表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/352

第15話 幽霊屋敷の怪 その5

ビクンとフランソワスの体が跳ね上がる。

やがてその頻度は増して、弓なりになった瞬間

顔は3倍以上に膨れ上がり、眼球や皮膚も床に剥がれ落ちた。

頭部がむき出しの巨大な骸骨となり、体はそれとは似つかわしくない

大きさのまま更に腐り果てる。

肋骨の隙間から蛆が零れ落ちた。

頭でっかちという表現が似合いそうな姿に変わり果てたフランソワスから

ボク達は一斉に離れる。


「おえぇ……」


ロエルは口元を押さえて何とか堪える。

鼻がおかしくなりそうな腐臭に対して不快感と同時に怒りを覚えた。

こんな風になってまで成さなきゃいけない事なんてあるのか。

負けてたまるか、おまえなんかに。


【フランソワス は姿を変えた!

 リビングワース が現れた! HP 1222】


「驚き……怨霊……魔物化……」


「魔物化? それじゃあいつはただの魔物になったの?」


「恐らく……」


ボクは半信半疑のトルッポに確認をとるほど、この状況を好機と捉えた。

怨霊系からゴースト系になったなら、ここにくるまで戦ってきた

奴らと同じ要領でやればいい。

つまり、全力で叩き潰すということだ。

とはいえ、雰囲気からしてさっきまでの奴らとは比較にならないほど強い。

ロエルとトルッポに被害が及ぶ前にここは一気に決着をつけよう。


「ア゛ア゛ア゛ア ア  ア」


もはや声帯なんて存在しない怨霊の放つ声、いや音はなんとも形容しがたかった。

頭部をフラフラとさせてボク達に狙いを定めてきたところでボクは

全力でそこに蹴りを放つ。さすがに拳であれには触りたくない。

頭部は一瞬で破裂し、腐臭と共に躯の破片が飛び散った。


【リュア の攻撃! リビングワース に 4456 のダメージを与えた!】

【リビングワース 1/1222】


完全にコントロールを失ったのか、頭部をかろうじて支えていた体は

千鳥足でふらついていた。

間髪いれずボクは今度は体を目がけて飛び蹴りを放った。

体は奥の壁に叩きつけられるほどふっ飛び、ブロック床に倒れ落ちた。

さっきと違って確かに手ごたえはある。でもなんだか、おかしい。


【リュア の攻撃! リビングワース に 4123 のダメージを与えた!】

【リビングワース 1/1222】


体はゆっくりと立ち上がり、同じ足取りでふらふらしている。

再生しているのだろうか。いや。

奈落の洞窟で凄まじい勢いで傷口が塞がる魔物と戦ったことがあるけど

あれとも事情が違う。


「ワ タ シ ノ カ ソ゛ ク」


頭がないはずなのにその体からは確かに言葉が発せられた。

その怪物の体にロエルが近づく。


「ロエル! 危ない!」


「もう見ていられない」


ロエルの瞳は泣きはらして真っ赤だった。

彼女は恐れずに怪物の体の前へと立つ。

怪物はふらふらと今にも倒れそうになりつつ、なんとか立っていた。


「フランソワスさん、もうやめて……

 何があったのかわからないけど、未練があるならできるだけ協力する。

 だからもう楽になって……」


そういい終えるとロエルはフランソワスにヒールをかけた。


「ラク ニ  ナッテ イイ   ノ」


フランソワスの体が淡い光に包まれ、それと共に消失した。


【ロエルは リビングワース に ヒール を唱えた!】

【リビングワース を倒した! 0/1222】


終わった後もロエルは涙を流していた。


さっきまでの戦いが嘘であるかのように地下室は静まり返った。

残されたのはミイラ化した少女と男の人の死体。

ロエルのおかげで事態は収束した。

しかし、結局何がなんだかわからずじまいだ。


すると地下室の真ん中に少女と男の人が立っていた。

そこにある遺体ではなく、生前の姿で。

ロエルが小走りにかけよる。


二人はボク達に微笑みかけてきた。

そして二人が光となり、辺りが白くなる。


///


気がつけばボク達は食卓を囲む3人の家族を見下ろしていた。

幸せそうに団欒を営む家族。


次に見たのはフランソワスと知らない女の人2人が食事をしていたところだった。

その一人が自分の子供の事を自慢している。

もう一人も同じだった。

フランソワスは笑顔を作っていた。


子供部屋でフランソワスが少女を叱りつけている。

少女は無理矢理、机に座らされて勉強か何かをさせられた。


フランソワスが男の人を責めていた。

男の人が営むぶどう畑の収益が傾いている、フランソワスはその事で

ひたすら怒り狂っていた。


女の人2人とフランソワス。

女の人がキラキラしたネックレスを自慢していた。

もう一人は自分が着ている服を自慢している。

フランソワスは必死に笑顔を作っていた。


男の人が頭を抱えてソファーに座っている。

フランソワスは男の人をひたすらなじっていた。

堪忍袋の尾が切れた男の人はフランソワスさんを思いっきり引っ叩いた。


少女は部屋から出してもらえなかった。

イスに縛り付けられていてトイレもいけない。

少女は母親の名前を叫び続けていた。


フランソワスはひたすら家計簿と睨みっこしていた。

険しい表情で片手で指をおり、何かを数えている。


男の人が娘の様子を見に行くと、少女はぐったりして倒れていた。

助けようとした男の人をフランスワスは引き剥がすように

止めようとする。

揉み合いになって突き飛ばされるフランソワス。

男の人は娘を抱えて部屋の外へ出て行った。


フランソワスはリビングで男の人をツボで後頭部を打ちつけた。

娘ごと倒れた男の人は頭から血を流して動かなくなった。


か細い女の手で力いっぱい男の人を引きずる。

休憩を挟みつつ、時間をかけて地下室まで運ぶ。

ついでに少女も地下室に閉じ込めた。


そして間もなく、屋敷の怪奇現象に悩まされるフランソワス。


――再び光が広がり、地下室に戻った。


///


一瞬の出来事だったけどこの屋敷で何が起こったのか、すべて見えた。

いや、2人の幽霊が見せてくれたといったほうが正しい。


「最初は仲よく暮らしてたのに……」


「ボクも信じられない。どうかしてるよ」


冷たい地下室で横たわる二人の死体。

この二人にも生前があった。

何かが間違わなければ、こんな変わり果てた姿にならずに済んだ。

どうすればこうならない未来が待っていたのか。

考えてもボクにはわからなかった。

次で幽霊屋敷の怪シリーズ終わりです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