みなもチーム、始動
靴箱に、さっそく入っていたのです。
手紙が。
「あたしの方には何も入ってなかったよ?」
「宛先に『みなもチームへ』って書いてあるのです」
「また“先読み”か……」
「あ、開けるのです」
『みなもチーム結成おめでとうございます!
さっそくですが、徒然みなもさん、枕木炎歌さん。神の方から指令です。』
「きた……!」
「はいです」
そこから数行下に孤立した形で“指令”が書かれていた。
『一週間後のクラスマッチでQ組に勝利してください。』
「…………」
「…………それだけ?」
「はいです」
しょぼっ。
「いや、でもこのお題は以外と難しいよ……」
「たしかにです。勝敗は意思だけでは変えられないのです」
「Q組かぁ……。結構強敵だね」
「Q組がどうかしたのか?」
「いやね、今度のクラスマッチ、Q組に勝てなきゃ…………って雀ちゃん!? いつの間に!?」
「さっきだけど……」
みなもは急いで持っていた紙をバッグに仕舞ったのです。
「んで、勝てなきゃどーなんの?」
「えぇ……、えと……。そう! 次のクラスマッチでQ組に勝てなきゃ死ぬ病気にかかったんだよ!! ―――みなもちゃんが!!」
「!? ……そ、そうなのです……。まだ生きていたいのです……」
一生恨むのです。炎歌ちゃん。
「だ、大丈夫なのかみなも!?」
「大丈夫じゃないのです……」
主に精神的にっ。
「よぉし、そういうことなら一肌脱ぐぜい! 安心しなみなも!」
「わ、わぁい……。大安心なのです……」
信じちゃうんだ……。
「Q組かぁー……。Q組といやぁ、今年は留学生が来てるよなー。名前は忘れたけど、……エレなんちゃら、だったかな」
「留学生……」
留学生、Q組。なにか関係があるのです?
きーんこーんかーんこーん……。
思考を巡らせていると、始業5分前の予鈴が。
「とりあえず教室に行こうよ。みなもちゃん。雀ちゃん」
「おうよ!」
「…………」
「みなもちゃん?」
「あ、はいです」
クラスマッチは1週間後の金曜日。果たして、我々A組はQ組に勝利できるのでしょうか。
「みなもちゃーん。いくよー」
「ああ。はいなのです―――」
そう言って振り返るみなも。
――――その刹那、みなもの頬を撫でる黄金の髪。
「!?」
みなもは思わず振り返りその“黄金”の正体を確認したのです。
後ろ姿しか見えなかったですけど――――、後ろ姿で十分なほどの存在感。
紫鹿寺中学校は染髪厳禁。つまり、あの“黄金”は、本物の髪色―――。
「みなもちゃん? どーかしたの?」
「……なんでもないのです」
あれが留学生……。
みなもは悪い予感がしていたのです。
とてつもなく、悪い予感が。
吐き出すほどの、おぞましい予感が。
できれば予感は外れていてほしいな。と、とても思いましたです。