炎歌サティスファクション
番外編のようなもの
「カラオケに行きたい!!??」
それはある日の目覚めだった。
どんな夢を見ていたのかは、残念ながら忘れてしまったが、なぜか今無性にカラオケに行きたくなった。
今日は月曜日。この前の土曜日に行われた参観日の代休。
休みであるにも関わらずレジャー施設には平日料金で入れる特別な日!
カラオケ行くなら今日しかない!
そう思ったあたしは、つい先日買ってもらったばかりの携帯電話を手に取った。数少ない連絡先リストから仲の良い友人をピックアップし、メールを送信する。
一斉送信! とりゃあ!
ふふふ……、一斉送信を覚えたあたしに敵はない!
とりあえずは仲のいい雀ちゃんと梓ちゃんを誘った。
あとはこのグループ的には……みなもちゃん!
しかし連絡先リストを見てもみなもちゃんの名前はない。当然だ。みなもちゃんは携帯電話を持っていないのだから。まったく時代遅れにも程があるよ! と、つい最近まで持っていなかった癖に調子にのってみる。
みなもちゃんとの連絡手段。みなもちゃんの家には固定電話があったはずだ。そして電話番号はクラスの連絡網に書いてある!
あたしの勝ちだ! 堪忍しな、みなもちゃん!!
『いやなのです』
「…………」
すぐに断られた。
「えー……なんでー…………」
『外が寒いからなのです。みなもは夏は能力で涼しくできるから嫌いじゃないけど、冬は能力を使ったって温かくならないのです。だから冬は嫌いなのです』
「そうかー……。あたしは逆に冬は能力で温かくできるけど、夏はねぇ……」
『そういう訳なので、みなもは家でゴロゴロ―――
「じゃあ11時に神璃駅前に集合ね! じゃ!」
『行くなんてひとことも言っ―――
無理矢理通話終了。
午前11時。
みなもちゃんは来た。
「そこまで言うならしょうがないのです。来てやったのです」
「そこまで言ってないけどね。んじゃ、カラオケ屋さんはここから歩いて5分くらいだから、いこっか。ちなみにちゃんとお金は持ってきた?」
「もちろんなのです。のど飴も」
「準備万端だね……。じゃあ行こう。雀ちゃんと梓ちゃんが待ってる」
カラオケ到着。
「フリータイムはドリンクバー付きで600円なのです」
「下調べ完璧だねみなもちゃん。店の名前教えたっけ?」
「神璃駅周辺のカラオケ屋さんの価格をすべて調べたのです。ぐーぐるはとても便利なのですっ」
「ノリノリだねー」
ボックスに入り、1曲目はみんなが知ってそうな曲を雀ちゃんが歌い上げた。
「みなもちゃん何か曲入れる?」
「カラオケは初めてなので最後でいいのです」
「そうなんだ」
その後あたしが演歌を歌い(炎歌だけに)、梓ちゃんはよく知らない歌を歌い、そしてみなもちゃんの順番が回ってきた。
画面上部に『シャイニーシャイニー☆プリンセス』という文字が表示された。
やはりアニソンか……。
「しゃいにぃーしゃいにープリンセぇスー♪」
下手だ……!
ずば抜けて下手だ……!
「おっ! みなもそれマシャイレ(魔法少女シャイニー☆レティの略称)だろ!! 懐かしい歌持ってくるねぃ!」
略称の無理矢理感……。人気なのか? これ。
その後も微妙にズレた4人はそれぞれジャンルの違う曲を歌った。
雀ちゃんはロックとアニソン、みなもちゃんはアニソン、梓ちゃんはよく分からない歌、そしてあたしは演歌(炎歌だけに)。
曲の方向性こそバラバラだが、それなりに盛り上がった。
お金も気力も有り余ったあたし達は、一緒に晩御飯を食べてからお開きとなった。
あたしは、それなりに充実した(休日だけに)月曜日を過ごせたのだった。おしまい。