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第117話 未知なる呼び声 終了

【激震の支配者竜神はインフェルノブレスを吐き出した!】


 アニマの熱線をそのまま極太にしたような危険なブレスが竜神の口から放たれる。あの熱だけでも人間の肌はただれて苦しむ間もなく死ぬ。それだけの熱気をボクは察知した。させないよ。


【リュアはソニックリッパーを放った!】


 ボクの斬撃が極太熱線と衝突し、食い込むように熱線を引き裂いていく。みるみると竜神の口まで迫るかと思いきや、そこで相殺されて二つとも消えてなくなった。つまり極太熱線が地上に着弾するのは防げたけど、竜神へのダメージもゼロという事。

 消滅した時の音だけで辺りの建物の残骸や大地を震わせる。光だけで大陸全体を照らしかねない。途方もないエネルギーのぶつかり合いだ。それにしても全力で撃ったのにまさか届かないなんて。予想はしていたけど、こいつもダイガミ様の時みたいに本気の本気でやらないとダメみたい。


「ぬうぅぅ……。この力……やはりそうか。お前もやはり……」


 竜神が意味不明な事を口走って困惑している間にクリンカはボクに向けて、背中を見せている。それが何のつもりかはすぐにわかった。


「リュアちゃん、乗って!」


 背中を差し出す竜になったクリンカの言葉に戸惑っている暇はない。第一、少しでもそこで疑問に思えばクリンカを信頼してない事にもなるし、結局竜になった事実を受け入れていない事になる。それが正しいかはわからないけど、少なくともボクはそう思う。

 クリンカの背中は思いの他、乗り心地がよかった。背中がまるで誰かが乗る事を想定としているかのように、窪みのようなものがある。偶然なんだろうけど鱗の張り合わせた合間がちょうど座り易い。


「えへへ、リュアちゃんにおんぶしてもらった恩がここで返せるね」

「何だか不思議な気分だよ……」

「私は今からリュアちゃんの手足だよ。命令してくれたらどんな動きでもやってみせるから」

「それじゃ……あいつの頭の位置まで飛んで!」

「はいっ!」


 ゆっくりと竜神の頭の位置まで上がった時とは比べ物にならない速度で高度が上がった。今までは見下ろされていたけど、これで目線は竜神と同じ高さだ。

 それが気に入らないのか、竜神の眼光はより一層険しい。険しいどころか、それがスキルだと気づくのに一瞬遅れた。


【激震の支配者竜神の竜の眼光! しかしリュアに効かなかった! クリンカに効かなかった!】


「ほう、まさか完全に防ぐとはな」


 あくまで余裕っぷりをアピールしているけど、内心かなり腹が立っているのがわかる。さっきの咆哮にも似た怒号と変わらない声質だし、多分今ので完全に決めるつもりだったんだと思う。

 でもボクに麻痺は効かない。普通の相手なら今ので完全に身動きを封じられてそのまま踏み潰されていたはず。でもまさか、クリンカまで平気だなんて。いや、ここで麻痺されたらボクもここからまっさかさまなんだけど。


「その様子から察するに、ワシに空中戦を挑もうという算段か!

小賢しい! かつてそんな真似をした輩がおったが、残らず殲滅してやったわ!

翼があれば空中で張り合えるなぞ、笑止千万! 空ではこう戦うのだ!」


 竜神は旋回して、ボク達の周りを大きく回った。台風みたいな風を巻き起こしているのは竜神の巨体と翼のせいだ。あの大きさだと普通に飛ぶだけでも天災を引き起こせる。

 竜神は人間にとって害にしかならない。ただ存在するだけで破壊の跡を残す。恐怖そのものだ。そんな相手にクリンカが必死に翼を羽ばたかせて、風に飲まれないように維持している。


「狙うならあそこだ……!」


【リュアはソニックリッパーを放った! 激震の支配者竜神に150120のダメージを与えた! HP 872880/1023000】


「ぬぐぁぁぁッ……! やりおったなぁッ!」


 翼の付け根を狙って切断してやれば飛べないはず。この暴風の中で導き出した答えがあまりにも安易だと放ってから気づいた。まず、仮に成功して翼を落としたらあの巨体が下に落ちる。それだけでとんでもない大惨事になる。

