最初から考え直すべき?
その日から、さまざまな現象が家の中で起こり始めた。
それも決まって優花のいるときに限って起こる。
優花が学校に行っている時や、外出している時は起きない。
だが、いつの間にかものが壊れていたり、窓の外をありえない高さで人の頭が横切ったり、片づけたはずのものがなくなったり、といった様々なことが起きる。
そして、優花は自分の意志なのかそれとも外部の影響なのか判断がつかない状況にじれていた。
「というわけで協力して」
無理やり引きずられてきた高藤茉莉はしばらく悩むように優花の家を見ている。
優花はその視線が、肉眼だけでなく。霊視をも行っていると見抜いていた。
「何だかわからないけど、別のやつはいる?」
「なんか、壁の向こうでうじゃうじゃしてる?」
高藤茉莉の言葉もいまいちはっきりしない。
「うじゃうじゃって」
「自分で見たらどうだ?」
言われて言葉に詰まる。どうしてか優花は見ることができない。見ることを無意識に拒んでしまうのだ。
優花は力なく首を振る。
「自分の力が制御できなくなったのか?」
自分の力といわれて優花は首をかしげる。
この女の話では床は別のものにとりつかれて、妙な力が付いたはずだ。だとすれば今まで制御で来ていたことがおかしいのだ。
「ただ、あれはまったく別の意思で動いていることだけはわかる」
高藤茉莉はそう言って、目を細める。
「わからないけれど呼んでいる」
うぞうぞとうごめくそれは何かを求めるように騒いでいる。それが何か分からない。もしかしたら床の中に潜むあの女なのかもしれないけれど。
「そういえば、あれたちはどうした?」
それが、はららと沙依のことだと分かり優花は唇を尖らせた。
「はららは現れなくなった。沙依はなんだか怯えて寄り付きもしないわ」
はららの行動が読めないのはいつも通りのことだが、沙依の行動も不審だ。
頼りになると思ったアメノウズメノミコトとも連絡がつかず。頼れるのはこの茉莉だけという現実に優花はため息をつきたくなる。
「声は聞こえるか?」
耳鳴りのように聞こえていた声のことだろうか、優花はふいに思い出す。あの声が再び聞こえなくなってからこの怪現象が起こり始めたことを。
「あの時は私だけだったけれど、今は家族も参っているみたい」
優花がいるときだけ起きるといっても、優花が疑われているわけではない。
たとえば夕飯のとき、家族全員がそろっている時別の部屋でそれが起きるなど、優花には不可能だと納得せざるを得ない状況も多々あるからだ。
「あれは怯えて近寄りもしないか」
高藤茉莉は唇を捻じ曲げた。
「ならば、やはり別のものなのかな」
「そう願いたいけど」
沙依は優花に名を与えられてから優花に怯えることはほとんどなくなっていたはずだ。だから今怯えているということは優花の状況に第三者がかかわっているという何よりの証拠なのだが。
「妙な力がつきだしたときは、怯えていなかったのだろう?」
言われて優花は思考停止に陥る。
「あたしはいつから取り憑かれていたの?」
そもそも最初に桃花源に迷い込んだとき、それともその前?




