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挟魔<HAZAMA>優花  作者: karon
新たな始まり
33/42

いつの間にか始まっていたこと

少し書き足しました。

 見たくなくとも、見極めねばならないのか、それとも見ないほうがいいのか、悩んだ末に訊いてみることにした。

 そのとき、クラスのほかの生徒が、なぜか全員咳化していたが、そんな些細なことにかまっていられないほど、優花は切羽詰まっていた。

 初対面で殺し合いを始めたといわれる二人が、向かい合って真剣に話し合っている。その光景が与えた衝撃だったが、二人ともそんなことは気にしていなかった。

「それは、難しい話だが」

 最終的に協力者になってしまった高藤茉莉は優花に自分の経験から参考になりそうな話を探してみた。

「この場合参考になるかわからないが」

 そう言って魔物の対処法について話し始めた。

「まず、一番いいのは気付かないことだ。存在すら気付かないと、かえってあちらも干渉する隙を得ることができないんだ」

「それは、もう手遅れなんじゃないかな」

 優花の言葉に高藤茉莉も頷く。

「まあ、一番簡単な対処法だが、まあ言われずとも無理だとは思っていた。次にこれはちょっと難しい」

 そう言って一拍置く。

「きっちり見極め正体を暴く」

「正体を暴く?」

「本性を気取られると、力を失うというパターンがある。パターンでそれに当てはまらない場合も多々あるが」

 そう言って眉根をもんだ。

「ほら、本当の名前を知られるとという昔話があるだろう。人間にしろ魔物にしろ死霊にしろ正体をはっきりと知られるということは弱点をつかまれるに等しいといわれている」

 何ともいいにくそうにそう説明する。

「あれを見極めるわけね」

 優花は思い出す、あのにまりと笑った口を。

 どこかあざけるようなその顔。

「あれは嘲笑だったと思う」 

 茉莉はポツンと呟いた。

「それって前に見たときのこと?」

「ん、顔はお前と同じだったが表情はまるっきり違っていた。何かをあれは嘲笑している」

「何かをって、誰を?」

 嘲笑の心当たりといえば、多分優花本人が一番心当たりがある。

「嘲笑っているんだね、あたしを」

 たぶん、少しずつあれはすり寄ってきていたのだ、優花が全く気付かないうちに。

「あまり思い詰めるなといっても無理だな」

「無理よ」

 二人は沈痛な面持ちでため息をついた。


 気落ちした顔で帰路につく。

 しばらく見ていなかったものを見てしまった。

 そこそこ風も吹いているのに、まったくなびかない長い髪。黒いずるずるしたものをまとって悪目立ちするはずなのに、まったく周囲の視線を浴びていない長身の影。

「あんた、何してたの?」

 そう問いかけてその無意味さに気づく。

 基本的この男の行動に意味や理由を考えても無意味だとすでに理解していた。

 はららは気のない顔で、優花を見返す。

「そろそろ時が至りそうだ」

 意味不明はいつものことだが今回は特に意味不明だ。

「始まりは、お前が思っているよりも過去にある」

 そう言って幽かに笑う。

「終わりは近い」

 その言葉が妙に縁起が悪く感じられた。


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