 もう一つ。左手でクリンカにしがみつき、右手で剣を持つ。こうなると片手でしか剣を振る事が出来ない。普通の相手ならそれでも十分だけど、相手はダイガミ様と同じかそれ以上だ。両手で全力を出さないと致命傷を与えられない。

 緑色だか黒だかわからない大量の血が竜神の翼の付け根から噴出す。でもその周辺の鱗が少しずつ伸びて大きくなり、すぐに傷口を塞いだ。


【竜鱗の再生! 激震の支配者竜神のHPが100000ポイント回復した! HP 972880/1023000】


「うわっ……なにあれ、めんどくさいなぁ」

「数千年ぶりに己の血を見たわい……。小娘が……一体どんな血が流れておる事やら。だがこれはどうかぁ!」


【激震の支配者竜神はインフェルノブレスを吐き出した!】

【リュアはソニックリッパーを放った!】


 また同じブレス、と思ったらさっきとは事情が違った。ソニックリッパーで裂けた炎は二股に分かれて、まるでミミズみたいにうねってこちらに向かってくる。見た目、炎の竜巻がすごい熱量と一緒になって逃げるボク達を追ってきた。


「もう一度……!」


【リュアはソニックリッパーを放った!】


 今度は炎の竜巻がソニックリッパーを避けた。ぐにゃりと曲がりくねってそして的確にボク達に左方向から直撃させる。直前にクリンカがレインボーバリアを張ってくれたけど、思った以上に危ない。奈落の洞窟で溶岩を泳いだ時よりも数段熱いし、苦しい。

 炎は空気中の酸素を燃やすだとかお父さんに教えてもらった事がある。炎を受けて平気でも、呼吸が苦しくなる。ちょっと甘く考えすぎていた。


【リュアは5102のダメージを受けた! HP 36258/41360】

【クリンカは71のダメージを受けた! HP 15579/16050】


「あっつッ! クリンカ! 大丈夫?!」

「私は平気みたい……むしろ、拍子抜けしちゃったかも」


 クリンカの鱗を包んでいた炎がまるで水でもかけられたかのように消滅していく。なるほど、竜になった影響で多分だけど炎の耐性が上がってるんだ。竜神のブレスでほぼ無傷なら、他のどんな炎にも耐えられる。思った以上にクリンカ竜は強い。いや、強すぎる。


「ほぉ! 我がインフェルノブレスを弾くか! これ一つで大陸を焼け野原にしてやった時代もあったというのにのう! ファファファファ!」

「さっきから思ってたけど、暴れすぎでしょ! どれだけの命を奪ったのさ!」

「お前はこれまで踏み潰した虫の数を覚えておるのか?」

「こ、こいつ……!」

「お前達人間にとって虫が取るに足らん生物であるように、ワシにとってはすべての生物など弱小よ! ならば生殺与奪の権利など聞くまでもなかろう! 踏み潰されたくなければ逃げよ! ファファファファファファファファ!」


 頭に血が登るというのを初めて実感できた。頭というより体全体が沸騰して、耳までお湯を詰められた気分だ。それくらい体中に怒りがみなぎっている。

 気がつけばボクは風の抵抗なんか関係なく、クリンカの背に足をつけて立っていた。ただあいつを殺す、それだけだ。こんな状態で立てないはずがない。ボクはボクだぞ。


「クリンカ、マイトフォースとスピードフォースをお願い。一撃で決めるから」

「うん? うん……」


【クリンカはマイトフォースを唱えた! クリンカはスピードフォースを唱えた!

リュアの攻撃力と素早さが上がった!】


「寝ぼけた事を! 一撃だと? 思いあがるのも大概にせい!

ワシを誰だと思っておる! 太古の時代より恐れられた竜神なるぞ!

地上を支配していた時代もあったが、とうに飽きた! 気晴らしに世界中の生物を根絶やしにした時代もあったが飽きた!

