第11話 無茶苦茶な論理が武器に通用する時Ⅴ
「生産偏、ぱーとふぁいぶ」
「淡姉」
「お姉さんに何かな」
「取り敢えずその邪な感情が籠った声で話さないで」
「ナ、何ノ事カナー」
淡雪は小雪の容赦の無い台詞に目が泳ぐ。
「……何時もの事だから慣れたけどさ。 ま、今は良いけど…今夜用事があるからその前にフレンド登録するよ? 姉ちゃんのキャラデータを確認したいし」
「用事って…はっ、まさか私の他の女と!? 不謹慎よ!?」
「あのねー…ただ作った武器の検証のためにPT組んでついでにレベリングに行くだけだって」
「え…ああ『マイソロ』の話!?」
「とんだブラコンに育ってくれたもんだね。 母さんの娘とは思えないや」
「ちょっと、酷くない!?」
「酷くはない。 辛辣なだけだ」
「理不尽すぎる!?」
「ご馳走様。 んじゃ大学行ってくる」
未だにorzとなっている淡雪を余所に大学へと直行した。
「――――それでは講義を終ります」
二限までの朝の講義が終わり、食堂に向かっていた。
「おっと、危ない」
階段の曲がり角に差し掛かった辺りで、ぶつかりそうになってしまい、階段を踏み外して前のめりに倒れそうになる。
だが、ぶつかりそうになった男性に体を支えられたお陰か、怪我を負わずに済んだのは幸運と言えよう。
「有難うござ…て新見?」
「小雪か? お前もこの大学に入ってたんだな」
「そりゃま、ね」
「舞斗の奴はどうした?」
「相変わらずセクハラの嵐。 まぁ姉ちゃんよりはまだ良い部類だからしょっちゅう会ってる」
「あー…あのあの。 相変わらず小母さんの折檻受けてるってのに、懲りないな」
新見と呼ばれた男性は知り合いの様で、談笑しながら食堂へと向かう。
「というか、お前等付き合ってるのか?」
「んー、半分?」
「何故疑問形?」
「LOVEかLIKEかって聞かれたら、解らないんだよね。 他の人だと即LIKEなんだけど…そんな感情でしょっちゅう会ってたら正直どう応えていいか、気付いたら解らなくなってる」
「傍から見たら美男美女がいちゃついてるとしか言い様が無いからな」
「……うん」
新見の、その一言で黙ってしまう。
流石にこれはマズいと感じたのか、小雪の背中を軽く叩き頭を撫でた。
「兎に角、この話は止め。 何か楽しい話でもしようか…よっと」
小雪と新見は共にカバンから弁当箱を取り出すと、徐にそれを開いた。
「そういえば、小雪は『MYTHOROGY ONLINE』ってVRMMORPGを知ってるか?」
「『マイソロ』やってるけど?」
「マジか。 俺もやってる」
「進み具合はどんな感じだ?」
「遅い来るPK連中を蹴散らしてたら15を超えたね。 『銃術士』だからって嘗めて掛かって来るから、もうたまったモンじゃないって」
「そりゃ災難だったな」
「後は自分には扱えない武器を昨日作ったばかり」
「へぇ? 珍しいな」
「『銃術士』を作れる工房が今の所見付からないからね」
「そっか。 それと確認したいんだが、PC名を教えてくれないか? 俺今”ニケ”って名前でやってるんだが」
新見のその言葉に驚く。
「え…ニケ!? ……通りで聞き覚えのあるある声だと思ったら」
「ん? て事は”フィーネ”か!?」
「うん」
まさか身近な人間とフレンド登録をしていた等と思ってもみなかったらしく、これはこれで僥倖であった。
「お前が作ってくれた武器、楽しみだ」
「最高の素材で作ったから性能は保証するよ。 それと姉ちゃんがへばり付いて来ると思うから、無視して貰っても構わない」
「淡雪さんも?」
「寝ぼけてついうっかり…」
「FPS厨だから尚更だな」
今までになく、有意義な学生生活を送る事ができた小雪であった。
むむむ…小雪の思考はちょいBL寄りだけど、上手く表現できたか、解らない。
また何かありましたら削除&修正していきます。