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第5話 初めてのミッション

全長30メートルはあろうポイズンサラマンダーが長い首を振るうと

前列で戦っていた冒険者達が軽々と吹っ飛んだ。


「おい! しっかりしろ!」


「ダメだ、すでに息がない……」


全身があらぬ方向へ折れ曲がり、血だらけになったソードファイターの遺体を

見てプリーストの男は落胆した。

ポイズンサラマンダーは容赦なく、後衛のプリーストとアーチャーに狙いを定める。


「させるかよッ! ダブルショット!」


【ケイツ Lv:13 クラス:アーチャー Cランク】


【ケイツ は ダブルショット を放った!】


二本連続で放たれた矢はトカゲの頭部に全弾命中した。

しかし刺さったかのように見えた矢は、怪物がふるふると頭を振った拍子に

ポロリと抜け落ちた。


【ポイズンサラマンダー に 11 のダメージを与えた!】

【ポイズンサラマンダー HP 1509/1520】


ポイズンサラマンダーはギロリとケイツを睨む。


「チィ! なんだよこのバケモン!」


「退くぞ! こっちの被害が尋常じゃない! このままじゃ全滅する!」


生き残ったケイツとプリーストの男は命からがらストレンジ平原から逃げ出した。

ポイズンサラマンダーは勝利の咆哮と言わんばかりに首を天にかかげて吠えた。


///


ボクとロエルは朝の喧騒の中、ギルドへと足早で向かった。

ギルドの中は昨日よりも人で満たされていた。


「緊急ミッションだ! ベアーフォレストに生息しているはずの

 ポイズンサラマンダーがストレンジ平原に迷い込んだ!

 討伐要員はBランク以上! 救急要員はC以下でも構わない!」


昨日のメガネをかけたギルドの人がけたたましく告知している。

ギルド内は大変な騒ぎになっていた。

普通、ベアーフォレストの凶暴な魔物が外に出てくる事はなくて

それがなぜかデンジャーレベル6のストレンジ平原に出現したらしい。


「ロエル、あれ受けよう!」


「で、でも討伐はダメだね。私達Dだし」


「なんでもいいから受けよう」


煮え切らないロエルの手を引いてボクは救急要員として志願した。

説明によると救急要員はストレンジ平原で負傷した冒険者達に薬を届けたり

保護するのが役目だ。

ただし、決してポイズンサラマンダーとは戦うなと何度も釘を刺された。

報酬は2000G。よし、やるぞ!


「ロエルのお下がりのこの短パン、すごく動きやすいね」


「昔ファイターを目指していた頃のなんだけど、無駄にならなくてよかった」


上はタンクトップの上に薄手のジャケット。

おかげでボロ雑巾みたいな格好から一気に冒険者らしい姿になれた。

下着もロエルからもらったし、これで変な目で見られる事もないだろう。

いや下着は関係ないか。

サイズもピッタリなところを見るとロエルはボクと同い年なんだろうか。

といってもボクには空白の10年があるから、本当の年齢がよくわからなくなったけど。


「さてさて、集まったな」


手をパンパンと叩いて喧騒を沈めるリーダー格のおじさん。

昨日、槍の人と揉めて出て行った人だった。


「偉そうですまないが、この場はこのガンテツが仕切らせてもらう!

