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挟魔<HAZAMA>優花  作者: karon
結末に向けて
39/42

始まりと終わり

あけましておめでとうございます。

 女はいつの間にか一人になっていた。女は自らの胸を抱きしめた。

 そして胸の中心で何かを鷲づかみにした。

 その胸から半透明の燐光を放つ蛇のようなものが引きずり出された。

 それはのたくりながら腕の中で暴れる。

「ずっといたんだ」

 かつて胸の中に憑いていたもの。それは桃花源といわれるものに憑いていたがそれから優花に乗り換えた存在だった。

「こんなに簡単だったんだ」

 優花の姿をしたものはそれを再びその身にとりこんでいった。

 それはもともとの存在は寄生虫に近かったかもしれない。

 人ならざる存在に食い込みその存在を少しずつ食らっていく。喰われまいとあがく桃花源とそれとの争い、それが優花が最初に巻き込まれた原因だった。

 それはより強い力を求めて優花に移った。

 喰い屈される前に優花は無意識に身の奥に潜む力で対抗していた。

 喰らおうとする力を押さえ続けるために優花の力はより大きくなっていった。

 そして完全にその力を引き出したとき、優花はそれが歯の立つ相手ではなくなっていた。

 つかんまれたてから徐々に力が吸い上げられていくのをそれは感じていた。必死にもがくが、その手はびくともしない。

 女はその存在を食らっていた。その表情は無機質で何の感情もうかがい知ることはできない。

 徐々にそれの光が薄れ、半透明から水のように希薄になっていく。つかんだ掌が再び開いたとき、それは跡形もなく消えていた。

 女はその姿を少しずつ変えていく。

 肩にも届かなかった髪は長く伸び膝に届こうという長さになった。

 長い髪を後ろに払うと目をゆっくりと閉じる。

 高校の制服から、漆黒のぴったりと全身を覆う衣類に変わる。

 その顔はそのままに全くの別人に変貌していた。

 女はゆっくりと一度だけ振り返った。そこにはただ虚空しかない。

 闇をまとったその女は空間を切り裂いた。そしてあとに残るのも虚空だけだった。


 すべてがざわめいている。

 巨大な存在が出現しようとしている。

 はららは嵐のように揺らぐ次元の中たたずんでいた。

 黒い影が再び寄り集まろうとしている。玉響媛と呼ばれるものを最初に産みだした存在が、玉響媛がある限り守らせようと用意した者たち。

 玉響媛が最初に命を失いながら妄執の塊になってもそれはその命に従い続けた。

「玉響媛」

「玉響媛」

「玉響媛」

 呼ぶ声はただ木霊するだけ。

 次元の揺らぎは髪すらも揺らさないが、それでも巨大な歪みが生まれつつあった。

 そして最初に見えたのは顔だった。

 もう見慣れた丸い目の丸顔の少女の顔。だが、その顔は長い黒髪に覆われていた。

 額にかかるあたりで切りそろえられていたはずの前髪の隙間からのぞく丸い目が、はららを見た。

「どうする」

 それはとてもか細い声、吐息だけでささやくような。だが、はららは力の差を悟った。

 その長身を折り曲げて敗北を認める。

(はらら)

 女はその名を初めて正しく呼んだ。正しい名を呼ぶ、それは支配者となること。

「玉響媛」

 散は、そう言って首を垂れる。

「本当はもういないけどね」

 喰らいつくした女の名をまとい、優花はその場で黒い影を見渡す。

 使えるべき対象が入れ替わったことにも気付かず、名を呼び続ける。

「どうせお前など信じちゃいない」

 いずれ優花が力を弱めれば、あるいは散が力を強めれば再び同じことを繰り返すだろう。

「でもそれまではそこにおいで」

 そう言って、優花は小さく笑った。

 そしてすぐわきで跪く小さな影、沙依に手を伸ばす。

「じゃあ、行こうか」

 先に何があるかわからないけれど。

 優花は次元の隙間にその身を沈める。後に影たちと散と沙依が続いた。


散と書いてはららと読む、もともとチャンピオンに連載されていたマンガのキャラ名ですが、そのキャラはぬぼーっとした長身でも能面のような顔でも妖怪でもありません名前だけパクっただけです。

漫画のタイトルは内緒です。

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