やはりあれは食べておくべきだったろうか
どうやら、はららは真剣に優花のことを助けるつもりはなくこのまま観測を続けるつもりらしい。
定期的に食糧。最初にもらったあんパンを優花は葛藤とともに呑み込んだ。を届けるだけであとは何もしてこない。
それにたとえ賞味期限が切れていても、優花の理解の及ぶ範疇の食品で会ったことを優花は感謝していた。
今手にあるものに比べたら。
アラビア文字かインド文字か、微妙になぞなもじの記されたパッケージ、中の食材?は黄土色で、何なのか、パッケージを破る勇気が湧いて出ない。
先ほどの缶詰よりましだが。
缶切りのない状況で缶詰だけ渡されてどうしろというのかと、地面にたたきつけた。
それを考えればましなのだ。
しかし、植物系なのか動物系なのか。それすら判断できないパッケージを難しい顔で睨んでいる。
もう少し空腹が激しくなるまで待とうかと思っていた。
どのくらい時間がたったのだろうと思う。
空腹に耐えきれなくなった頃にはららがよこしてくる食糧。それくらいしか時間を計る目安はない。
「二日、経っていないかな」
食べ物を持ってきた回数を計算する。
量が多く太い髪はかなり短めにしていても頭が重くなる。
こうしていてもどうすればいいのかいいアイデアなど浮かばないし。
飛鳥時代の壁画に描かれているような格好の中年女性が急速に白茶けていった。
女は優花を見た、優花にゆっくりと手を伸ばそうとしていた。そして最初の子供のように微細な粉末に変わる。
以前見た子供と少し食われ方が違うような気がした。
ほんの一瞬、正気に戻ったような。
はららがいつの間にか来ていた。
「おかしいな」
訝しげに女のいた場所を見ている。
「こんな短時間で二人も食いつくされたのは初めて見た」
「それって?」
優花は怪訝そうにはららを見上げる。
「ものすごい勢いで餓えている。あっちにも」
一人の老人が粉末になるところだった。
「お前ではなく桃花源事態に異常が起きているということか?」
桃の花が急速に散っていくのが見えた。
あの桃の木が本体なんだろうかと優花は思った。
その時ワーンと響くような音に思わず顔をしかめる。釣鐘の中にいる時思いっきり衝かれたような音の響き方だ。
思わず耳を押さえる。そして気付く、この音は鼓膜を通してでなく頭蓋骨の内側に直接流しこまれているんだと。
たたらを踏んで倒れるのを何とか防ぐ。
そして、優花は意識だけの存在になる。