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第339話 激動の天地 その3

◆ アバンガルド国 上空 ◆


 真天使の位を持つ者は天界でも3人。長き天界の歴史を含めても3人。死天使ザンエル、時天使クロノエル。そして人間界侵攻を管理しているこの私、命天使セフィエル。天界の始祖とも敬われ、神とも唄われ、時には疎まれ。

 数千年もの間、天界で生き続けたこの私にとって人族など本来は思い起す類ではなかった。むしろ翼を持たぬ人族などという種族の存在すら疑う程だ。翼がなければ飛べぬではないか。石器を使い、暮らすか。健気なものだ。視界の端に入れ、すぐに逸らして忘れる。本当にその程度であった。


「どうした事だ。人間界は異界であったか」

「セフィエル様、どうやらここには我々の知る人族はおりませぬ」


 賢天使がすでに何人も倒れた。この人間界にて命を落とすなど、考えられない事だ。この大陸など瞬きの間に滅ぼし、ため息をつき終わった頃には人間界の全土が終わる。そうではなかったのか。


「カシラムという国を下しに向かった闘天使リキエルも力尽きた……なんだ、あれは。獣が人の真似事をしておる」

「莫迦な! リキエルの武となれば、いずれは聖天使にも届く! ルクエル! もっとよく視ぬか! そして見せよ!」


 側近である聖天使、眼天使ルクエルの視界は全方位だ。その全方位の視界を他に譲渡し、共有できる。ルクエルと私が見た惨劇の数々。一見、貧弱と思える田園の国では獣のような成りをした小娘が縦横無尽に暴れ、刃天使ジンエルを解体。続く伴侶の男が鱗天使リンエルを粉砕。どちらも将来を有望視された賢天使と子天使だ。

 解せぬのはあの不可解な鉄の人形。人族でないのならば何だ。あの人族の真似をして二足で可動する獣といい、あの巨大な人族も可笑しなものだ。人族と瓜二つでありながら、その剛腕は似ても似つかない。人間界で何が起こっている。


「お、恐ろしきは……3人もの聖天使を葬ったあの異形……」

「ルクエル、見せろ」

「あぁ、ああぁぁぁ! いけませぬ! 見てはいけませぬ!」

「聴こえぬか!」

「い、今、ザンエル様が……うあぁぁぁ! あ¨あ¨ああああぁぁぁ!」


 いかなる天界の事象をも見通したルクエルが、大口を開けて叫んでいる。その目を閉じている。両手でその目を覆っている。ルクエルが目を逸らすとなれば、私にも見えぬ。


「ザンエル様が……死……」


【アボロはビックバンナックルを放った! 眼天使ルクエルに745410のダメージを与えた! 眼天使ルクエルを倒した! HP 0/36400】


「貴様が大将か」


 ルクエルがどうした。弾け、消えた。どこへ行った。


「各地に散らばった貴様の手駒はあらかた片付けた。少しは骨のある奴がいるかと思ったが……まぁ仕方あるまい。残りカスは地上にいる者達でどうとでもなるだろう」


 巨体を誇るかのように、その個体は翼もなしに浮く。なるほど、ルクエルはこの個体によって終わったか。ならばその命、後に吹き返そうぞ。この個体に思い知らせた後に。


「大将の貴様ならば、震え隠れている教祖の行方を知っているはずだ。ルルド……いや、ゼダはどこだ。答えろ」

「無知極まり」


【命天使セフィエルが生命を生み出す!】


 脆弱な個体が進化を辿り、より強き生命となる必要はない。この命天使にかかれば、どのような生命とて造作のままだ。ここにいる個体が自らが最も優れていると主張するならば、教えてやらねばなるまい。


【界物”マゾク”が現れた! HP ??????】


「これは俺か」


 我が生命を上回る個体なし。あらゆる次元のそれぞれの生命体が到達しうる究極系を誕生させ、便宜上”界物”と命名した。進化や歴史など無意味である。眼前の傑物気取りも交配と進化を繰り返せば、幾億年のうちにこの界物となる。生命の始まりと終わりを知り、司るのがこの命天使セフィエルなのだから。


