どんづまりにおちこんでしまった
今回は短めです。
眠れない食欲がわかない気力がない。
優花はぐったりと教室の机に突っ伏していた。
家だけでなくどこへいっても耳について離れない声。それに優花は神経をすり減らしていた。
ずっと聞こえるならいっそ慣れてしまえばいいのに、優花が、今まで置き続けている超常現象になんとなく適応してしまったように。
誰にも聞こえない声、幻聴で済ませてしまえばどれだけ楽か。
「なんの声だ、悲鳴のような」
高藤茉莉がぼそりと呟く。
ああ、こいつにも聞こえるんだ。一定の霊感があれば聞こえるんで、その一定の霊感持ちがこいつだけってことか。
優花は少しだけ顔をずらし半目で高藤茉莉を睨む。
「なんだ」
どうやら相当目つきが悪くなっているらしい。
高藤茉莉が思わずのけぞる。
そしてそんな二人を生暖かい目で見守る同級生達。
いがみ合った結果、わけのわからない友情でも芽生えたんだろうかとありもしない誤解を受けているとも知らず、二人はそのまま睨みあっていた。
困った時の神頼み。優花は考えた末に、アメノウズメノミコトのところに行こうとした。
近くまで行ったと思った。しかし何かにはじかれた。
おずおずと手をのばしてみる。
うっかり通電しているものに触れたようなしびれを腕に感じ腕を引っ込めた。
「通れない?」
自分の両手を見てみる。傷一つない。再び手をのばす。
今度は何かに叩きつけられたような衝撃を感じた。
「どういうこと?」
ゆっくりと、以前そこを通り抜けた時のことを思い出してみる。
「お前は魔物に近いが、まだなりきっていない、その人に近い部分が決壊をすり抜けさせた」
かつてアメノウズメノミコトはそう言った。
では、人の部分がなくなれば。
再び自分の手を見る。小刻みに震える生まれた時からずっとそばにあった自分の手。
この手はあのときとまったく変わっていないのに。
「もう手遅れ?なりきってしまった?」
くしゃと自分の髪をかきむしる。
「アメノウズメノミコト、聞こえる、聞こえるなら答えて、お願い」
優花は振り絞るように叫んだ。
両手に衝撃が走るのにもかまわず腕を何度もたたきつけた。
「お願い、答えて」
かすれた声で懇願しても答えはない。完全に感覚のなくなった腕をさすりながら呟く。
「これから、どうなるの?」
その疑問にこたえるものは誰もいない。




