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第9話 無茶苦茶な論理が武器に通用する時Ⅲ

「生産偏ダヨ! ぱーとつー」

 潜行開始ログインを済ませ、宿屋を後にしたフィーネは約束を果たすため『鍛冶工房タンレン』を訪れていた。

 工房内に入ると、幾人かPPCが来ていた。


 「親方、こんばんは」


 「おう、フィーネか」


 ガンテツの声で、近くに居た少年剣士と思われる男性PPCがフィーネに視線を向けるると嘲る様な笑みで嫌味を言い放った。


 「おいおい…お前の様なクソ『銃術士ガンナー』が居ていい場所じゃねぇぞ? さっさと帰れりやがれ」


 はははと厭味ったらしく蔑む。


 「バクト、貴様が出ていけ」


 「何でだよ?」


 「フィーネは俺が呼びだした。 それと口を慎め――――我々生産者を敵に回したくなければ、な」


 ガンテツはバクトと呼ばれたPPCに向かってぎろりと睨み付け、殺気を孕んだ視線を送り付けた。


 「な…だからどうだって…」


 殺気をぶつけられたバクトは一瞬たじろぐ。


 「『案山子スケアクロゥ』のTOHSHIROHの二の舞になりたいのかな?」


 フィーネがゲーム開始時に遭遇した悪質PPCの話題を振った。


 「フィーネは知っているのか、あの事件を?」


 ガンテツは【ファルシオン】に工房を構える工房長だ、無論その事件を知らない筈は無い。

 謎の『銃術士ガンナー』による悪質PPC撃退事件。


 「うん、当事者だもん。 それに同じ不遇ジョブの人に止めて欲しく無いもん」


 当事者。

 しかし、その口振りは…。


 「まさか、お前がその『銃術士ガンナー』か!?」


 バクトは信じられないと言った様な口調で、驚きの声を上げた。


 「そう、だと言ったら?」


 左腕に装備されている『シェル・バンカー』を変形させて、バンカー・ニードルと呼ばれる鉄針をセットする。

 

 「何だよそれ…」


 籠手型のそれに装着された鉄針それをちらつかせ、バクトの耳元でこっそりと囁いた。


 「引・き・継・ぎ」


 「――――!?」


 引き継ぎ。

 それはフィーネがβ経験者という事実に他ならない。

 テスターは総じて卓越した技術を利用している事が多い。

 しかもフィーネはこの『MYTHOLOGY ONLINE』においてクローズドからの古参『銃術士ガンナー』のトップソロプレイヤーだ。

 その時は『色物銃士のクロード』と呼ばれており、異端扱いされて見向きもされなかったのだが。

 更には『色物銃士の左腕に気を付けろ』なんて言葉が生まれている。

 しかし、先程から観察していると『シェル・シールド』の形状も認識できてない。

 その事から、このバクトというPPCは正式サービス版からの新規プレイヤーだという事が解る。

 

 「バクト君…だっけ? 冷やかしなら他所でやってくれない?」


 「くそ…後でKILLしてやるからな!!」


 「はいはい、戯言は夢の中だけにしといてね~」


 ばつが悪そうな表情で捨て台詞を吐きながら、工房から逃げる様に勢いよく走り去って行った。


 「お前らも見ていたなら何とか言ってやったらどうなんだ?」


 「いや、この子なら大丈夫かと思ってたからね~。 事件の一部始終見てた者としてはね。 あぁ、初めまして『色物銃士』さん。 僕はニケ、蛇腹剣を扱う『剣士フェンサー』です」