もはやどのような万物でもワシを満足させるに至らん! すべてを知り尽くした! すべてに興味が失せた! ワシは」


「うるさい」


 斬り裂くソニックリッパーでも貫通するソニックスピアでもない。体に負担がかかるから、あまり何発も撃てないし出来ればやりたくない。前から密かに考えていたこのスキル。

 ダイガミ様の時と比べて、絶対神域みたいな反則スキルもないけど、この竜神はとにかくでかい。あの時と同じ要領でやっても、多分致命傷にはならないしまた回復されてしまう。だから一撃で決めなきゃいけない。

 ソニックリッパーの斬り裂く力とソニックスピアの貫通力を合わせると、どうなるんだろう。ソニックスピアの貫通力が広範囲に、それでいてすべてを斬り裂くかのような衝撃。単純にそんなパワーをぶつけるわけだから、衝撃で合っていると思う。だからこんなスキル名にした。


「ソニック……インパクトッ!」


【リュアはソニックインパクトを放った!】


 放ったボク自身も見えない。それどころか反動でクリンカの背中から弾き飛ばされてしまう始末。空中に放り出されたボクが一瞬だけ見たものは。


【激震の支配者竜神に6317281のダメージを与えた!】


「ァ………ッ……!」


 断末魔すら上げる暇のない竜神。巨体の中心に激突した衝撃はそこから引き裂くように、押しつぶすように。衝撃という暴力に抗えずに。足や腕、尻尾の先まで耐え切れずに一つずつ肉片になっていった。血と肉片が空中に分解されたかのようにばらけて、そして地上に降り注いだ。


【激震の支配者竜神を倒した! HP 0/1023000】


 血の雨はもちろん、ボク達にも降りかかる。そして落下するボクを追うクリンカを正面から見据えながら、ゆっくりと地上に向かうのを感じた。その間、すべてを破壊しきれずに頭だけを残した竜神が地上に落ちるのも見た。

 いくら竜神でも、さすがに頭だけで生きていられるはずがない。そう思いたいけど、何せあの竜神だ。気の遠くなるような年月を生きてきた竜だ。セイゲルが言うように生物としての次元が違う。もし生きていたら、どうしよう。

 それよりも今のボクはまず地上に激突して生きていられるかを心配をしたほうがよさそうだ。何せ体中が痛すぎて涙が出てくる、そしてまったく動かない。ここまで反動がくるなんて思わなかった。やっぱり無理をしないで地道に戦ったほうがよかったかもしれない。カッとなって一撃で倒すなんて言わなきゃよかった。


「リュアちゃん! 待って! 待ってー!」


 待ちたいのは山々だけど、体が動かない。さすがに大陸全体が見渡せそうな高さから落ちるのは初めてだからボク自身もどうなるかわからない。やっぱり痛いのかな。こうなる前に回復魔法をかけてもらえばよかった。


「リュアッ!」


 地面に激突する寸前に聞いたのはセイゲルの声だった。


◆ シンレポート ◆


○ がつ ×にち てんき ちのあめ


きょうは ごじんのいっぴき りゅうじんが たおされました

ごじんといえば まおうさまでさえ てをだそうとしない ちからだけでいえば かみにちかいそんざいなのです

りゅうじんは そのむかし かみごろしとまで おそれられてもいたのです

あばれる りゅうじんを かみがみが とりおさえようとして ちじょうが こうはいした

そんな しんわのじだいをいきる りゅうじん

かみにちかいと いいましたが そう りゅうじんとはいっても かみではないのです

天災(がんばってかいた!)よりもおそれられ しかたなく ひとびとが かみとして あがめたじだいのなごりなのです

かみのけしんとも よばれていたですね


あれれ なにか とてつもないことを かこうとしていた きがしたのです

ううむ おもいだせない

まぁ いいか すぴー

魔物図鑑

【激震の支配者竜神 HP 1023000】

詳しくはシンレポートにて。

ドラゴンズバレーの奥地にて眠りについている、超巨大な竜。

ひとたび暴れ出せば世界は3回滅びるとまで書かれている文献があるほど。

その昔、討伐しようとした時代もあったが万の軍は滅び、国は消えて勇者でさえ敗れ去った。

それ以来禁忌の存在とされ、いつしか人々はその竜を忘れた。

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