と救った生命は別であり、なお且つ救った生命も次の日には息絶えているかも知れません。ですが、気まぐれであろうが、救った事実は変わらないのです」

 

 それがあったから200年で済んでいるんですか。では、救いもせず、たくさんの生命を殺した生命はどうなるのでしょうか。

 

 「それは、貴方が知る必要のない事です。貴方は他の事に気をとられる位に余裕なのですね。これから、どういった事に従事しなければいけないのか説明もしていないと言うのに」

 

 いや、ただ単なる好奇心の一つでして。決して余裕があるとかではないのですが。

 

 「それですか。まずは貴方が殺した生命の姿になって、黄泉の国にて一生を送ってもらいます。その後に、貴方が殺した方法で殺されてもらいます。もちろん、意識は貴方のままなので、餓死を選択する事はできません。弱者の痛みを知った後に、残りの時間は天界にて雑事に従事してもらいます。分かりましたか?」

 

 ……分かりたくありません。

 

 「分かりたくなくても、これは決定事項なので分かろうと分かるまいと関係ないんですけどね」

 

 思い出せる数でも嫌なのに、思い出せない生命や意図せずに殺した生命の数を思うと、うんざりします。折角、自殺して楽になれると思ったのに。死ぬ時に消滅を祈ったのに叶わないって事ですね。

 

 「はあ、自殺した方は同じ事を言うのですね。死んだら楽になれるって誰が言ったんですか。貴方の世界は科学が進んでいるんですよね、誰が死後の世界を証明したんですか。現世での罪を贖わないで楽になろうなんて甘い考えですね」

 

 はあ、分かりました。抵抗しても変わらないって事なんで受け入れます。

 

 「死ぬ体験は殺した順番にしてますので、まずは蟻からですね。旅に出ている間に現世で火葬も終わっているでしょうから、雑事には肉体がここに来る事になるでしょう」

 

 もう、諦めの境地なんでとっとと旅とやらに行かせてください。

 

 「ああ、そうそう。どの様に殺したか映像で見せてから、一生を送ってもらいます。だからって、回避しよと思っても無駄なので」

 

 もう、何も言う事が思い浮かばないですよ。

 

 「もう一つ、重要な事を伝え忘れていました」

 

 もう、何を言われても驚かないですよ。

 

 「私は奥山と言いまして、裁きの理由や旅たちの説明、雑事に従事する際の直接の上役です。先ほど、裁きを下した方は迦具土様です」

 

 ……今更!?

 

 「……では、始めます」

 

 さらっと、流したな。


拙いですが、初めて書きました。

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