表面上変わらなくても実は結構変わっている
ちょっと展開が遅くなりますかね?
朝食はいつもご飯とお味噌汁。優花は本当はパンがいいのだけれど、父親の主義で朝はいつも米のご飯。
優花はふと、父親の周りに何やら薄青い光、時折緑色に光るそれを見てとった。
周囲にそのような光を放つ者もなさそうだ。
ちらりとテレビを見てみる。変わり映えのしない朝のニュースだ。
「やはり、少々変わった事態になったようだな」
目の前で、はららの生首がにんまりと笑った。
思わず味噌汁を吹き出しそうになる。
そんな優花を気にせず器用に首だけで何度も頷いた。
「あれはお前に吸い込まれた。どうなる事かと様子を見に来たが、やはり面白いことになりそうだ」
どこまで野次馬だ、この男。
優花はプルプルと拳を震わせた。ぶん殴ってやりたいが、今そうすればテーブルの上の料理すべてをひっくり返してしまう。
はららが見えていない母親と義理の父親にすれば謎の奇行としか取られないだろう。
「どうかしたの」
謎の百面相を食事をしながらしている優花に今度こそいぶかしげな声をかける。
「なんでもない」
やや黄色い後光が母親からさしているのを見て優花は顔をしかめる。
「なんでもないって言う顔じゃないわよ」
そしてテレビを確認する。
アナウンサーは平板な声で天気予報を語っていた。
身支度を整え通学路を歩く。
人間の周りに様々な色が躍っているのが見える。
「いったいこれは何」
鏡を見ればそんなものは見えない。生身の人間、いや、先ほど見た野良ネコも、周囲が白く光っていたので生き物すべてに後光のようなものが見える。
「一種の霊視能力が備わったってこと?」
優花はそう結論つけた。見えているのはオーラというものなのではないだろうか。そう言うものが見える人間がいると聞いたことがある。
これがはららの言う面白いことなのだろうか。
でも、聞いたことがあるだけあって少ないが、そんな力の持ち主はそれなりにいるはずだ。なのに何故はららはここにいるのだろう。
鏡に映った像には何も出ていないので、自分がどんな光を発しているかはわからない。
優花は自分の両手をかざしてみた。
かすかに輪郭がぼやけているようだがはっきりと色を確認するまでには至らなかった。
学校内へと入れば様々な色で目がチカチカする。
人ごみに入れば目がハレーションを起こしそうだ。
はたして、元に戻るのだろうか。
切実な日常生活への不便に優花は思わず憂鬱になった。
「優花。どうしたの」
同級生が声をかけた。
ピンク色の光の向こう側からその顔だちを判別しなければならない。
優花は軽く眼を細めた。
「なんでもないわ、理津子」
そう言って優花は教室に向かう。




