第250話 暴虐なる不可侵の王 その14
◆ アバンガルド王都 グレアの館 3階の部屋 ◆
柔らかくて赤い絨毯が敷き詰められた館の一室、私達3人を押し込めるには広すぎる部屋だった。2人寝ても余るくらい大きなベッド、目が痛くなる豪華なシャンデリア。邪貴族になっても、こういうところは人間臭いなと呑気な感想を抱く。
「クリンカねーちゃん、オレ達どうなっちゃうんだ?」
「そうよ! せっかく生き返ったのに何なのアイツ! 上から下までファッションセンスがゼロ、寒い男よね!」
魔法を使えるラーシュ君が不安になっているのに、ルトナちゃんはブランダークへの悪口で忙しい。用があるのは私だけと言ったはずなのにこの2人まで連れてこられた理由は単純だった。脱出するにもお荷物がいたほうが大変じゃんと、たったそれだけの理由。ラーシュ君の幻術は敵に回すと厄介だし手助けにしかならないと思ったけど、あいつくらいの実力があればそんなの関係ないのかな。あいつ、だって。なんだかリュアちゃんみたい。
「ハストのじーちゃん、無事かな……」
「バレないように回復魔法をかけておいたからきっと無事だよ」
「バレてたら?」
「そうだとしても、すでに死んでると決め付けてるから何をやろうと無駄だと思ってるよ。そうでなくても、口笛なんか吹いていたし余裕なのかもね」
「とことんバカにしやがって……」
絨毯の上で地団駄を踏むラーシュ君を他所に、私はブランダークの言葉を思い出していた。それによると、私はこれから第一邪皇子アルシストのお嫁さんになるらしい。アルシストは邪貴族一の自信家、というより自己中心的で都合の悪い事は全部聴こえない。こっちが何を言おうと無駄だと念を押された。
しかも実力はブランダークよりも上らしくて、唯一頭の上がらない相手が腹違いのその兄だと自嘲気味に語る。要するに自分にさえ勝てないなら、尚更抵抗なんて無駄だと言いたいんだ。
「うーん、どうしよう? 脱出するにしてもまず大前提として邪貴族に見つからない事。休憩できたおかげでいくらか魔力も戻ってきたけど、まだ万全じゃない。たとえ万全でも私達じゃ勝ち目は薄いし……。となるとラーシュ君の幻術が頼りになるんだよね」
「でもあの激寒野郎には効かなかったしなぁ……」
「だからチャンスを伺うの。ね、アルシスト達には素直に従うフリをしていて。まずはそうやって油断を誘うしかない」
今の私の中に、リュアちゃんがいてくれたらなんて考えはない。助けにきてほしいとも願っていない。私達は背中を合わせてお互いを信じて戦うと決めた。リュアちゃんの背中を守るのに、助けを求めていたらお話にならない。
そんな事をぼんやりと考えていたら、ドアが開いた。一瞬、身構えるけどここはあくまで自然体でやりすごさないと。動揺すれば相手の思うツボだ。
「やぁ、久しぶり。クリンカ」
アルシストでもブランダークでもない、意外な訪問者は不敵に笑っていた。彼を見るのは魔王城以来だ、漆黒のローブを身に纏ったネクロマンサー・ジュオ。病人のような顔つき、死霊のような顔つきの男の子。なんで彼がここにいるのか、考えるまでもない。
「こ、こいつが邪貴族か?!」
「違うよ、ラーシュ君。彼は元魔王軍十二将魔の一人、ネクロマンサーのジュオ。今はヴァンダルシア軍についているみたいだね」
「丁寧な紹介、ありがたいなぁ。やっぱり僕の事が気になって仕方なかったんだね」
「気持ち悪い事言わないで。私は」
「リュアちゃん一筋、新婚だからって? 結婚式、見てたよ。君の晴れ姿で思わず興奮しちゃった、あの純白で彩られたシルクのウェディングドレスに擦り付けたくなっちゃったんだ」
ベロベロと何度も舌なめずりをして、唇を汚しているジュオにはさすがのルトナちゃんも絶句するしかない。あまりの気持ち悪さと異質さが理解できずに無意識にラーシュ君の後ろにしがみついている。
