決定!? 仕組まれた罠
ざっくりいって、劇は大成功に終わりました。
みなものおかげなのです、とは今回は言えませんです。
紅葉橋雀ちゃんの脚本と枕木炎歌ちゃんの演技力あっての大成功なのです。
他人を評価できるみなもは大人なのです。
「いやいや、みなもちゃんも名演技だったよ! 文句言いながらも練習には休まず来てくれたし、たまに差し入れとか持ってきてくれたし! 何だかんだで衣装まで作ってきてくれたし! おまけにモブの演技指導とかも自ら買って出たし! もうぶっちゃけ大道具作ったのとか8割方みなもちゃんだしね!!」
「そんなに褒めても何も出ないのです。みなもはただ暇だったからやっただけなのです。間違ってもみんなのためにやった訳じゃないのです」
「その割には結構色々やってるような……」
大したことじゃないのです。
「それでさみなもちゃん」
「です」
「実は今晩、文化祭の打ち上げに行こうと思ってるんだけど、どう?」
「打ち上げです?」
何を打ち上げるですか。
「いや花火大会的イベントじゃなくて……。無事終わったのでみんなでお祝いしよーってことだよ」
「はぁ……。みなもはいいのです」
「何か用事でも?」
「ないのです。でも、いいのです」
みなもはすでに大人なので、そういうイベントでは素直に盛り上がれないのです。
「どうせ暇でしょ? 行こうよー」
「そこまで言うならしょうがないのです」
「そこまで言ってないけどね」
やはりこいつらにも保護者は必要なのです。
しょうのない子供たちなのです。
「みなもちゃんオッケーだってみんな! どこに行くか決めよー! 今日は志乃森先生の奢りだよー!」
「ちょっ炎歌ちゃん……いつぼくが奢るって言ったんだ……」
「初恋の相手バラしますよ?」
「やめろ。なぜ知っている」
「そっかー奢りじゃないのかー残念です……。みんなー! 志乃森先生の――――」
「おっと偶然にも財布の中に30万円も。こんなに持ち歩くのは危険だなぁー!」
「――――だそうです」
学級崩壊なのです。
「みんな何食べに行く?」
「ファミレスとか?」
「男は黙って焼肉でい!」
「あんた女でしょ……」
「焼肉いいねー」
「わかめうどんなのです」
「そーいやうちの近所に新しいお寿司やさんできたんだー」
「お寿司もいいねー」
「無難にファミレスがいいんじゃない?」
「コンビニでよくない?」
「黙っててください先生」
「ふぁい……」
「わかめうどんが食べたい気分なのです」
「うーん……意見がまとまらないなー……じゃあ多数決で決めよっか」
クラス委員長である枕木炎歌ちゃんは黒板に候補をピックアップします。
“ファミレス”。
“焼肉”。
“お寿司”。
「他には何も無かったよねー」
「わかめうどんが足りないのです」
“わかめうどん”。
「あとコンビニも……」
“先生”。
「先生を食べる気か……!?」
炎歌ちゃんは渋々、“先生”と“わかめうどん”を消しました。どさくさに紛れてなに消してるですか。
多数決の結果、焼肉に決定しました。
「うえぇ……よりによって一番高いやつかぁ……」
「どんまいなのです」
先生を慰めるみなも。先生はみなもと同じ、被害者なのです。
そしてその日の晩―――――