 「その二つ名、懐かしいね」


 「当時としては珍しい“銃士マスケティア”スタイルが特徴的でしたから」


 ニケと呼ばれた青年PPCは軽鎧の胸当てにレザーグローブと脛当てという機動力を最も重視したスタイルの軽剣士だ。

 しかも、その剣も変わっていて持ち手をすっぽり覆われており、その持ち手でさえもシャマハダルの様な柄の無い物だった。


 「理論としては、籠手剣パタに鞭要素を足した感じ…で良いのかな?」


 「そ。 まぁ、鞭のように振り回すのがメインで、剣技ソードアーツで鍔迫り合いは稀ですかね」


 フィーネは、ニケのそのプレイスタイルを面白いと感じ、自分でさえもまだ見ぬ新たな銃の構図に心を躍らせるのであった。


 「取り敢えず、僕は用事で来たから手っ取り早くフレンド登録しよっか」


 「良いんですかね?」


 「関係じゃNPC以外、ぼっち程辛い物は無いよ?」


 「あはは…それもそうか」


 と、ニケとフレンド登録したフィーネはガンテツに向き合った。


 「長引いてしまって済みません」


 「ああ、良いんだ。 人と人との繋がりを大切にするのは良い事だからな」


 「ありがとうございます」


 「じゃあ、俺の作業部屋に向かうぞ? 話はそれからだ」


 「解りました」


 フィーネはガンテツに導かれるままに、工房の奥、ガンテツのプライベート作業部屋へと案内された。


 「おう、遅かったじゃねぇかガンテツ。」


 作業部屋には既に誰かが来ていたらしく、スキンヘッドにタオルを巻いた、ガタイの良い男性NPCが居た。


 「済まねぇ、イッテツ兄貴」


 どうやら兄弟らしい。


 「ニテツの中兄とコテツの野郎はどうした?」


 「あいつ等、出張先で忙しいから無理なんだとよ。 だから代わりに俺が全て用意しといた」


 「そうか、そりゃ済まないな」


 「良いじゃねぇか。 自分に合った戦いをするためにわざわざハンドメイドした武器で戦いたいっつうのは、それこそロマンだと俺は思うぜ?」


 武器が無くては当然戦えないが、生半可な武器だと返って戦う事すらままならない。

 もし持っていたとしても自分に有った武具で無ければ意味も無い。

 それを解消するには専属の武器職人か、自前で作成するしかないのだ。

 フィーネには『銃』を作成してくれる専属職人が未だに一人も居ない状況なので後者に当たる。


 「ああ、紹介が遅れたがこの人は兄貴のイッテツだ。 種族は俺と同じ鬼の中でも稀有な一つ目巨鬼(キュプロクス)だ」


 一つ目巨鬼(キュプロクス)といえば、ギリシャ神話で有名な鍛冶神ヘファイストスに

仕える一つ目巨人を思い出す人が大多数だろう。

 そうでなくても日本の昔話には『鬼と刀鍛冶』というものがある。

 

 「フィーネです」


 軽く会釈をし、挨拶をする。


 「今日は兄貴ニテツを紹介したのは他でもない…今日打ったインゴットを見せてくれ」


 と、促されたのでインベントリから銅と鉄のインゴットを取り出して、ニテツにそれを渡す。


 「…不純物が無い。 相当鍛えられているな」


 「はい」


 「初心者用の携帯炉と鍛冶キットで此処まで出来るとは…」


 「どうだ、こいつの腕は」


 「流石、と言うしかないな」


 「フィーネ、今から俺達がお前の『鍛冶術』スキルを上げる。 でないと用意した『匠用携帯炉』よ『匠用鍛冶キット』が無駄になるからな」


 「といっても、【ファルシオン】近郊の素材だけじゃ駄目だ。 だから上級金属鉱を扱う俺が来た訳なんだが…徹っちゃんは平気か?」


 「――――はい、宜しくお願いします」

 

 このチャンスを逃せば次は無いと悟ったフィーネは、元気よく二つ返事で応えるのだった。

 

Skill  :『銃術』Lv15『格闘術』Lv10★『鍛冶神』Mster『千里眼』Lv20『調薬術』Lv10『細工術』Lv10『木工術』Lv1『伐採術』Lv1『魂撃(種族特性・控え移動不可)』Lv20


SesS   :『黄泉送り』 『錬金術』Lv1『合成術』Lv1『盾術』Lv10『潜入』Lv10


 Inv    :(追加)ブロンズインゴット×99・アイアンインゴット×99・ゴールドインゴット×99・シルバーインゴット×99・ゴールドインゴット×99・ダマスカスインゴット×99・アポイタカラインゴット×99・ミスリルインゴット×99・オリハルコンインゴット×99・プラチナインゴット×99

 

 「眠い…」


 あれから夜通しニテツ・ガンテツ兄弟に扱かれ、『鍛冶術』から最上位変換した『鍛冶神』をマスターしたフィーネ。


 (あそこまで鉱石系をインゴットに鍛えるとか…流石鍛冶に携わるNPCだ…)


 お陰で現実世界でも一睡する事は適わなかった。


 「取敢えず宿屋に行って『浮上開始ログアウト』しなきゃ…」


 眠気が一気に襲ったのか、先程から欠伸が止まらない。

 パラメーターを確認すると、


『睡眠不足:寝不足の状態。 全能力が半減する他、何をしようものなら必ず失敗してしまう』


 と、状態異常欄に出ていた。


 (ゲーム内でもリアル染みてるからなぁ…)


 宿屋で料金100Czクルツを払い、わき目も振らずににベッドに素早く潜り込む。


 (うー…ん)


 何かを思っているのだが、睡魔が思考の邪魔をし、何も進められない内に現実世界に意識を落としていった。

徹夜は辛い…。

それとインゴットでウーツ・ヒヒイロカネ・アダマンタイトをわざと書きませんでした。

理由として、ウーツはダマスカス、ヒヒイロカネはアポイタカラ、アダマンタイトはダイヤモンドと同一と謂われているからです。

と言いますでしょうか、アダマンタイトに関しては金属じゃない気がしますが……。


また何かありましたら削除&修正をしていきます。

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