あの結婚式のどこに彼がいたのかはわからない。ウィザードキングダムへの船旅中にも、私達にまったく気づかれないで潜入していたくらいだ。誰かに化けるのはお手の物だろうし、彼の恐ろしいところはこういうところ。戦いそのものよりも、誰かの影に隠れながらもこうして生き延びてきた狡猾さ。今ここで倒してしまうべき。そう決意して杖を握り締め、てない。
「つ、杖がない……」
「アッハッハッ、いくら邪貴族がパッパラパーでも、そんな物騒なものを持たせておくわけないじゃん。クリンカちゃんはドジだなぁ。そういうところもかわいいんだけど、最近はあのリュアと一緒にいるうちにすっかり生意気になっちゃったよねぇ」
「ヴァンダルシアを復活させたのもあなたでしょ! 私につきまとってそんな事までして、何がしたいの!」
「僕が復活させたってよくわかったね、どうやらクリンカちゃんの僕への評価は高いようだ。やったー」
こうして話しているだけで不快感が募ってくる。わざとらしく無邪気に振舞っている様子が本当にイライラさせられた。よくわかったも何も、リュアちゃんがヴァンダルシアを倒したのは間違いない。死んだヴァンダルシアを甦らせられるのは彼だけ。本当に考えるまでもない。
「答えて」
「リュアと離婚して僕と結婚してくれたら教えてあげるよ。ベッドの中でたっぷりとね」
「死んでも嫌」
「ネクロマンサー相手に『死んでも嫌』だなんて、気の利いたプロポーズだね」
「答えてって言ってるでしょッ!」
「大体さぁ、女の子同士で結婚とか馬鹿じゃないの? よく周りも認めたよね、両親も頭おかしいのかな? それとも自分達に苦労させたのはお前達だと言わんばかりに、弱味につけこんじゃった? 親不孝だなぁ、クリンカちゃんは。でもね、そんなひどい子でも僕は君を愛するよ、だって君は」
「くせぇ口閉じやがれッ!」
私よりも先にラーシュ君が動いた。詠唱の時間もほぼなく、即放たれた特大の火の玉はジュオに防御の隙を与える事なく直撃する。細いジュオの体を焼き尽くすまでもなく、その速度だけで十分だった。千切れた残りの体の一部は焼かれ、残ったのはパチパチと焼ける死体だけだ。
「な、なんだ? 思ったより弱いな……」
「違う! 今のは偽物だよ!」
「ご名答。ちなみにこれも偽物ね」
また部屋に入ってきたジュオ。そう、今のは自分の姿を幻のように重ねた死体だ。闘技大会で姿を現した時も、これでリュアちゃんの一撃を防いで逃げた。今の発言からして、あれも死体。どこまでも卑劣な奴。こうやって死者を冒涜するのがネクロマンサーだ、あらゆる場所から追放されたのも頷ける。
「怖い怖い、そこのボウヤが思ったより強くておしっこ漏らしちゃったよ」
「きったねー!」
「冗談に決まってるだろ、アホ」
「な、なんなのよコイツ!」
おどけて馬鹿にしているのも今のうち、ルトナちゃんも恐がってるしさっさと退場してもらおう。といってもこれも偽物なら今ここにいるのは元になっている死体。だったら。
「僕の魔法"デッドコピー"はね、死体が僕の姿になって思い通りに動いてくれるんだ。だからこうやって腕を折ろうが首を折ろうが痛くない。ちなみにこの死体は邪貴族の手下に殺された奴だよ。死んだんだし何しようが自由だよね。腐りかけだし簡単に折れるよ、コレ」
自分で自分の腕を折ろうとするところで、我慢の限界だった。今までもアンデッド系の魔物は倒しているし、今更死体を傷つけるのは許せないなんて言うつもりはない。だけどジュオは死体だけじゃなく、死者を弄んでいる。
ジュオも予想してない速さで私はその腕を掴む。これも偽物だって言うなら、嫌でも本物に出てきてもらうしかない。
「なんだい、こんなに近づいてくれるなんてうれしいなぁ。キスでもする?」
せめて死体を浄化させる。死んでも、こんな奴に好き勝手に弄ばれているような状況はやっぱり許せない。
「アハハ、クリンカちゃんの手。ヤワラカイナァ?」