「下らんな……。天界のトップというからには期待したが……ぐぅッ?!」


【命天使セフィエルの運命の操作エディット!】


「その力自慢も、病で床に伏せば気づくだろう。己の五体のありがたみを」


 これより、この痴れ者から界物のような生命体の進化はない。何故なら運命は時として残酷なもの。時として、そう。その時すらセフィエルの手中にあるのだから。


「右腕が痺れるな……自由が利かん。自分よりも力量のない三下を戦力として従える無能は腐るほど見てきたが、なるほど。やはり天界のトップか」

「このセフィエルが、俗の域で止まるか。命と名付けば、それを司る。貴様の運命はすでに下されたのだ」

「あのザンエルとは格が違うようだな。このアボロにここまで褒めさせたのだ、少しは喜んでもいいぞ」

「ザンエルなどは真天使に成れたというだけの話。成る過程で己をも失った俗の物よ」


 捨て石ごときを片付けて悦に浸る類か。俗の中の俗、すなわち下の下。慢心とは罪よ、このような傑物気取りを生み出してしまうのだから。


「知れ。これが俗な次元で言う”勝つ”だ――――」


【アボロのメテオドライブブースト! 命天使セフィエルに632198のダメージを与えた! HP ?????/?????】


「ぉぐッ……!」


「運命、か」


 莫迦な、一瞬で我が命に届きかけただと。頭を揺さぶられ、意識が一瞬かき消えた実感がある。気分がよろしくない、不快感というものが全身を伝う。莫迦な。


「昔、生まれた時から身を挺してこの世界を救う事以外の生き方を許されなかった少女がいてな。それを救った少年がいたのだ」

「何をほざくかッ……!」

「知らなかったのか? 運命など、たった一人の少年によって変えられる程度のものだ」


「虚勢をッ!」


 虚勢を張っている事は疑いようもない。どう吠えようが、この傑物気取りの運命は私が下しているのだから。今にもその五体は動かなくなる。なのに何故だ。何故。


「気が変わった。貴様はもういい、ルルドの居場所はこちらで見当がついたからな」


 何故、笑える。


◆ 天界 天界人の集落 ◆


「滅びゆく生命に救いを……」


 大きいおじいさん、マディアスが両手を空中で泳がせる。その時にマディアスから発した薄い光は、見覚えがあった。彗狼旅団の団長、ヴァンダルシアの時だ。それだけじゃない、アレイドの時もこの声を聴いている。理から外れるとか何とか、今思えばあのマディアスの声だった。これで間違いない、すべての元凶があそこにいる。


「おぉ……! 奇跡が起きた!」

「今日も我々は救われたのだ!」

「マディアス様、ありがとうございます!」

「滅びゆくはずだった我々ですが、今しばらくは生きられます!」


 壊れた家の壁が直り、皆の着ている服が洗濯されたように新しくなった。当然だけど皆、喜んでいる。だけどそれもどこかわざとらしい。無理に万歳をして、はしゃいでいるように見える。おばあさんの様子といい、これは何かある。


「器を……」


「はい、こちらに」


 カウーラおばあさんが底の深い鍋をマディアスの前に差し出す。マディアスが空の鍋の上に手をかざし、そのまま空中で撫でまわした。ここからじゃそこまでしか見えないけど、何が起こってるのかは大体わかる。鍋からは湯気が出て、そこに何かの食べ物が出来たんだ。


「ひもじい我らに食料を!」

「マディアス様によって、これで衣食住が助けられたぞ!」

「素晴らしい!」


 どんな食べ物かはわからない。嗅いだ事がない匂いだけど、食欲がわいてくるからおいしいんだろうな。クリンカのお腹が限界にきていて、ボクの肩を掴む手が震えていた。確かにお腹が空いたし、このままあのマディアスと戦うとなるとちょっと心細いかも。


「世界は救われた」


 マディアスは満足そうに遠くを見ていた。皆のことなんて初めから見ていない。どれだけ皆がお礼を言っても、マディアスは喜びもしない。思えば初めからおかしかった。マディアスが来る前までは家もボロボロだったし、それを直そうともしない。ボロボロの服も、なんだかわざと破ったように思える。


