第3話 デビュー
「モンスター戦はお預け」
それは広場で起きていた。
革製のライトアーマーに身を包んだ剣士風の男性PPCと、巫女服に身を包んだ女性PPC。
物凄い剣幕で男性PPCが怒鳴り散らしており、一方の女性PPCは平謝りに謝っている光景だった。
――あーあ、あの子も災難だよなー。
――よりにもよってあの“案山子”のTOHSHIROHじゃん。
と、野次を聴いている限り、女性PPCを助ける所か諦めモードといった所だ。
…良く目を凝らすと野次に混じっているであろう仲間らしきPPCが警備兵を出現させるための妨害工作をしているのが解る。
(おいおい…こりゃどう見ても違反者じゃない――!)
言い切る前に何を発見したのか、野次馬を掻き分け男性PPCと女性PPCの間に割り込んだ。
「んだてめぇは!」
「黙れ、クソ違反者が」
怒気を孕んだ口調で男性PPCに牙を剥き、威嚇する。
(全く…素人とはよく言った物だな)
ふつふつと腸で煮えくりかえる怒り。
静かにその矛先をTOHSHIROHに向け静かに睨みつけた。
「…悪ぃな」
後ろの女性PPCに向かって謝罪の言葉を呟く。
「けど、どうにも許せないんだよ――――同じ不遇ジョブとして」
「――――え…?」
「何をくっちゃべってんだ、KILLしてやろうか?」
「やれるもんなら、な」
『TOHSHIROHから決闘を申しこまれました。 受領しますか? Yes/No』
というウインドウが出て来たので、フィーネは迷わずYesのアイコンを選び、タップした。
「見上げた精神だな」
これにはTOHSHIROHも僥倖だったのか、ねっとりと纏わり付く様な猟奇の笑みを溢してした。
「ステークニードル・セット」
「何だそれは」
「ネチケットも守れん奴に教えてやる程、俺は優しくない」
変形させたシェル・バンカーを取り出し、インベントリに予めあった先の尖った鉄の棒をセットする。
(こんな形になっちまったが、俺の決闘デビューだ!)
『READY…』
『決闘開始』
「遅ぇ!」
腰に差した鞘から引き抜かれたTOHSHIROHの片手剣が、フィーネの胴体を的確に捉える。
そ れでもその場から動かない状態のフィーネに勝機を見出したのか、TOHSHIROHの口角が歪に上がる。
「死ね! 『瞬ぃ!』」
そして一閃。
――終わったな。
誰しもがそう思っていた。
助け出されたであろう女性PPCを除いた、この場に居るPPC達の誰もが、フィーネを……フィーネというPPCの存在に対して興味を取り払った。
――――が、それは脆くも崩れ去る事となった。
「な…にぃ!?」
TOHSHIROHを含めたPPC達の瞳に映し出されていたのは、消え逝く哀れなPPCの姿では無く、腕に装備された盾に付けられた鉄棒に攻撃を阻まれたTOHSHIROHの姿であった。
STの物語に沿って修正するの、難しい。