ジュオの腕はゾッとするくらい冷たかった。だけど違う、これは死体じゃない。間違いなく実体、ジュオそのものだ。さっき偽物を出しておいて、次もそうかと思わせるための「これも偽者」というあの発言。やられたと思った時には遅かった。
手から感覚がなくなりかけてきて、次に肌全体が黒ずんでくる。腐っているのかよくわからないけど、自分の体じゃなくなっていくこの不快感。
「ク、クリンカねーちゃん!」
「アッハッハッ! アハハハッ! ヒヒヒッ! はい、捕まえた! なんでここで接近してきちゃうかなぁ? もしかして死体がかわいそうとでも思った? ま、計算の一つだったけどね! クリンカちゃんならこうするかなぁってさぁ! だって、ずっと、見ていたんだよ? ミテイタンダヨ?」
急いで回復魔法で自分の腕を再生させる。なくなった感覚が戻りつつも、完全にジュオに抱きつかれた私は今度こそ全体が謎の侵食を受けるハメになる。
「な、なに、これ……」
「僕の体はね、実験体の中でも出来損ないなんだ。他の十二将魔みたいに完成化も出来ない。散々いじくり回される過程でいろんな病魔に蝕まれてね。何度も死にかけたさ。でも死ねなかった、中途半端に適合した魔物の細胞のおかげでなんとか生き長らえている最中なんだよ」
力が抜けていく中でも、私はジュオの両脇を掴んで何とか引き剥がした。再生のおかげで出た力だ、普通の人だったらとっくに死んでいる。今の症状の正体はおぼろげだけどジュオの説明で何となくわかった。
「僕に触れた人間は同じように冒される。だから誰もね、僕に触ってくれないんだ。愛せるのは死体だけ、死体だけが僕の恋人さ」
ケラケラと狂ったように笑うジュオにルトナちゃんとラーシュは完全に固まっている。話の内容だけでも常軌を逸しているのにあの狂気じみた仕草。そのせいで2人には別の異質な世界の住人にすら見えていると思う。
「クリンカちゃんの再生の力があればさ、僕に触れるよね? だからクリンカちゃんは本当はリュアなんかじゃなくて僕と結婚するべきなんだ。僕という人間を助けられるんだよ? 人助け、好きだよね?」
「誰があなたなんか助けるもんですか!」
「そうだよね、だから仕方ないんだよ。僕をこんな体にしたヴァンダルシア一味は嫌いだし、満足な体で笑いながら暮らしてる奴も嫌いだ。僕が手に入れられなかったものを持ってる奴も嫌いだ。それこそ災厄を復活させてメチャクチャにしてやりたい。そしてね、その復活したヴァンダルシアはリュアに倒されるんだ。ざまぁみろだよね、リュアは嫌いだけどあのヴァンダルシアが殺されるところを見られるなら十分な利用価値有りさ。ヒヒ、ヒヒヒッ」
言ってる事の一つ一つが狂ってる。支離滅裂、何もかもだ。魔王軍は実験体にされて、その力を克服する過程で人の心を失ったけどこいつは別。きっと最初から人の心なんてなかったとさえ思える。
「幼稚……」
「なんだって?」
「お、おいルトナ……」
「あなた、幼稚よ。自分の思い通りにいかないから壊すって、それ幼児のやる事よ。近所に住んでいたマルカさんの子供がね。まだ3歳くらいなんだけど積み木がすっごいヘタクソですぐ癇癪起こしてバラバラにしちゃうの。あなたってそんな子供がそのまま大人になった人みたい」
いつもすわっていたジュオの瞼が開いた。目の前にいるのは10歳くらいの女の子だ、そんな子供にお説経をされた経験なんて普通はない。自分の中でどう整理をつけていいのかわからないのが見てとれた。
「パパとママに甘やかされて温室で育ったガキが好き放題言ってくれるね……!」
「もう2人ともいないわ! しかもあたしなんか一度死んでるんだからね!」
「ジュオ! お前の相手はオレだ!」
怒りに火がついたジュオがルトナちゃんに攻撃する前に、ラーシュ君が盾になる。その途端に安堵して胸を撫で下ろすルトナちゃんの仕草を私は見逃さなかった。