 知らない奴は始めましてだな!」


【ガンテツ Lv:31 クラス:ウォーリア Aランク】


「ガンテツさん、Aランクの冒険者がいるのは心強い。

 でもあんたなら一人でやれるレベルだろう、これだけの人数が必要なのか?」


アーチャーのケイツが、この場にいる10人の冒険者を見渡しながら質問した。


「戦うのはオレとBランクのプリースト、エトラムさんだ。

 後は救護に当たってもらう」


「後衛で私がサポートすれば勝率は跳ね上がるだろう。

 ガンテツさんの実力を疑うわけじゃないが、念には念をってところだ」


【エトラム Lv:22 クラス:プリースト Bランク】


救護チームはボクとロエル含めて8人。

救出した人数で報酬が変わるわけじゃないから焦るなと何度も説明された。

ということは生きて帰るだけで2000Gもらえてしまうんだろうか。

ガンテツさんがポイズンサラマンダーをひきつけてるから、その間にボク達が

救出するという単純な流れだ。

ポイズンサラマンダー、どのくらい強いんだろうか。

気にはなるけど戦っちゃダメなんだっけ。


ボク達は町を出てストレンジ平原に向かった。

平原の入り口には小屋があって、そこで管理している人が出入りをチェックしていた。

小屋からは高い柵が伸びていて、簡単には超えられないようになっている。

ガンテツさんが引率するようにボク達は平原へと足を踏み入れた。


「広いねぇ」


ロエルが物珍しそうに、見渡す限り緑が広がる平原を眺めている。

所々にきり立った小高い丘があり、それが連なって時折細道を作っている。

平原と聞いて平らな草原をイメージしていたボクにとっては

その細道こそが曲者だと思った。

一度、そこへ魔物に追い詰められてしまえば周りは高い丘の崖のような壁。

死角にもなっていて誰もそのピンチに気づかない。

そんなところでポイズンサラマンダーに襲われたら一溜まりもないなと思った。

この位置からはポイズンサラマンダーは確認できない。

という事は、やっぱりそういった死角に潜んでいる可能性がある。


「オレが先行するから皆は距離をおいて着いてきてくれ。

 ポイズンサラマンダーを発見次第、オレが誘き寄せる」


ガンテツはノシノシと大またで歩き出す。

ボク達は10メートルほどその後ろをついて歩いていった。


「ロエルはさっき珍しそうに眺めていたけど、ここに来るのは初めてなの?」


「うん、デンジャーレベル6だからレベル2の私じゃ危ないなぁって思ったから」


「ケッ、なんだってこんなお遊戯会みたいなのとゴミ拾いしなきゃいけねーんだか」


そういって悪態をついたのは昨日、ガンテツと喧嘩した槍の人だった。


「昨日は酒で丸め込まれたが、今日こそはこのオード様の力を見せつけてやるぜ」


【オード Lv:3 クラス:ランサー ランク:D】


「ポイズンサラマンダーの弱点は氷……氷……氷……ブツブツ」


【トルッポ Lv:13 クラス:マジシャン ランク:C】


この人はなんだか怖いので距離を置いて歩こう。

さっきからずっと同じ事繰り返してる。


「おいっ! ガンテツさんの合図だ! ポイズンサラマンダーを発見したらしい!

 下がるぞ!」


ケイツが皆に小声で促す。

全員一斉に下がり、それぞれ負傷者の捜索に当たった。


ボク達が最初に発見した人は岩の影で息を荒げて血を流していた。

ロエルが回復魔法をかける。


「ありがとうな……」


「これじゃ応急処置にしかなってないよ。リュアちゃん、どうしよう?」


「この人を町まで送ればいいんだよね。

 ちょっとボクいってくる」


「えっ、えっ?」


戸惑いを見せるロエルを置いてボクは男の人を担いで町まで丘を跳び超えながら

走った。3分ほどで帰るとまだ呆気にとられたロエルがそこにいた。


「リュアちゃん?」


「あの人は無事に搬送されたよ。さて、次いこう」


納得できないロエルを尻目にボク達は次々と負傷者を発見する。

中にはすでに死体になってる人もいた。

頭蓋骨が粉砕され、脳みそが出ていた。

着ていた鎧も役目を果たせなかったようで、見事に胴体ごと砕かれている。


「う、うぇ……」


ロエルが両手で口を抑える。


「だ、大丈夫?」


ボクはロエルの背中をさすった。

涙目になりかけたロエルは、心配ないと首を縦に振る。


「そういえばこの辺りにいる魔物、見かけないね」


心配をかけまいとロエルは話題を変えた。


「多分、ポイズンサラマンダーにびびって逃げちゃったんだと思う」


ボクはそれしか考えられないと思った。

地下30階あたりで奥から魔物が次々とこちらに走って逃げてきた時があったけど

すぐに奥から首が4つもある巨大な犬が出てきた。

さすがにその時は勝てなくてボクも逃げたなぁ。


「場違いな魔物のせいでこの辺の生態系まで狂っちゃうんじゃ

 なんとしてでも退治したいよなぁ」


いつの間にか後ろにオードが立っていた。

次回 第6話 勇気と無茶

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