「世界は安泰……」


 マディアスの表情が変わった。何かを見つめている。喜んでみせていた皆の顔色も変わり、その視線の先に何があるかを探す。


「あっ……!」


 誰かがそれを見つける。皆も状況を察した途端、まるで悪戯が見つかったみたいな雰囲気になった。いや、悪戯じゃない。だってそこには単に干してある肉がずらりと並んでいるだけだったから。なんでマディアスも皆もそれを見ているのか。今いち、わからなかった。


「こ、これが本当に最後の食糧だったんです! これがなくなれば、我々は滅びるところだったのです!」


「繁栄の兆し……世界にとって……」


 マディアスがブツブツ言って考え込む。初めて人間らしい仕草をしたと思ったら、カッと見開いた。右手を家に向け、その瞬間吹き飛んだ。衝撃波なのかもわからない、マディアスがやった事なのは確かだ。瓦礫もほとんど残さずに、壊されたというよりは消された。


「お静まり下さい! マディアス様!」

「我らが世界にとって、何か害をもたらしましたか! 今一度、お考え直し下さい!」

「私達だって生きているのです!」


 途端に皆が本音を叫ぶ。ここでよくわかった。やっぱり皆、マディアスが怖くて仕方なかったんだ。


「マディアス様、我々の言葉が届きませんか。あなたとて元々は……ぐふッッ!」


 カウーラおばあさんの言葉も空しく、消されはしなかったものの派手に吹っ飛ばされる。後ろにある家を壊して貫いて、ようやく止まった。よろけながらもおばあさんは立ち、マディアスを睨む。マディアスがそんなおばあさんに向ける視線が冷たい。何の感情も籠ってない目、興味のなさそうなものを見る感じだ。


「種の繁栄は後の障害……」


「やめろッ!」


 このままじゃ皆、殺される。マディアスが次に何かをする前に、ボクは階段のところから家の外に飛び出す。

 ついにこうやって向かい合う、調停神マディアス。近くで見ると本当に大きい。あのザンエルほどじゃないけど、この高さでよく見つからなかったなと思った。そしてそれ以上の違和感、まるで感情が感じられない。どんな相手にしてもヴァンダルシアなら冷酷、アボロなら心の奥底から噴き出すマグマみたいな激情、ブランバムみたいな止められない怒りというのが必ず現れる。こいつは比べるならメタリカ国の機械だ。命がそこになくて、ひたすら無機質。あれみたいに誰かに作られたような雰囲気さえある。


「ボクのこと、知ってるよね。アレイドやヴァンダルシアに力を与えて、ボクを倒そうとしたんだもの」

「……理に反する者」

「私もいるよ!」

「理に反する者達……」

「まず一つ、この人達に手を出すならボク達が相手になる」


 戦わないで済むならそうしたい。ハッキリ言ってダメ元だ。だけど話が通じた相手なんてほとんどいなかった。マディアスのボク達を見る目はあの人達に対するそれと違っている。少なくとも、ボク達だとわかると、瞼を動かしてようやく怒っていると感じさせた。


「存在してはならない種……」

「世界を維持させる為ならさ、他に方法あるでしょ。そんなにすごい力があるならさ」

「ある……?」

「うん? あるよ?」

「ない……!」


【調停神マディアスが現れた! HP ?????】


 ついにその表情で怒っていると確信した。白い髭が舞い、ローブが強風でたなびいて。その力を見せつけるようにして、家を吹き飛ばす。さすがにこんな奴相手から皆を守り切れる自信がない。だけどカウーラおばあさんは何故かボク達を信じているかのように、飛ばされた皆に素早く指示を出している。


「奇跡の力でさ……ボク達も殺すの?!」


【リュアはソニックスピアを放った! 調停神マディアスに7520654のダメージを与えた! HP ?????/?????】


「……!!!!!」


 あの大きなヘビを倒した時と同じ、全力の一撃だ。遠慮はいらない、消し飛ばす。すぐにその体ごと消えてなくなるかと思った。実際、あのヘビみたいに消し飛びかけて、最後にはほとんど残らないはずだった。だけどすぐに姿を取り戻し、元の状態に戻る。手ごたえは確実にあった。再生しているのとも違う。すごく奇妙な感覚だ。