「ルトナの言う通りだ! お前の勝手でオレ達が積み重ねてきたものを壊させてたまるか! オレもルトナも、まだまだやりたい事だってたくさんあるからな!」
「甘く見られたものだね、僕に勝てると思ってるのかい?」
「お前なんかクリンカねーちゃんが戦うまでもないぜ!」
「そ、そんな大きな事を言って……!」
「平気だよ、あいつには負ける気がしない。だってあいつ、ちっとも強くないだろ?」
この一言でラーシュ君対ジュオの戦いが始まってしまった。もちろん先に攻撃を仕掛けたのはジュオだ。
◆ アバンガルド王都 闘技場 ◆
「盛り上がってまいりマシタ! 公開処刑コロシアム!」
「あのエルメラという少女は魔法の使い手……クラスはウィザードといったところでしょうか。高い魔力を秘めているかもしれませんが、ネルバには無意味ですな」
「ネルバ……?」
「ネルバ様でした! ハイ!」
「ジャッキンジャッキンジャキジャキ! さぁー皆も一緒にィ!」
「ジャッキンジャキジャキィィィィ!」
じゃっきんじゃきじゃき。ネルバに続いて観客の魔物達がヒートアップして叫び狂ってる。喜んでいるのか苦しんでいるのかわからない奇声ばかりで頭が痛くなってきた。
発表されたカードは処刑人はネルバ、罪人はエルメラ。リッタの時と違って一対一だし、あのエルメラなら負けようがない。そう安心していたら、あのエルメラが手も足も出ないなんて。というより手も足も出してないという感じ。
「ノリが悪いよぉ? エルフさぁん! エルフさんの文化にはぁ、お歌はなかったんだっけぇ?」
「うっさいガキ」
「ないんですねぇ、これが! 森の奥地に引き篭もってほとんど他種族と関わらないもんだから、そういう文化も吸収しようがないんだよねぇ!」
「うっさいガキ」
両肩から先を白い翼に変えたネルバがエルメラの頭の上を軽快に飛び回る。下半身は鳥、手足も鳥。飛ぶたびに白い羽がひらひらと落ちる。
ダイガミ様によるとあれはハーピィというものらしい。魔物の一種で、鳥人間みたいな見た目をした種族。綺麗な歌声を響かせて人間を誘い、時には人里に舞い降りて男の人を連れ去っていく迷惑な魔物。もちろんあのネルバはハーピィそのものじゃない、埋め込まれた魔物の細胞がハーピィだ。すでに完成化している。
「ハイ、ハイ、ハァイッ! キィックゥ!」
【遊翼なる爛漫皇女ネルバは急降下した! エルメラにダメージを与えられない!】
かわいい体には似合わない凶悪な鳥足の一撃から、エルメラは頭をかばっている。ダメージが全然ないのは何らかの想像魔法のおかげだろうけど、あんな仕草はエルメラらしくない。いつもならおどけて馬鹿にして勝つところなのに。
やたらと元気がなかったし、闘技場に来てからのエルメラの怯えようが尋常じゃなかった。原因はあのヴァンダルシアだ。いくら強がっていてもエルメラの中には、自分達を滅ぼした恐怖としてあいつが生き続けている。
「ビジュアル7点! 技術7点! 攻撃力6点! 命中精度7点! オリジナリティ5点!」
「ネルバ様、またも高得点!」
【エルメラは41のダメージを受けた! HP HP 767/1344】
「うぐっ……!」
この戦いの極めつけは観客席の一番前に列を作って座っている魔物が出す点数。攻撃や動作に対して点数がつけられていて、高いほど相手を痛めつけられる。あれのせいで、さっきから小さなダメージが溜まっていた。服は擦り切れて、腕や足にも生々しい傷がある。これがこのコロシアムの醍醐味、処刑方法。どういう仕組みかはわからないけど、その時によってこうやって変なルールが付け加えられる。
「エルメラー! 想像魔法で倒しちゃいなよー!」
「うるさい……うるさい、うるさい!」
頭をふるふると振って、今にもしゃがみそうだ。あんなに痛々しくて泣きそうな顔を見るのは初めてだった。いつもヘラヘラしていて周りを見下しているようなエルメラ、おどけて何でも馬鹿にするエルメラ。いい印象がなかっただけに、今のエルメラはいろいろな意味で衝撃だった。
