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徒然みなもの非日常  作者: でぃあぼろ
序章:みなもデイズ
2/19

邂逅!? 引かれあう能力者

まさか当日に第2話を投稿するとは思いませんでした。

 あたしの名前は枕木まくらぎ 炎歌えんか

 紫鹿寺しろくじ中学校に通うごく普通の中学生だ。

 8月も後半に入り、いよいよ秋の文化祭も近くなってきた。1学期末に行われた多数決により、我がクラス2年E組は演劇をやる事が決定された。

 文化祭の演劇では多様される『ロミジュリ』や『走れメロス』では味気ないとのことで、オリジナル脚本でやるらしい。

 ちなみに脚本は、かつて『日本のシェイクスピア』と呼ばれたり呼ばれなかったりした紅葉橋もみじばし すずめちゃんに託された。

 さすがにみんなでやる劇の脚本を一人に任せるのはどうかという声もあり、あたしはそのサポートに回された。億劫だ。

 どうなることやら。


 夏休みは無情にも過ぎていき、とうとう8月に突入した。

 頑張った甲斐あって演劇の脚本はとうとう完成した。完成してしまった。

 けっこう出来がいい。

 ナイスだぜあたし。よくがんばったあたし。

 書いたのは雀ちゃんがほとんどだけど。

 「そろそろ一回みんなを集めて役を決めないとだねー」

 「おうよっ!」

 ちなみに今の江戸っ子っぽかったのが紅葉橋 雀ちゃんである。

 その前があたし。



 「えー、投票の結果。主人公“ギルド”役は炎歌ちゃんに決定しましたー」

 「……………………」

 絶句。

 「ええええええぇぇえぇえぇぇぇえええええええええええええええ!!??」

 主人公って男だろ!? なんで男子もいるのに、よりによって女のあたしが!?

 「だってー。炎歌ちゃんより美少年な男子ってこのクラスにはいないしねー」

 男子諸君はしょげていた。ていうかそれってあたしが男っぽいって事か!?

 「いや顔が整ってるって意味」

 何だよそれ……喜んでいいのか悪いのか。

 「声もがんばったら美少年ぽい声出せるでしょ?」

 「出せるけど……」

 「決まりだね」

 不服なのも事実だが投票によって決まったこともまた事実。

 あたしはやむなく、やむなく結果に甘んじた。

 「それでーえー、ヒロインの“スピカ”役は―――みなもちゃんに決定です」

 「「「おおぉ!」」」

 「……………………」

 「みなもちゃん?」

 「………………ぐー」

 ……寝てる!?


 2分かけてようやく起こし、事情を説明した。

 「です?」

 「だから、ヒロインの役に大抜擢されたんだよー」

 「誰がです?」

 「みなもちゃんが」

 「……………………」

 「?」

 「ええええええぇぇえぇえぇぇぇえええええええええええええええ!? です!!??」

 何だ今の申し訳程度の「です」は。

 今度は20分かけてみなもちゃんを説得し、みんなに台本を配ってその日はお開きとなった。




 × × × × × ×




 「いぃぃやっふゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウ!! 今日から練習!! 今日から練習ッ!! がんばるぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!」

 「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ(☝ ՞ਊ ՞)☝イェェアァアアアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 練習開始日。

 男子諸君は無駄に気合が入っていた。

 というか今のどうやったの!? どうやって声で顔文字を再現したの!!??

 「男装した炎歌さまが見られる男装した炎歌さまが見られる男装した炎歌さまが見られる男装した炎歌さまが見られる男装した炎歌さまが見られる男装した炎歌さまが見られる男装した炎歌さまが見られる男装した炎歌さまが見られる男装した炎歌さまが見られる男装した炎歌さまが見られる男装した炎」

 「炎歌様とみなもちゃんの百合……。ハァッ……ハァッ…………」

 女子も女子で盛り上がっていた。

 盛り上がり方が異様なのはあたしの気のせいなのだと信じたい。


 しかし、みんなのモチベーションが高いのには理由がある。

 それはあたしの持つ『特殊な能力』のせいだった。

 “炎使いの能力者”

 それがあたし。枕木炎歌なのだ。

 炎を使うのとみんなのやる気に何の関係があるのかって?

 これはあたしが意識的にやっているのではないのだが、どうやらあたしの能力がみんなの“情熱の炎”を燃やしてしまっているらしいのだ。

 あたしの情熱が周りの人間にも能力を干渉させているのだろうか。


 それに反して、一人だけ異様にモチベーションの低い者がいた。

 徒然みなもちゃんである。

 一人だけ教室の隅っこで小さくなっている。

 「みなもちゃんも、せめてジャージに着替えたら?」

 「あ? 制服このままでいいのです」

 「いやーそう言わずにさ……、こういうのは形からというか…………」

 「……ザコは黙っててほしいのです……」

 ん?

 「オイみなも……ぼそっと言っても聞こえてんぞ……」

 「聞こえるように言ったです」

 昔から、みなもちゃんと衝突することは多々あった。

 あたしはこう見えてやるとなったらとことんやるタイプなので、イベントごとになると無駄に熱くなってしまうのだ。

 もっとも、そのおかげでみんなの士気も高まり、大成功になるのだが。

 みなもちゃんはあたしの能力の煽りを受けてもやる気を出さないのだ。普段からどんだけやる気なく生きてるんだ……。

 「あぁん!? 誰がザコだって!?」

 「炎歌ちゃんなのです。何度も言わせないでくださいなのです……」

 「くっ……こいつぅ……」

 「暑苦しいので近寄らないでくださいなのです……」

 さすがのあたしもキレちまったぜ……。

 最悪の手段を使うしかないようだ。


 能力を使い強制的にやる気を出させる。


 卑怯だとは思うけれど、やむなし。

 ヒロインのモチベーションがこうだと、劇はうまくいかないだろう。

 食らえ――――――。

 「たぁ……!!」

 「……………………」

 「……………………」

 ん?

 あれ?

 「何やってるですか……」

 能力がきかないぃぃぃ!!??

 みなもちゃんは小首をかしげる。本当に何も分かってないかのように。


 もしかして……もしかして……。


 みなもちゃんも……何らかの能力を有している…………?

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