「滅びの……申し子ッ!」


【調停神マディアスの手から衝撃波が放たれる! リュアはダメージを受けない!】


「わたっ……!」


 痛くはないけど、ものすごい勢いで吹っ飛ばされる。さっきおばあさんにやったのと同じ攻撃だ。思ったより大した事はないけど、攻撃の正体が掴めない。何かのスキルなのか魔法なのか、何故かって今のはかわせなかったから。まるでボクがどこに逃げようとも、ボクそのものだけを吹っ飛ばすかのような攻撃だ。


【調停神マディアスは右手をクリンカに向ける! クリンカを凍てつく冷気が襲う!】


「つ、冷た……い……」

「クリンカ!」


 クリンカが突然、動きを止めたと思ったら手足やローブを覆うように氷が侵食する。これもかわしようがない攻撃だ。本当にどうなっているんだろう。クリンカだって何もしてないわけじゃない、炎で抵抗することだって出来るはず。それが通用していないんだ。


「と、溶かせない……! だったら!」


【クリンカはドラゴンへと姿を変えた!】


 ドラゴンになった途端、クリンカを覆っていた氷が割れて砕け散る。ブレスを吐き散らしながら、体を温めているみたいだ。

 クリンカすらも凍らせる攻撃、ボクでも防げない衝撃。これも奇跡の力なんだろうか。なんだか違和感がボクの中で膨らみ続ける。マディアスがボク達を殺すつもりなら、どうしてもっとすごい攻撃をしてこないんだろう。災害を起こして世界を滅ぼせる力があるのに。

 ここでブランバムがホログラフで言っていた言葉を思い出す。メタリカを襲った災害には間隔があって、長い時と短い時がある。不安定、これがマディアスの力について真っ先に思いついた感想だ。何かの制限があるのか、それとも。何にしてもチャンスだ、本気でないならここで決着をつける。


「ここで終わらせてやるっ!」


【リュアはディザルトスピアを放った!】


 ボクの”破壊”の力を乗せた一撃。ヴァンダルシアだろうが神だろうが、破壊してやる。見えない破壊、放たれた時には終わっている。ボクがそう認識しかできないほどの技。その通りで、実際すでに終わっていた。マディアスを抜けて、その奥にある地形まで綺麗さっぱりくり抜かれるようにして消えている。破壊の痕跡というよりも、そういう形に誰かが作ったような。そのくらい整った跡だった。


【調停神マディアスを破壊した! HP ―】


 よほどの相手じゃないと使わないと決めたのは、この技があまりにも遠慮がなさすぎるから。ボクの予想だけど、これは殺したとかそんな話じゃなくて完全に何もかも破壊したんだと思う。アンデッドにもゴーストにもならない、魂や肉体すらも破壊。使いこなせるようになった今だから言える、マディアスじゃないけど”破壊”はこの世にあっちゃいけないのかもしれない。


「や、やった……リュアちゃん。倒したんだよね?」

「うん、もういないね。スキルで逃げたとかそんな感じじゃないし」

「は、はぁ……一時はどうなるかと思ったけど……」


 人間に戻ったクリンカがヘナヘナとその場に座り込む。クリンカも心のどこかでボクの破壊を怖がっているのかな。神様だろうと避けられない、防げない。何だろうと、まさに破壊という結果しか残さない。もしボクがこの力を持っていなくて、誰かが使っていたとしたらやっぱり怖いと思う。


「クリンカの再生と違って……本当に壊す事しか出来ないんだなぁ」

「それで救えるものがあるんだよ。ここの人達だって」

「あ……」


「……すまない。手間をかけさせてしまったな」


 カウーラおばあさんが避難していた皆と一緒に戻ってきた。あのマディアスを倒したというのに、やけに冷静だ。他の皆も、どこか申し訳なさそうにして顔を背けたり苦い顔をしている。


「あの、マディアス……倒しちゃったみたいで」


 ボクも自分で何を言ってるんだろうと思ってる。初めからそうするつもりだったのに、何故か謝った。だけどおばあさんに怒ってる様子がない。それどころか冷静にボク達を見据える。


「やはり初めて見た時の勘は当たっていたようだ。草土海を抜けてきただけでなく、ダクリュウを倒したというのもこれで真実味を帯びたな」


 ボクを信じなかった、あの天界人は諦めたように俯いている。誰も何も言わない、驚いているのか怖がっているのか。おばあさんは何かを決意したかのように話し出す。


「ワシらの村はわざと半壊させておる。でなければ、あのマディアス様に滅ぼされてしまうからだ。種の繁栄……それが世界の崩壊につながるとマディアス様は考えておるのだから」