「よもやこの時代にエルフの生き残りがいようとはな。根絶やしにしたつもりだったが、手抜かりがあったようだ。ネルバ、加減はいらん」
「はぁいっ! それじゃっ! じゃきじゃきそんぐ……歌いまーす!」
ヴァンダルシアはエルメラも殺してエルフ絶滅の目的を果たしたいみたいだ。エルメラのお姉さんだけじゃなく、その妹すらも殺そうとする執念が本当にわからない。奈落の洞窟の最下層で戦った時には見えてなかったヴァンダルシアの異常性が次々と出てくる。
なんであのネルバをエルメラと戦わせたのか、それは今一わからない。エルメラが万全の状態だったらあんなの敵じゃないはず。それともあんな状態なエルメラを見越しての事かもしれない。
そう、あいつには攻撃が一切通じない。エルメラも最初のうちこそ投げやりに応戦してたけど、どれも直撃前にかき消えてしまう。あの魔物が審査した攻撃じゃないと無効化される異様な空間、これがネルバの力なのか別のものなのかはわからない。とにかく、ネルバを倒すにはあいつらに気に入られないとダメだ。でもあいつらはネルバの味方、エルメラが何をしても採点するはずがない。つまり完全にインチキ空間だ。
「皆も一緒に歌ってねぇー! じゃきじゃきふれぇばぁ! さん、はいっ! じゃっきんじゃきじゃきじゃっきぞく! 血の味はぁ恋の味っ!」
「「「じゃっきんじゃきじゃきじゃっきぃぞくぅぅぅ! っふぉぉぉぉ!」」」
完全に狂ってるとしか思えない観客の魔物達が揃って、ネルバの変な歌についていってる。空中を飛び回りながら観客席に向けて、投げキッスみたいなのをしてる。もうダメだ、全然理解できない。
「そんな変な歌に負けないでよ、エルメラ! エルメラもかっこいい攻撃すればいいんだよ!」
「てめぇぇぇ! 変な歌だとぉぉ!」
「可愛げも素っ気もねぇガキがネルバ様に嫉妬してんじゃねぇ!」
「これは邪貴族の本質を表した由緒正しき聖歌だ! これだから本当にニンゲンという奴はどこまでも哀れなのだ! なぁ、皆?」
「違いねぇ! ニンゲンに生まれなくて本当によかったぜ!」
「もういっそ自殺でもしておけよ! どうせ処刑されるんだからよ! 何ならオレがやってやろうか? ヒヒヒ!」
腹が立ちすぎて逆に固まってしまった。衝動的にあの観客席にソニックリッパーを撃たなくてよかったと思う。なんでここまで言われなきゃいけないの。処刑って何、やれるものならやってみてよ。威圧して黙らせようかな。
「ビジュアル10点! 技術10点! 攻撃力10点! 命中精度10点! オリジナリティ10点! 可愛さ100点! で、出ました! 今までにない高得点デェス!」
10点が最高じゃなかったのとか、変な項目が増えてるとかそんなのはどうでもよかった。このままじゃエルメラが死んでしまう。場内が変な興奮に包まれる中、どうしたらエルメラを助けられるかだけを考えていた。それ以前にボクなんかの声がエルメラに届くだろうか。いっそ威圧して。
「そ、そうか」
いくら言葉で言ってもわかってもらえないなら、これしかない。想いを届かせるのはその後だ。
◆ シンレポート ◆
じゃっきん じゃきじゃき じゃっきっぞく
ちのあじわぁ こぉいのあじっ
あのこのこいも そのこのこいも じゃっきんじゃきじゃきじゃっきんきん
そそぉがれぇるぅ うまれぇるぅ じゃっきんじゃきじゃきじゃっきゅんきゅん
はっ
いったい なにを かいてしまったです
け けがれる こんなもの しんせいなる しんれぽに
のこせない
あ あれ そういえば しんは どうやって もじを
けしていたですか
というより けした きおくがない
それもこれも えるめらのせいです
なんでもいいから あのでんぱを とめるです
はやく でないと みみが あたま が
じゃっきん じゃきじゃき しんれぽぽっ




