探している
本当は三人まとめて一話の予定でした。
高藤茉莉は何度も来たはずの家の前に立っていた。
何となく家は薄汚れている。
聞くとはなく聞いてしまったけれど、優花の母親はもうとうにこの家を出てしまったらしい。
何度も思い出してみる。あの日のことを。
最後の瞬間。あの瞬間だけは木下優花だったと高藤茉莉は確信している。
周囲に害を及ぼさないために最後の力を振り絞って、己を取り戻しどこかへ行ってしまった。
行った先でどうなったのかそれを知るすべはない。
優花が今どうしているのか、それとも存在しているのかさえ。
小さくため息をつく。
おそらく自分はそれを知る日は永遠にない。
そして、眉をしかめた。高藤茉莉は生まれて初めて、人間のことをおぞましいと思ったのだ。
優花の母親、身勝手な恨み事をたたきつけるその形相は、何一つ憑れていない、その人間単体であるにもかかわらずどんなあの時の彼女は悪霊よりも堕ちていた。
魔物に人生を狂わされたのは疑う余地もなく事実だけれど、それは彼女だけではなかった。誰よりも大きく狂わされたのは間違いなく優花だ。その優花に対し、ひとかけらの思いやりの言葉すらなかった。
半ば魔物と化しながら、それでも周りをかばおうとした優花。
今までの常識が崩れていくような気がした。
物思いに沈んでいるとふいにすれ違ったショートカットの少女。
ぎくりとして思わず声を上げる。
「優花?」
丸い目をきょとんとした風に瞬かせた少女は呟く。
「優花のお友達?」
似てはいるが別人だ。優花そっくりな顔で優花がしない表情を浮かべた少女は幽かに笑った。
「あたしは従姉、母に言われて様子を見に来たんだけど」
家の様子を見て眉をしかめる。
「ごめんなさい、詳しいことはわからないの」
そう言って再び歩いて行く。それを高藤茉莉はじっと見送っていた。
麻巳子は小さく息を吐いた。
「よもや、優花のお友達に遭遇するとは」
そしてなにもないはずの方向を見た。
「変な偶然だね、月無」
優花が行方不明になった、その知らせで麻巳子の家は大騒ぎになった。麻巳子も月無に泣きついたところ。月無は無言でテレビを指差した。
「麻巳子、おれはあれではないぞ」
テレビの中では青いダルマ型のロボットに眼鏡少年が泣きついていた。
それでも次元の境目、そこにいれば数か所を一度に見ることのできるポイントに連れて行ってもらい。優花の姿を探した。
「次元が荒れている」
月無が眉をひそめた。
「あまり長居はできないかもしれない」
そう言ったか言わないかの時には、麻巳子は月無に次元の境目から連れ出された。強大な力の持ち主が集団の部下を率いて通る。かかわると危ないといわれてしぶしぶ従った。
その時、小柄な少女のような姿をしたそれが長い髪を引いて視界の隅を通るのを見た。
青金編を読み返したところ、麻巳子さんをここでからませねばならないと思いだしたので、二人ずつにまとめました。
あと、散と月無の見分け方。
散の方が大きいです。あと体格もいい。そして、散の方が人形っぽい顔です。
月無は実は妖獣なので、少しけものっぽく口をあけると牙があります。