「食べ物がある……つまり生き残ってしまう。だからマディアスはあの干し肉にさえ怒ったんですね」

「うむ。天界はどこもかしもそのような状態だ。限界の状態で生きておれば、マディアス様は施しを与えて下さる。滅びゆく種もまた、マディアス様にとって世界なのだから」

「ちょ、ちょっとわかんないんだけど……。助けたり滅ぼしたり、マディアスって何がしたかったのさ」


「壊れておる」


 ブランバムがしきりに叫んでいた事だった。マディアスはとっくに壊れている、天界人のカウーラおばあさんの口からそれが出たという事は当たっていたんだ。


「世界の維持、平和……。マディアス様にとって、それは宿命なのだろう。いや、大昔に課せられた宿命を背負っておられる」

「課せられたって……。そもそもカウーラさんは何故そこまで知っているんですか?」

「ワシは元聖天使で、大昔は真天使様と共にマディアス様に仕えておった。未来を語り合った仲間の多くはダクリュウ討伐で失ってしまったがな……」

「元聖天使……」


 ボクの勘は当たっていたみたい。あの重力地帯を物ともしていなかったし、マディアスに吹っ飛ばされた時もほとんどダメージを受けていなかった。そもそもなんであんなところにいたんだろう。まるでボク達を迎えにきたように待ち構えてた、そんな気がする。


「助けられた手前ではあるが、何のもてなしも出来ん。せめて食事と……真天使様のところへ案内するくらいだな」

「食事?! いいんですか?」

「あぁ、マディアス様が用意された食事はすべてひっくり返ってしまったからな。寝苦しいだろうが今日のところは泊まっていきなさい。出来る限りもてなそう」

「クリンカ……それより重要な事を言ってくれてるんだけど……。カウーラさん、真天使というのも気になるけどマディアスは倒したし……」

「倒せておらんよ。あれは恐らく仮の姿だろう」


 クリンカはぎょっとしているけど、ボクはそんなに驚かなかった。どうも違和感だらけだったし、あのおじいさんの姿も作り物っぽい。最初にソニックスピアを当てた時も、仮の姿を作り直したみたいに思えたから。


「じゃあ……本物のマディアスは……」


「三大真天使の一人……時天使クロノエル様のところだ。その気があれば、明日にでもワシが案内しよう」


  時天使クロノエル、その後の説明によれば天界で最も力を持つ人らしい。人間界侵攻もその人がかかわっている以上、会わないわけにはいかない。うまくいけば人間界侵攻をやめてくれるかもしれない。


「ただし万が一、話がこじれた場合は絶対に逆らうな。時を司る……お前さんほどの者ならば、それがどれほど理不尽な力かわかるだろう」

「うん……でもマディアスはそのクロノエル様よりも強いんだよね?」

「うむ。だが勝機があるとすればマディアス様だな……それに恐らくクロノエル様も望んでいる事だろう」

「ど、どういう事? 全然話がわからない」

「きっと喜んでお会いになられるだろう……今の天界はもはや限界だからな」


 ボクが真剣に聞いている中、クリンカだけが話半分で着実に用意されつつある食事から目を離さなかった。天界もクリンカのお腹も限界だ。今日は休んだほうがよさそう。


◆ シンレポート ◆


はぁー そうかんたんには おわらない

あれが ほんものじゃないのは しんにも わかっていた

だいたい ほんものが こんな さびれたばしょに

つごうよく わざわざ でむくはずが ない


いままで かずしれずの ばけものどうしの こうそうに

まきこまれたですが こんどこそ しぬかもしれない

おもえば なぜ こうなったのか

まおうさまの ごめいれいで こいつらの かんしを はじめたのが

そもそもの はじまり

みつかったのは かしらむ あのときは ころされるかと おもったですが

あまいやつらで たすかったです

それから まおうさまと わかいして こいつらの たびの きろくを

あんなこと そんなこと


あれ なんだか めから しるが

まだです まだまだ しんは げんえきなのです

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